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変人シェフと美大生⑦
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「そういえばさー、夏休み明けに出す課題制作終わった?」
そんな話を切り出したのは圭人だった。ガツンとみかんをたったの二口で食べ終えた流歌が、その冷たさに眉間にしわを寄せながら答える。
「だいたい。あともう少しで塗り終わる」
「さすが流歌だな。俺まだ下書きしかやってねー。やばい。桃子は?」
「私はもう終わらせちゃった」
「早いな。あぁ、俺やばいかも……明日は店に来ないで大学行こう。一花はどうよ」
聞かれて一花はギクリとした。
「ん、んー。まだまだかな」
「そっかぁ。でも一花、作業早いから油断できねーな。俺だけ置いてけぼりにされそうだ」
「あはは」
置いてけぼりにされそうなのはこっちだわ、とは言えずに一花は笑ってごまかした。一花は下書きが終わっていないどころか何を描くかも決まっていない。本当にやばいのは一花であるが、ひとまずそのことは思考から追いやっている。いくら頭をひねろうと、描けない時は描けない。
昼休憩を挟んでから再び塗装に取り掛かった。
広い面を塗り終わったら、角や継ぎ目部分を刷毛で細かく塗っていく。屋根との繋ぎ目近くの高い場所は流歌と圭人が担当し、一花と桃子はうずくまって地面近くの壁をひたすらに塗った。年季の入った建物なので、いくらきっちり洗浄しようともひび割れやこびりついた汚れによる凹凸が発生しており、それをカバーするように丹念に塗料を塗っていった。
今回塗装するのは店部分、つまり一階だけである。それも裏側まではやらないから、店の前面と側面の三方面だ。二階までやろうとすると足場を組む必要が出て来て、それは一花たちの手に負えない。脚立でどうにか届く一階部分のみを塗り直して店の外観をどうにかする算段だった。
真夏の日差しが和らぎ、夕方の風が吹く頃に進藤が店に帰って来た。NEW MINIを店の裏に回し、ダンボールを抱えて表へと回って来る。
「やあ、ずいぶん綺麗に塗れているね」
外壁を見るなり進藤が感心した声を上げる。
「ここからもう一度塗り重ねたら完成すよ」
「そしたら養生剥がして木枠を塗ったら終わりです」
流歌と圭人の二人が脚立に乗ったまま振り返り言う。
「すごいな、正直ここまでに仕上がるなんて思っていなかったから驚きだ」
「驚くのはまだ早いっすよ」
流歌は人差し指を振り、意味ありげに言った。
「まだこれは完成じゃないすからね。ここから仕上げ塗りして、あっと驚く作品にしますから」
「作品か。楽しみにしてるよ」
「任せてください」
「じゃあ僕は中で賄いを作るから、小一時間したら中に入って来てくれないか。ほら、良さそうな野菜をたくさん買い付けて来たんだ」
「うす」
「はーい」
進藤は満足そうに笑むとダンボールを抱えて店に入っていく。
黙々と四人で塗装作業をこなしていくと、一花の予測通り一回目の上塗りを終える事が出来た。
そんな話を切り出したのは圭人だった。ガツンとみかんをたったの二口で食べ終えた流歌が、その冷たさに眉間にしわを寄せながら答える。
「だいたい。あともう少しで塗り終わる」
「さすが流歌だな。俺まだ下書きしかやってねー。やばい。桃子は?」
「私はもう終わらせちゃった」
「早いな。あぁ、俺やばいかも……明日は店に来ないで大学行こう。一花はどうよ」
聞かれて一花はギクリとした。
「ん、んー。まだまだかな」
「そっかぁ。でも一花、作業早いから油断できねーな。俺だけ置いてけぼりにされそうだ」
「あはは」
置いてけぼりにされそうなのはこっちだわ、とは言えずに一花は笑ってごまかした。一花は下書きが終わっていないどころか何を描くかも決まっていない。本当にやばいのは一花であるが、ひとまずそのことは思考から追いやっている。いくら頭をひねろうと、描けない時は描けない。
昼休憩を挟んでから再び塗装に取り掛かった。
広い面を塗り終わったら、角や継ぎ目部分を刷毛で細かく塗っていく。屋根との繋ぎ目近くの高い場所は流歌と圭人が担当し、一花と桃子はうずくまって地面近くの壁をひたすらに塗った。年季の入った建物なので、いくらきっちり洗浄しようともひび割れやこびりついた汚れによる凹凸が発生しており、それをカバーするように丹念に塗料を塗っていった。
今回塗装するのは店部分、つまり一階だけである。それも裏側まではやらないから、店の前面と側面の三方面だ。二階までやろうとすると足場を組む必要が出て来て、それは一花たちの手に負えない。脚立でどうにか届く一階部分のみを塗り直して店の外観をどうにかする算段だった。
真夏の日差しが和らぎ、夕方の風が吹く頃に進藤が店に帰って来た。NEW MINIを店の裏に回し、ダンボールを抱えて表へと回って来る。
「やあ、ずいぶん綺麗に塗れているね」
外壁を見るなり進藤が感心した声を上げる。
「ここからもう一度塗り重ねたら完成すよ」
「そしたら養生剥がして木枠を塗ったら終わりです」
流歌と圭人の二人が脚立に乗ったまま振り返り言う。
「すごいな、正直ここまでに仕上がるなんて思っていなかったから驚きだ」
「驚くのはまだ早いっすよ」
流歌は人差し指を振り、意味ありげに言った。
「まだこれは完成じゃないすからね。ここから仕上げ塗りして、あっと驚く作品にしますから」
「作品か。楽しみにしてるよ」
「任せてください」
「じゃあ僕は中で賄いを作るから、小一時間したら中に入って来てくれないか。ほら、良さそうな野菜をたくさん買い付けて来たんだ」
「うす」
「はーい」
進藤は満足そうに笑むとダンボールを抱えて店に入っていく。
黙々と四人で塗装作業をこなしていくと、一花の予測通り一回目の上塗りを終える事が出来た。
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