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Bistro Gens joyeux、開店します⑤
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「お疲れ様です」
「っす」
「あぁ、一花君と流歌君。お疲れ様。助かったよ、ありがとう」
進藤は微塵も疲れを感じさせない、むしろ開店した時よりもいい笑顔を二人に向けてきた。
「進藤さんは全然疲れてなさそうですね」
「こうやって料理してると、どんどん楽しくなってくるんだ。いやぁ、こんなにたくさんの注文を捌いたのは久しぶりだよ。やっぱり店をやるっていい事だね」
受け取った皿をじゃぶじゃぶ洗う進藤の表情は文字どおり生き生きしている。
「これなら夜も頑張れそうだ。成瀬君と圭人君の二人とも協力してやって行くよ」
「あの二人の連携は私たち以上だと思うので、きっと大丈夫だと思います」
何せラブラブバカップルを地でいく二人だ。コンビネーションは抜群だろう。
進藤は頷くと、「賄い出すからちょっと待っていてくれないか」と声をかけてきた。
「はい、今日の賄いはオムライスだよ」
とん、と置かれたオムライスはまるでお手本のような出来栄えだった。
中心がこんもりとふくらんだ楕円形の黄色いオムライスは、上にケチャップがかけられている。
一花は知っていた。このケチャップさえもが進藤の手作りである事を。
「いただきまーす」
スプーンを手に取りオムライスを豪快にえぐると、大きく口を開けて頬張る。
品が無いとか考えている余裕が無い程今の一花は腹ペコだ。
午前九時から働き始めて、今はもう十四時半。
休憩なしでここまで来たので、一花の胃袋は兎にも角にもカロリーを求めていた。
ふわふわの卵が口の中でとろりととろけた。
かすかにバターの味わいがする卵の内側からは、チキンライスが顔を覗かせる。
進藤の特製ケチャップは甘みと酸味のバランスが良く、トマトの味が確かに感じられる。
そのケチャップで味付けされたライスと一口大に切られた野菜、鶏もも肉。噛みしめるほどに旨味が溢れ、空腹の胃袋を刺激した。
もう一口!
次のオムライスを求めてスプーンでさらにすくって食べる。
今度は上にかかっているケチャップも一緒に取り分けた。
先ほどよりも強い酸味が口の中を刺激する。美味しい。流歌と二人で夢中になって食べ進めると、ニコニコと様子を見守っていた進藤もオムライスに手をつける。
その所作は相変わらず実に優雅で、腹ペコの大学生二人ががっついているのとは対照的だ。
しばらくはひたすらにオムライスを食べる音だけが店内に響き、やがて食事を終えた流歌が豪快に水を飲み干した。
「ぷはっ、ご馳走様でした。相変わらず進藤さんの飯、えげつない程うまいっすね」
「そう言ってもらえると作った甲斐があったよ」
進藤は上品に食事をしていたにも関わらず、意外にもそのペースは早く流歌とともに食べ終えていた。
一足遅れて完食した一花も水を飲みつつ二人の会話に混ざる。
「お客さんも喜んでいましたね。皆、お店が再開されるのを楽しみにしていたみたいですし」
「本当、こうして店を無事オープンする事が出来てよかったよ」
「皆、進藤さんを孫を見るような目で見てましたね」
「僕が小学生の頃から来てくれていた人たちばかりだったから……何だか気恥ずかしかったけど」
ははは、と笑う進藤は意味もなくテーブルの上のナフキンを弄び、バラの形を作り上げた。無意識に作り上げたにしては凄まじいクオリティのそれをパッと解くと、次はうさぎの形にする。
「午後もこんな感じで、お客さんたくさん来るといいっすね」
「うん」
「落ち着いたら桃子が店の様子をインスタにアップするって言ってましたよ」
「進藤さん、知ってます? 桃子のインスタ、フォロワー数一万人くらいいて影響力半端ないんすよ」
「ええ? そ、そんなにいるのかい?」
進藤が目を丸くしてナフキンのうさぎを握りしめた。流歌が頷く。
「テレビの威力ってすごいっすよね……桃子のインスタ見た若い子達が押し寄せる日も近いっすよ」
「う……が、頑張るよ」
進藤がたじたじとしながら言う。
「ま、でも、ひとまず昼の部は大成功って事で、午後も頑張ってください」
「うん」
進藤が首を縦に振り、「よし」と気合を入れた。初日成功まで、あと半分だ。
「っす」
「あぁ、一花君と流歌君。お疲れ様。助かったよ、ありがとう」
進藤は微塵も疲れを感じさせない、むしろ開店した時よりもいい笑顔を二人に向けてきた。
「進藤さんは全然疲れてなさそうですね」
「こうやって料理してると、どんどん楽しくなってくるんだ。いやぁ、こんなにたくさんの注文を捌いたのは久しぶりだよ。やっぱり店をやるっていい事だね」
受け取った皿をじゃぶじゃぶ洗う進藤の表情は文字どおり生き生きしている。
「これなら夜も頑張れそうだ。成瀬君と圭人君の二人とも協力してやって行くよ」
「あの二人の連携は私たち以上だと思うので、きっと大丈夫だと思います」
何せラブラブバカップルを地でいく二人だ。コンビネーションは抜群だろう。
進藤は頷くと、「賄い出すからちょっと待っていてくれないか」と声をかけてきた。
「はい、今日の賄いはオムライスだよ」
とん、と置かれたオムライスはまるでお手本のような出来栄えだった。
中心がこんもりとふくらんだ楕円形の黄色いオムライスは、上にケチャップがかけられている。
一花は知っていた。このケチャップさえもが進藤の手作りである事を。
「いただきまーす」
スプーンを手に取りオムライスを豪快にえぐると、大きく口を開けて頬張る。
品が無いとか考えている余裕が無い程今の一花は腹ペコだ。
午前九時から働き始めて、今はもう十四時半。
休憩なしでここまで来たので、一花の胃袋は兎にも角にもカロリーを求めていた。
ふわふわの卵が口の中でとろりととろけた。
かすかにバターの味わいがする卵の内側からは、チキンライスが顔を覗かせる。
進藤の特製ケチャップは甘みと酸味のバランスが良く、トマトの味が確かに感じられる。
そのケチャップで味付けされたライスと一口大に切られた野菜、鶏もも肉。噛みしめるほどに旨味が溢れ、空腹の胃袋を刺激した。
もう一口!
次のオムライスを求めてスプーンでさらにすくって食べる。
今度は上にかかっているケチャップも一緒に取り分けた。
先ほどよりも強い酸味が口の中を刺激する。美味しい。流歌と二人で夢中になって食べ進めると、ニコニコと様子を見守っていた進藤もオムライスに手をつける。
その所作は相変わらず実に優雅で、腹ペコの大学生二人ががっついているのとは対照的だ。
しばらくはひたすらにオムライスを食べる音だけが店内に響き、やがて食事を終えた流歌が豪快に水を飲み干した。
「ぷはっ、ご馳走様でした。相変わらず進藤さんの飯、えげつない程うまいっすね」
「そう言ってもらえると作った甲斐があったよ」
進藤は上品に食事をしていたにも関わらず、意外にもそのペースは早く流歌とともに食べ終えていた。
一足遅れて完食した一花も水を飲みつつ二人の会話に混ざる。
「お客さんも喜んでいましたね。皆、お店が再開されるのを楽しみにしていたみたいですし」
「本当、こうして店を無事オープンする事が出来てよかったよ」
「皆、進藤さんを孫を見るような目で見てましたね」
「僕が小学生の頃から来てくれていた人たちばかりだったから……何だか気恥ずかしかったけど」
ははは、と笑う進藤は意味もなくテーブルの上のナフキンを弄び、バラの形を作り上げた。無意識に作り上げたにしては凄まじいクオリティのそれをパッと解くと、次はうさぎの形にする。
「午後もこんな感じで、お客さんたくさん来るといいっすね」
「うん」
「落ち着いたら桃子が店の様子をインスタにアップするって言ってましたよ」
「進藤さん、知ってます? 桃子のインスタ、フォロワー数一万人くらいいて影響力半端ないんすよ」
「ええ? そ、そんなにいるのかい?」
進藤が目を丸くしてナフキンのうさぎを握りしめた。流歌が頷く。
「テレビの威力ってすごいっすよね……桃子のインスタ見た若い子達が押し寄せる日も近いっすよ」
「う……が、頑張るよ」
進藤がたじたじとしながら言う。
「ま、でも、ひとまず昼の部は大成功って事で、午後も頑張ってください」
「うん」
進藤が首を縦に振り、「よし」と気合を入れた。初日成功まで、あと半分だ。
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