2つの世界

あおりんご

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1章

決意

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目を覚ますと部屋の中にいた。記憶がとんでいる。確か、僕は…。
「ハトリ…?起きたか」
友人の声、安堵で笑みがこぼれる。
「あぁ…ありがとう。いろいろと…」
そう言うと友人は笑った。
「別に大した事じゃないよ。それより大変だったんだぞ。痛みはないか?」
体を起こそうとするとズキッと激痛が走る。
「ウッ…!」
「あーやっぱり重症か…」
ため息をされると、強い声が聞こえてきた。
「失礼する。」
「大佐!何故!」
飛び出た顔の骨と、猪のような体はとても大きかった。
「大佐…僕は一体何を?」
「お前は、あの化け物を見て、復讐の念に駆られたのだ。」
鮮明に記憶が蘇る。唖然とする周り、走り出す僕。叫ぶ友人。
「お前の中には闇がある。大きな闇が。」
唖然とした、確かに母さんを殺されたが、復讐はそこじゃない…。
「それでだ、お前はこれから政府の監視下に置かれる。」
口が閉じない。驚愕の一言。
「信じれないのはわかる。政府がそうしたらしい。」
「何故です…?大佐。友人は何もしてない!」
顔を下に向ける大佐。その目は未来を見ているようだった。
「…あの化け物は政府がウィレアをウィレアの土地を奪う為に作り出したそうだ。」
「なっ…?!」
信じられない。頭が真っ白になる。
「なら病気は…?」
やっと話せても何もできない赤ん坊のように聞いてしまう。
「試す為だったそうだ。どれだけの殺傷力があるか…。」
記憶が蘇る。

咳き込む母、そばにいる僕。何もできかった、母を殺したモノへの復讐心。

「…」
「ハトリ?」

闇が膨れ上がる。


「許さない…許さない!」
憎悪で自分の体が染まるのが分かる。
「やめろ!ハトリ!お前如きが行っても潰されるだけだ!」
「なら!なら!どうしろって言うんですか!あいつらのせいで、多くの人が死んだ!ついには何もしてないウィレアの人さえも死んでしまう!」
大声を出し、何事かと、人が集まる。
「2人とも、落ち着け…!」
大佐の目はどこか悲しげだった。
「…ろ。」
「え?」
「逃げて、お前がウィレアの人を救え。」
空気が張り詰める。
「でも!そんなことをしたら…政府が」
溢れ出る感情に脳が追いつかない。
「俺がなんとかする。だからお前はウィレアを、救え。」
鋭い大佐の目に何も言うことができなかった。
「…ハトリ。俺からもお願いだ。」
友人が凛々しい顔して言う。
「俺の妹も…病で死んだ。こんな身勝手なことに俺はついていけない…!」
今にも泣き出しそうな声で言う。
「大半のユーパラの人間は政府のせいで正気を失った!自分たちが正しいと思い込んでいる…!」
幼き目で言う。
「お願いだ!お前しかいない!」
「…!」
その目はどこか母に似ていた。

「ハトリ…壁を壊しなさい。そして世界を見な…」

母の声がする。目をみはらき、彼は言う。
「行きます。」
2人の目が希望に満ちていた。
「明日の夜、偉大なる壁が開く。ウィレアの人々が明日お通りになる。その時を見計らって行け。」
大佐の言葉は重く心へ沈んだ。

母が笑っているような気がした。
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