戦争に行った幼馴染に恋する孤児の少女は、娼婦として育てられる。

‪α‬缶

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第二章 モーリアン辺境地にて

7 男女の価値の違い

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 そしてその日はやってきた。私が能力をもらってから、数か月後の出来事だった。左京とテディの部隊が戦場に行くことが決定したのだ。私はこの頃は少しパニックに陥っていた。

 ――分かっていたはずなのに、左京がいなくなってしまうかもしれない。でも大丈夫、左京はきっと帰ってくる。だってあんなに努力していたもの…。

 そしてそれと同時に私自身にも自分の役割を自覚せざる終えなくなってきた。それは私は戦場にはついていけないということだった。

「男は戦場へ、女は都市に娼婦としてお金を稼ぎに行く。」

 これがこの辺境地でのだったのだ。

*

 オリビアは今日も新しい彼氏とうまくいかなかったようで、イライラしていた。

「まったく、戦場に行くから何してもいいってわけじゃないのよ。私たちだって戦場に行かないにしても、戦争のためにお金を稼ぎに行かなきゃいけないんだから。」

 どうやら「女は戦争に行かなくてよくていいよな」と言われたらしい。オリビアはオリビアで都市で買われる先が決まっており、どこかの貴族の屋敷に使用人として派遣されるようだった。マナー含め掃除や洗濯などの一般的な雑用は一通り習っていたため、彼女なら問題なくこなせるだろう。

「ま、都市にはもっといい男がいっぱいいるでしょ。」

 オリビアはこのように言っていたが、本当は分かっているはずだ。私たちはモリガン様と契約した時点で、普通の人間とは違う体になっていることに。おそらくオリビアが想像しているような恋愛体験はできないだろう。

 そんなオリビアだったが、意外と早く辺境地を出発することになり、早々に都市へ旅立ってしまった。私はしばらく相部屋で過ごしていたが、一人で過ごす時間が増えることになった。

*

 オリビアがいなくなり、私は閨事の授業が増えた。どうやら私は「娼館」という場所に派遣されるようだった。
 始めは意味がよく分からなかったが、以前娼館の長を務める人が見学に来ていたようで、私を指名したらしい。後から聞いたが、オリビアも娼婦兼使用人として引き取られたようで、16歳からは同じ授業を受けていたらしい。それで性に旺盛だったのか…。使用人にしては18歳で引き取られるのは遅いと違和感に感じていたが、そういうことだったのか。

 私はまだ15歳だったが、娼館は大変な人手不足のようで、16歳になったらすぐに働けるように教育してほしいとのことだった。私は慌てて先生たちにいろいろなことを教わることになったのだった。

 しかし、今までこういったことは一切経験しておらず、左京との関係もキスまでである。何も知らない私はとりあえず以下のことを座学で学んだのだった。

 1つ。モリガナは寿命が近づくまで老化しないため、長期間若さと美しさを保てる。
 2つ。モリガナの寿命は約200歳と通常より長いため、長く仕えることができる。
 3つ。モリガナは妊娠しない。人間の精液を異物として認識するためである。

 実際にその時にならないと分からない事が多いらしいが、とりあえずモリガナの価値としてこれらはしっかり覚えておくようにとのことだった。そのあとは人間の体について、男性の体と女性の体の違い。お互いの体の性感帯などを教えられた。授業中は女性しかいなかったためよくイメージできなかったが、イラストを見ながら説明された。

 その後は体の調子を整えるためのマッサージやアロマオイル、香油、薬やハーブティーなどの勉強をした。いろいろな道具を使って、自分の体調を整えながら主人を愉しませることが大切らしい。

 授業中、先生は憐みの感情を抱きながら、それらを淡々と説明していた。

*

 ハーブティーをいれられるようになった私は紅茶にも力を入れた。左京に喜んで欲しかったからだ。
 左京はどちらにも興味はなさそうだったが、戦場に行くまでに少しでも二人の間での思い出を残したかったという気持ちもあった。

 左京は何でも喜んでくれたし、左京とよく一緒にいるテディもほめてくれたので、それなりに上手にいれられるのだと思う。

*

 そんなある日のこと、私は知らない男性に声をかけられた。どうやら体目的だったようで、部屋に連れ込まれそうになったのだ。私が売られる噂を聞いて、声をかけたのだろう。

「んーーーーっ、んーーーーーーーっ」

「おいっ、おとなしくしろ…」

 口を布でふさがれて、うまく息ができない。あんなに護身術を身に着けたと思っていたのに身体が動かなくて、私は怖くなって、必死になって左京に呼び掛けた。悍ましい、性欲に駆られた感情が流れてくる。意識が朦朧としてきてもう駄目だと思ったとき、大きな怒りの感情が肌を掠めた。

「んが……っ」

 私を取り押さえていた男性が思いっきり吹っ飛んだ。

「うさこっ、大丈夫…?」

「さ、きぅ…」

 左京が来てくれたのだ。息を切らして、羽を散らして、相当慌ててきたのだというのが想像できる。助けに来てくれたのか。

「お前、うさこに何をしようとしたんだ!!」

「何をしようとしたって、味見だよ。娼館に売られるって噂を聞いたんでね。」

「お前…!」

 左京が殴り掛かろうとするのを私は必死でとめた。

「大丈夫。大丈夫よ。まだ何もされてないから…。」

「でも…」

「左京、私、部屋に帰りたいわ。連れて行ってもらえない…?」

 私がそういうと、左京は怒りを抑えながら、私を抱きかかえて部屋に運んでくれた。

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