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第二章 モーリアン辺境地にて
6 左京の気持ち
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モリガン様との勝負(?)におそらく勝った私は、他人の感情を感じとれるようになった。
まずは同室のオリビア。彼女は人懐っこいけれど案外さばさばしていると思っていたが、意外と怒りやすくあきっぽい性格なのだと分かった。あまり顔には出さないが、よくイライラとしているのを感じる。どうやら彼氏がいるようで、その彼氏とうまくいっていないのではないかと思う。たぶんしばらくしたら別れるんだろう。
私はオリビアにモリガン様にもらった力について言わなかった。オリビアも私にどんな力を持っているか言わなかった。女性の力は男性がもらう力と違い、内緒にしたい能力も多そうだ。そのように感じる。
*
左京について、気づいたことがある。左京は私を見る時、とても優しくて愛おしそうな感情を向ける。その感情がとても強いのだ。そのあたたかく力強い感情が心地よく、すぐに身をゆだねたくなる。左京は間違いなく私のことが大好きだった。
でも左京の隣にいるあの男、テディことエドワードも、左京のことが大好きだった。左京が私に向ける感情と似たような感情を、テディは左京に強く向けていたのだった。
――男同士なのに、なんで...?
左京はテディのことは親友と思っているだろう。強い信頼関係はあれど、恋愛感情は抱いていないようだ。そしてテディはそれを自覚していて、左京のそばにいるのだと思う。
狩りをした後に3人で野営する時、左京が私を膝の上に乗せて後ろから軽く抱きしめているのを見て、さみしそうにしていることにも気づいてしまった。まったく顔には出さないから、能力を手に入れるまで気づかなかった。
――でも、間違いなく、左京の気持ちには気づいているわよね...?さすがにこんなにベタベタしているもの…。
左京はスキンシップが激しい。もちろんテディに対しても嬉しいときはハグするし、軽く頬にキスをしている時もある。挨拶のつもりなのだろうか。ただ、左京自身心が許せる相手は私たち二人くらいしかいないのだろう。彼は昔から大人を信用しなかったから。多くの人間と距離を置いた結果、心を許す相手との距離感がバグってしまったのだろうか。テディが自分たちが両思いだと勘違いしていることはないだろうが、意識させる振る舞いをしてしまっているのに間違いなさそうなので、少し気の毒ではある。
*
私は左京と二人きりの時に、左京に自分の能力について打ち明けた。
「ふぅん、うさこは人の気持ちが分かるんだ。じゃあ僕の気持ちも伝わってるんだね?」
左京はそんなことを言いながら抱きしめてくる。
――なんて能天気な。こんなふうに甘えてくるなんてずるい。
そう思いつつも、ずっと聞きたかったこと。どうして羽をもらったのか聞いてみた。すると意外な答えが返ってきた。
「始めはあまり長く生きるつもりがなかったから、単純にお金になる有翼人が一番いいかなと思ったんだ。施設に少しでも多くのお金を送りたかったからね。でも今は違う。僕は易々と死ぬつもりはない。爆弾係としてたくさん戦力を削ぎ、戦争に貢献する。そしてこの戦争を終わらせたいと思っているんだ。」
――戦争を終わらせる…?もう30年も続いている戦争を?
戦争もいつかは終わるのだと思う。でも休戦を挟みながらも戦争が終わることはなかった。戦争も始めは剣や弓で戦うものだったが、次第に科学が発展してきて、大量生産はできないが銃や爆弾まども使われるようになった。もちろん前線ではまだ剣で戦う人たちもいるようだが、爆弾係は上から敵戦力を殲滅するのが仕事だ。殺傷力も一番強いが、爆弾は100㎏ほどあるため重たく、空から落としても爆発に巻き込まれて死んでしまう。そのため爆弾係に命じられた有翼人は戦場に出たらもう帰ってこられないと言われている。
「テディに手伝ってもらって、重たい荷物を持ったまま高く飛べるよう訓練しているんだ。そうすれば爆発に巻き込まれなくて済むはずだからね。」
一体どれくらい高く飛びあがるつもりなのだろうか。分からないが、体重が重たいであろう筋肉質なテディを抱っこして空のお散歩をしていることは知っていたので、本気なのだと思う。
「でも、死ななかったら何度でも爆弾を運ぶことになるんじゃ…」
「そうだよ。だから僕が戦争を終わらせる。もう無駄に有翼人を死なせたりしない。」
左京はバサッと羽を広げて、私を包み込んだ。とてもあたたかい。
「僕は羽を手に入れて、自由に空を飛びまわれるし、こうやって羽で包み込むようにうさこのことを抱きしめることができる。それがとても幸せなんだ。でも他の有翼人はそうは思っていないみたい。悲しいよね。」
それはそうだ。だって羽を与えられた時点で戦場に行ったら自分は確実に死ぬと分かっているのだから。
「もうすぐ僕は戦場に行くことになる。でも戻ってくるから、待っててくれる?」
左京から悲しみと不安の他に、大きな決意を感じる。本気で言っているんだ。
「分かった。待ってる。」
私がそう答えると、左京は嬉しそうに言った。
「ふふ、帰ってきたら一緒に暮らそうね。」
左京は私に優しくキスをした。そして言った。
「ねえ、うさこ。僕たちお互いの本名知ってるよね?改めて真名の交換しない?」
真名の交換。それはお互いにモリガン様に捧げた本名の事で、魂に刻まれた名前でもある。
「真名を交換したら、お互いの居場所が分かるようになるみたいなんだ。そうしたら、離れていても平気でしょ?」
「うん。」
私は言われるがままに頷いた。そしてお互いの名前を呼び合って、もう一度キスをした。
そのまま左京の羽の中で私たちは不安を紛らわせるようにゆっくりとお互いの唇を吸いあった。息継ぎをしながらちゅうっちゅうっとキスしあう。こうやって過ごせる時間もあとわずか。私は左京に身をゆだねて、満足するまでキスをし合った。
まずは同室のオリビア。彼女は人懐っこいけれど案外さばさばしていると思っていたが、意外と怒りやすくあきっぽい性格なのだと分かった。あまり顔には出さないが、よくイライラとしているのを感じる。どうやら彼氏がいるようで、その彼氏とうまくいっていないのではないかと思う。たぶんしばらくしたら別れるんだろう。
私はオリビアにモリガン様にもらった力について言わなかった。オリビアも私にどんな力を持っているか言わなかった。女性の力は男性がもらう力と違い、内緒にしたい能力も多そうだ。そのように感じる。
*
左京について、気づいたことがある。左京は私を見る時、とても優しくて愛おしそうな感情を向ける。その感情がとても強いのだ。そのあたたかく力強い感情が心地よく、すぐに身をゆだねたくなる。左京は間違いなく私のことが大好きだった。
でも左京の隣にいるあの男、テディことエドワードも、左京のことが大好きだった。左京が私に向ける感情と似たような感情を、テディは左京に強く向けていたのだった。
――男同士なのに、なんで...?
左京はテディのことは親友と思っているだろう。強い信頼関係はあれど、恋愛感情は抱いていないようだ。そしてテディはそれを自覚していて、左京のそばにいるのだと思う。
狩りをした後に3人で野営する時、左京が私を膝の上に乗せて後ろから軽く抱きしめているのを見て、さみしそうにしていることにも気づいてしまった。まったく顔には出さないから、能力を手に入れるまで気づかなかった。
――でも、間違いなく、左京の気持ちには気づいているわよね...?さすがにこんなにベタベタしているもの…。
左京はスキンシップが激しい。もちろんテディに対しても嬉しいときはハグするし、軽く頬にキスをしている時もある。挨拶のつもりなのだろうか。ただ、左京自身心が許せる相手は私たち二人くらいしかいないのだろう。彼は昔から大人を信用しなかったから。多くの人間と距離を置いた結果、心を許す相手との距離感がバグってしまったのだろうか。テディが自分たちが両思いだと勘違いしていることはないだろうが、意識させる振る舞いをしてしまっているのに間違いなさそうなので、少し気の毒ではある。
*
私は左京と二人きりの時に、左京に自分の能力について打ち明けた。
「ふぅん、うさこは人の気持ちが分かるんだ。じゃあ僕の気持ちも伝わってるんだね?」
左京はそんなことを言いながら抱きしめてくる。
――なんて能天気な。こんなふうに甘えてくるなんてずるい。
そう思いつつも、ずっと聞きたかったこと。どうして羽をもらったのか聞いてみた。すると意外な答えが返ってきた。
「始めはあまり長く生きるつもりがなかったから、単純にお金になる有翼人が一番いいかなと思ったんだ。施設に少しでも多くのお金を送りたかったからね。でも今は違う。僕は易々と死ぬつもりはない。爆弾係としてたくさん戦力を削ぎ、戦争に貢献する。そしてこの戦争を終わらせたいと思っているんだ。」
――戦争を終わらせる…?もう30年も続いている戦争を?
戦争もいつかは終わるのだと思う。でも休戦を挟みながらも戦争が終わることはなかった。戦争も始めは剣や弓で戦うものだったが、次第に科学が発展してきて、大量生産はできないが銃や爆弾まども使われるようになった。もちろん前線ではまだ剣で戦う人たちもいるようだが、爆弾係は上から敵戦力を殲滅するのが仕事だ。殺傷力も一番強いが、爆弾は100㎏ほどあるため重たく、空から落としても爆発に巻き込まれて死んでしまう。そのため爆弾係に命じられた有翼人は戦場に出たらもう帰ってこられないと言われている。
「テディに手伝ってもらって、重たい荷物を持ったまま高く飛べるよう訓練しているんだ。そうすれば爆発に巻き込まれなくて済むはずだからね。」
一体どれくらい高く飛びあがるつもりなのだろうか。分からないが、体重が重たいであろう筋肉質なテディを抱っこして空のお散歩をしていることは知っていたので、本気なのだと思う。
「でも、死ななかったら何度でも爆弾を運ぶことになるんじゃ…」
「そうだよ。だから僕が戦争を終わらせる。もう無駄に有翼人を死なせたりしない。」
左京はバサッと羽を広げて、私を包み込んだ。とてもあたたかい。
「僕は羽を手に入れて、自由に空を飛びまわれるし、こうやって羽で包み込むようにうさこのことを抱きしめることができる。それがとても幸せなんだ。でも他の有翼人はそうは思っていないみたい。悲しいよね。」
それはそうだ。だって羽を与えられた時点で戦場に行ったら自分は確実に死ぬと分かっているのだから。
「もうすぐ僕は戦場に行くことになる。でも戻ってくるから、待っててくれる?」
左京から悲しみと不安の他に、大きな決意を感じる。本気で言っているんだ。
「分かった。待ってる。」
私がそう答えると、左京は嬉しそうに言った。
「ふふ、帰ってきたら一緒に暮らそうね。」
左京は私に優しくキスをした。そして言った。
「ねえ、うさこ。僕たちお互いの本名知ってるよね?改めて真名の交換しない?」
真名の交換。それはお互いにモリガン様に捧げた本名の事で、魂に刻まれた名前でもある。
「真名を交換したら、お互いの居場所が分かるようになるみたいなんだ。そうしたら、離れていても平気でしょ?」
「うん。」
私は言われるがままに頷いた。そしてお互いの名前を呼び合って、もう一度キスをした。
そのまま左京の羽の中で私たちは不安を紛らわせるようにゆっくりとお互いの唇を吸いあった。息継ぎをしながらちゅうっちゅうっとキスしあう。こうやって過ごせる時間もあとわずか。私は左京に身をゆだねて、満足するまでキスをし合った。
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