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1章
Side レン 不思議な人に買われました②
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あれから暫く、ご主人様と私は無言でした。私から話しかけて良いのかもわかりませんし、話しかけても何を話せば良いのかわかりません。私を買ってくださった事や、さっきの魔法の事でご主人様の謎は深まるばかりです。白髪の【死神】はこの人なのでしょうか?…有り得ないですよね。謎の言動や優しい笑顔を見る限り、この人があの【死神】だとは思えません。
ご主人様を見失わないように付いていきながら、色々考えていると地面に穴が空いている場所でご主人様が立ち止まりました。
「ここが我が家です!」
えっ、今なんとおっしゃいました?私の耳が正常に機能していれば、いま、ここが我が家、と言ったはずです。辺りを見渡してみても、どこにも家なんて無く、あるのはかなり大きな穴のみです。家具のひとつもありません。もしかして、ここで野宿ということなのでしょうか?
「朝、家が消え去ってさ」
「消え去った!?え、消え去った!?」
「うん、消え去った」
ご主人様いわく、ペットのジョニーと方向性の食い違いで喧嘩した弾みで家を消滅させてしまったそうです。
「なんですかこれ…爆弾でも爆発させたんですか?」
この大きな穴を見る限り、強力な爆弾を爆発させたとしか私は思えませんでした。本当にこの人は不思議です。どう言う人なのか全く想像出来ず、ただ呆然とご主人様の顔を見つめてしまいました。
「この世界が滅ばない程度の魔法を放ったらこうなっちゃったんだよね」
世界が滅ぶ!?…やはりこの人は大魔法使い様なのでしょうか?…私は生まれつき、人から流れ出ている魔力を見る事ができますが、ご主人様からは一切魔力を感じられません。赤ん坊であっても軟弱な人であっても、微弱ながらも魔力は人に備わっています。ですが、ご主人様からはどれだけ目を凝らしても魔力が見えないのです。
一年以上前、私が奴隷になる前のお話ですが、私が暮らしていた村の村長さんが「真に強い魔法使いは魔力を隠せる」と、仰っていました。もしかすると、ご主人様は本当に凄い人なのかもしれません。謎は深まるばかりです。
ですが、家が無いと言う事は暮らすこともできません。
これから先、どうするのかを聞いてみました。
「そうそれ!それが本題な訳でさ。どうすべきだと思う?」
「えっ」
「意見を仰ぐ為に君を買ったんだー。あと、同じ白髪ってことで色々シンパシー感じちゃってさ」
「は、はぁ…」
つまり、自分の勘を信じて私を買った…という事ですね。禁忌に近いものもある白髪の子である私を、自分の勘だけを信じて買うだなんて本当にこの人が何を考えているのかわかりません。
魔法で家を建てるか…でも面倒だな…、と呟いていますが、魔法で家を建てることなんて可能なのでしょうか?いずれ、オリハルコンで家を建てる、なんて事を言い出しそうな発想ですよね。
「とりあえず、宿とか…」
「おお!ナイスアイデア!成り行きに任せたけどやっぱスゲェな。大成功じゃん俺の成り行き大作戦!」
どうしてご主人様は、魔法で家を建てる…なんてとち狂った発想はできるのに、宿に泊まると言う誰もが思う発想ができなかったのでしょうか?
そしてここに来て一つ目の不安がやってまいりました。
「あ、あの…」
「んぇ?なになに」
正直、とても言いづらいです。図々しい奴隷と思われることが怖いです。…どうして、ご主人様は顔を赤らめモジモジしているんでしょうか?何かとても大きの勘違いをされている気がします。
いつまでも言い出さないわけにもいかないので、勇気を振り絞って私も宿に泊まって良いか聞いてみることにしました。
「わ、私も…とまっ、泊まっても良いですか?」
ご主人様はポカンとしています。無言の間が怖いです。とても…怖いです…。拒絶されたらどうしよう…図々しい奴隷なんて要らない、と捨てられたらどうしよう…怖い…怖いです。
「当たり前じゃん。ちゃんとご飯も3食くって、ちゃんとベッドで寝て、まぁ、ダラダラ過ごそう」
「えっ」
えっ…
「良いんですか…?先輩から過酷なの聞いてて、怖かったんです…。うぅ…」
先輩奴隷さんから酷い仕打ちを受けることを聞いていたので、この人の何気無い優しさについホッとして涙腺が緩んでしまいました。たった1年、されど1年も薄暗い折の中で過ごし、その1年間、1度も優しさに触れられなかった私にとって、その何気ない優しさと幸せがとても大きな物に感じれました。
泣いている私を見て、あたふたしているご主人様。贔屓目なしに見ても端正な顔立ちをしておられるこの方が、ただの奴隷な私の為に、どうすれば良いのかと悩んでいる姿をとても愛おしく思いました。
「じ、じゃあとりあえず宿とろうか。その後、レンちゃんの服とか靴とかアクセとか買いに行こうね。昼ご飯も一緒に取っちゃおう」
なんと、ご主人様は洋服や靴、アクセサリーまで買ってくださるそうです。先輩奴隷さんから聞いた話とは、全く違う待遇に戸惑いはしましたが私も女の子です。奴隷になる前は、おしゃれにも興味がありました。奴隷になってから諦めるしか無かったオシャレ…諦めていたのに、ご主人様は出会ってすぐに見せてくれた優しい笑顔で、喜んでいる私を見つめ微笑んでくださいました。
───────────────(´・ω・`)
平民街の中では見た感じとても立派な宿に、1週間連泊することに決まりました。最初ご主人様が二部屋取ろうとしたので、焦ってしまい、一部屋で良い、と言ってしまいました。もしかすると、奴隷である私と一緒の空間が寝るのが嫌なだけだったかもしれないのに…図々しかったですよね。
でも、後悔はあまりしていません。片時も離れたくないのです。起きたら居なくなっている事や捨てられる事が怖いという気持ちも多少ありますが、それ以上に、この不思議なご主人様と一緒にいたい…という気持ちもあります。
「本当に一部屋で良かったの?」
「はい!ご主人様と一緒が良いです!」
流石に積極的過ぎますか?私が私じゃないような積極性。もはや、反射的に答えてしまっているのかもしれません。積極的な言葉を発する度、顔が熱くなるのがわかります。この気持ちは…なんなのでしょう?
「ご主人様じゃなくて、イオリでいいよ」
「えっ、ダメです!ご主人様はご主人様です!」
「えぇ…。じゃあイオリさんで!名前で呼ばれたいの!」
「えっ、と。イオリさん…?」
戸惑いながらもなんとか言えました!でも、どうしてご主人様はモジモジされているのでしょう?やっぱりこの人は不思議な人です。
…流石にもうお昼過ぎなのでお腹が空いてきました。でも、大丈夫です。全然耐えれる…と思っていたのに、ぐぅ、とお腹が鳴ってしまいました。うぅ…恥ずかしい。
「多分お腹空いてるよね。何か食べたい物とかある?」
気づかないフリをしてくださったのでしょうか?こんなに優しい人、村にもいませんでした。
食べたい物…1年間まともな食事をしていなかったので食材の味を忘れてしまっています。どう言えば良いのかわからず、戸惑っている私にご主人様は「好きな食べ物とかは?」と、また笑顔で聞いてくださいました。
「えぇっと…お魚が好きです」
「お魚かぁ…よし、じゃあキールさんのとこ行こう」
キールさんとは誰なのでしょうか?きっとお食事処の人なのでしょうね。ご主人様いわく、キールさんは食材があれば大抵のものは作れる凄腕の料理人らしいです。
「よっしゃー!魚食いにいくぞー!」
「お、おー!」
ファイトー!と、声が聞こえてきそうなほど勢い良く拳を振り上げるものですから私も咄嗟に振り上げてしまいました。恥ずかしい…
その後、無事お店に到着したみたいですが何故かお店の中に入ろうとしません。
「レンちゃん。ココには1人バケモノがいる。叫ばないように気をつけてね。ちなみに俺は初入店した時、めちゃくちゃ叫んだ。そのまま店を出ようとしたら、引っ掴まれて、無理矢理座らされた挙句殴られた。」
店名は…〈男前亭〉 何となく店名だけで異様なのはわかりますが、どうしてご主人様はこのお店に入ろうと思ったのでしょうか?私1人ならきっと避けて通っていると思います。
ご主人様が殴られた…ことに関しては、まだまだ全然ご主人様のことを知らないですがきっと何かやらかしたのでしょう。覚悟を決めて店内に入ります…!
「イオリさんだー!いらっしゃいませ!…ってあれ?」
「こんにちは、マリアちゃん。筋肉達磨は居ないの?」
「こんにちは!パパならイオリさんの横にいますよ?」
「へっ?」
可愛い女の子…と、ご主人様の横で怒っているスキンヘッドのマッチョ…。戦いに関して知識が無い私にもわかるほど強烈な殺気、これにはご主人様もタジタジですね。
「そう言えば後ろの人だれですかー?」
「嫁です」
「「「嫁!?」」」
い、いつ私はご主人様のお嫁さんになったんですか!?プ、プロポーズなんてされてないですし、指輪も貰ってません!…じゃなくて!私は奴隷ですよ!……そりゃ結婚願望とかありますし、その相手がご主人様だったらきっと幸せでしょうけど…って、私は何を考えているんですか!
「冗談ですよ、冗談。とりあえず、魚使ってなんか適当に料理作ってくださいな。栄養満点で美味しく頼むよ!期待してるぜ、キールさん」
「その前に一発殴るわな」
ゴッチン!
「よっしゃ!とびきり美味ェの作ってやるからな!待ってろよ!」
とても痛そうな音が聞こえたにも関わらず、キールさんもご主人様も平然としていて、マリアさん?もクスクスと笑っています。きっといつもの風景なんでしょうね、どうしてでしょう?少し寂しく感じました。
「キールさん、膝って十回言ってください」
「膝、膝、膝、膝、膝、膝、膝、膝、膝、膝」
「ここは?」
「魚」
な、ななっ…納得いきません!
「よし、じゃあ作るわ」
「よし、じゃあレンちゃん座ろうか。暑苦しいオッサンがごめんね」
「え、いや、大丈夫です。それよりも、頭大丈夫ですか?冷やしましょうか?」
「あー、大丈夫。慣れてるし」
「なっ」
ご飯屋さんの店主に殴られ慣れてる人って普通いませんよね!?え、私がおかしいのでしょうか!?
「ほい。おまちどーさん!」
そんなことを考えているうちにキールさんが出来上がった料理を運んできてくださいました。
「キター!いただきますー!」
「本当に食べていいんですか?」
「食べて食べて。いっぱい食べて。足りなかったら注文でも何でもして」
「そして、オレを儲けさせてくれるんだろ?ありがてーな。」
「キールさんは無視して良いから食べて食べて」
「い、いただきます」
お、美味しい…。なんですかこの味付けは!あの体格に似合わずとても繊細な味がします!少しピリッとしたこの辛さも素敵です!
「イオリ」
「ふぁい!?」
「なんだその間抜けな返事」
「なんでもないです、流してください」
「多分、お前とレンちゃん?は、歳も近いだろうから安心してるけどもし未成年だったら…」
「だったら…?」
「そういうことはしないようにな」
「…キールさんは見境なく俺が手を出すと思ってるんですか」
「うん」
「俺の名刀シリーズで切り伏せてやる!そこに直れェ!」
「ハッハッハッ!許せ!」
「許す」
何の話をしているのでしょうか?私に関係することのようですが、よくわかりません。
「という訳でキールさん、マリアちゃんください」
「どういう訳か知らんが断る」
「けち」
ご主人様とキールさんの何気無い会話。冗談だとわかっていてもモヤモヤします。むぅ。
モヤモヤしていることに気付いてください!と言う意味を込めてご主人様の服の裾を引っ張ってみました。
「どうしたのレンちゃん」
どうして気付いてくれないんですか!…まあいいです。私のことを気遣って何度も「どうしたの?」と聞いてくれたのでちょっと得した気分です。
ご主人様も私もお腹いっぱいになったのでお店を出ることにしました。支払いをサッと済ませ、ご馳走様、と慣れた様子でお店を出るご主人様。少しだけですが、私と出会う前のご主人様をしれて良かった気がします。
この人は本当に不思議な人です。
ご主人様を見失わないように付いていきながら、色々考えていると地面に穴が空いている場所でご主人様が立ち止まりました。
「ここが我が家です!」
えっ、今なんとおっしゃいました?私の耳が正常に機能していれば、いま、ここが我が家、と言ったはずです。辺りを見渡してみても、どこにも家なんて無く、あるのはかなり大きな穴のみです。家具のひとつもありません。もしかして、ここで野宿ということなのでしょうか?
「朝、家が消え去ってさ」
「消え去った!?え、消え去った!?」
「うん、消え去った」
ご主人様いわく、ペットのジョニーと方向性の食い違いで喧嘩した弾みで家を消滅させてしまったそうです。
「なんですかこれ…爆弾でも爆発させたんですか?」
この大きな穴を見る限り、強力な爆弾を爆発させたとしか私は思えませんでした。本当にこの人は不思議です。どう言う人なのか全く想像出来ず、ただ呆然とご主人様の顔を見つめてしまいました。
「この世界が滅ばない程度の魔法を放ったらこうなっちゃったんだよね」
世界が滅ぶ!?…やはりこの人は大魔法使い様なのでしょうか?…私は生まれつき、人から流れ出ている魔力を見る事ができますが、ご主人様からは一切魔力を感じられません。赤ん坊であっても軟弱な人であっても、微弱ながらも魔力は人に備わっています。ですが、ご主人様からはどれだけ目を凝らしても魔力が見えないのです。
一年以上前、私が奴隷になる前のお話ですが、私が暮らしていた村の村長さんが「真に強い魔法使いは魔力を隠せる」と、仰っていました。もしかすると、ご主人様は本当に凄い人なのかもしれません。謎は深まるばかりです。
ですが、家が無いと言う事は暮らすこともできません。
これから先、どうするのかを聞いてみました。
「そうそれ!それが本題な訳でさ。どうすべきだと思う?」
「えっ」
「意見を仰ぐ為に君を買ったんだー。あと、同じ白髪ってことで色々シンパシー感じちゃってさ」
「は、はぁ…」
つまり、自分の勘を信じて私を買った…という事ですね。禁忌に近いものもある白髪の子である私を、自分の勘だけを信じて買うだなんて本当にこの人が何を考えているのかわかりません。
魔法で家を建てるか…でも面倒だな…、と呟いていますが、魔法で家を建てることなんて可能なのでしょうか?いずれ、オリハルコンで家を建てる、なんて事を言い出しそうな発想ですよね。
「とりあえず、宿とか…」
「おお!ナイスアイデア!成り行きに任せたけどやっぱスゲェな。大成功じゃん俺の成り行き大作戦!」
どうしてご主人様は、魔法で家を建てる…なんてとち狂った発想はできるのに、宿に泊まると言う誰もが思う発想ができなかったのでしょうか?
そしてここに来て一つ目の不安がやってまいりました。
「あ、あの…」
「んぇ?なになに」
正直、とても言いづらいです。図々しい奴隷と思われることが怖いです。…どうして、ご主人様は顔を赤らめモジモジしているんでしょうか?何かとても大きの勘違いをされている気がします。
いつまでも言い出さないわけにもいかないので、勇気を振り絞って私も宿に泊まって良いか聞いてみることにしました。
「わ、私も…とまっ、泊まっても良いですか?」
ご主人様はポカンとしています。無言の間が怖いです。とても…怖いです…。拒絶されたらどうしよう…図々しい奴隷なんて要らない、と捨てられたらどうしよう…怖い…怖いです。
「当たり前じゃん。ちゃんとご飯も3食くって、ちゃんとベッドで寝て、まぁ、ダラダラ過ごそう」
「えっ」
えっ…
「良いんですか…?先輩から過酷なの聞いてて、怖かったんです…。うぅ…」
先輩奴隷さんから酷い仕打ちを受けることを聞いていたので、この人の何気無い優しさについホッとして涙腺が緩んでしまいました。たった1年、されど1年も薄暗い折の中で過ごし、その1年間、1度も優しさに触れられなかった私にとって、その何気ない優しさと幸せがとても大きな物に感じれました。
泣いている私を見て、あたふたしているご主人様。贔屓目なしに見ても端正な顔立ちをしておられるこの方が、ただの奴隷な私の為に、どうすれば良いのかと悩んでいる姿をとても愛おしく思いました。
「じ、じゃあとりあえず宿とろうか。その後、レンちゃんの服とか靴とかアクセとか買いに行こうね。昼ご飯も一緒に取っちゃおう」
なんと、ご主人様は洋服や靴、アクセサリーまで買ってくださるそうです。先輩奴隷さんから聞いた話とは、全く違う待遇に戸惑いはしましたが私も女の子です。奴隷になる前は、おしゃれにも興味がありました。奴隷になってから諦めるしか無かったオシャレ…諦めていたのに、ご主人様は出会ってすぐに見せてくれた優しい笑顔で、喜んでいる私を見つめ微笑んでくださいました。
───────────────(´・ω・`)
平民街の中では見た感じとても立派な宿に、1週間連泊することに決まりました。最初ご主人様が二部屋取ろうとしたので、焦ってしまい、一部屋で良い、と言ってしまいました。もしかすると、奴隷である私と一緒の空間が寝るのが嫌なだけだったかもしれないのに…図々しかったですよね。
でも、後悔はあまりしていません。片時も離れたくないのです。起きたら居なくなっている事や捨てられる事が怖いという気持ちも多少ありますが、それ以上に、この不思議なご主人様と一緒にいたい…という気持ちもあります。
「本当に一部屋で良かったの?」
「はい!ご主人様と一緒が良いです!」
流石に積極的過ぎますか?私が私じゃないような積極性。もはや、反射的に答えてしまっているのかもしれません。積極的な言葉を発する度、顔が熱くなるのがわかります。この気持ちは…なんなのでしょう?
「ご主人様じゃなくて、イオリでいいよ」
「えっ、ダメです!ご主人様はご主人様です!」
「えぇ…。じゃあイオリさんで!名前で呼ばれたいの!」
「えっ、と。イオリさん…?」
戸惑いながらもなんとか言えました!でも、どうしてご主人様はモジモジされているのでしょう?やっぱりこの人は不思議な人です。
…流石にもうお昼過ぎなのでお腹が空いてきました。でも、大丈夫です。全然耐えれる…と思っていたのに、ぐぅ、とお腹が鳴ってしまいました。うぅ…恥ずかしい。
「多分お腹空いてるよね。何か食べたい物とかある?」
気づかないフリをしてくださったのでしょうか?こんなに優しい人、村にもいませんでした。
食べたい物…1年間まともな食事をしていなかったので食材の味を忘れてしまっています。どう言えば良いのかわからず、戸惑っている私にご主人様は「好きな食べ物とかは?」と、また笑顔で聞いてくださいました。
「えぇっと…お魚が好きです」
「お魚かぁ…よし、じゃあキールさんのとこ行こう」
キールさんとは誰なのでしょうか?きっとお食事処の人なのでしょうね。ご主人様いわく、キールさんは食材があれば大抵のものは作れる凄腕の料理人らしいです。
「よっしゃー!魚食いにいくぞー!」
「お、おー!」
ファイトー!と、声が聞こえてきそうなほど勢い良く拳を振り上げるものですから私も咄嗟に振り上げてしまいました。恥ずかしい…
その後、無事お店に到着したみたいですが何故かお店の中に入ろうとしません。
「レンちゃん。ココには1人バケモノがいる。叫ばないように気をつけてね。ちなみに俺は初入店した時、めちゃくちゃ叫んだ。そのまま店を出ようとしたら、引っ掴まれて、無理矢理座らされた挙句殴られた。」
店名は…〈男前亭〉 何となく店名だけで異様なのはわかりますが、どうしてご主人様はこのお店に入ろうと思ったのでしょうか?私1人ならきっと避けて通っていると思います。
ご主人様が殴られた…ことに関しては、まだまだ全然ご主人様のことを知らないですがきっと何かやらかしたのでしょう。覚悟を決めて店内に入ります…!
「イオリさんだー!いらっしゃいませ!…ってあれ?」
「こんにちは、マリアちゃん。筋肉達磨は居ないの?」
「こんにちは!パパならイオリさんの横にいますよ?」
「へっ?」
可愛い女の子…と、ご主人様の横で怒っているスキンヘッドのマッチョ…。戦いに関して知識が無い私にもわかるほど強烈な殺気、これにはご主人様もタジタジですね。
「そう言えば後ろの人だれですかー?」
「嫁です」
「「「嫁!?」」」
い、いつ私はご主人様のお嫁さんになったんですか!?プ、プロポーズなんてされてないですし、指輪も貰ってません!…じゃなくて!私は奴隷ですよ!……そりゃ結婚願望とかありますし、その相手がご主人様だったらきっと幸せでしょうけど…って、私は何を考えているんですか!
「冗談ですよ、冗談。とりあえず、魚使ってなんか適当に料理作ってくださいな。栄養満点で美味しく頼むよ!期待してるぜ、キールさん」
「その前に一発殴るわな」
ゴッチン!
「よっしゃ!とびきり美味ェの作ってやるからな!待ってろよ!」
とても痛そうな音が聞こえたにも関わらず、キールさんもご主人様も平然としていて、マリアさん?もクスクスと笑っています。きっといつもの風景なんでしょうね、どうしてでしょう?少し寂しく感じました。
「キールさん、膝って十回言ってください」
「膝、膝、膝、膝、膝、膝、膝、膝、膝、膝」
「ここは?」
「魚」
な、ななっ…納得いきません!
「よし、じゃあ作るわ」
「よし、じゃあレンちゃん座ろうか。暑苦しいオッサンがごめんね」
「え、いや、大丈夫です。それよりも、頭大丈夫ですか?冷やしましょうか?」
「あー、大丈夫。慣れてるし」
「なっ」
ご飯屋さんの店主に殴られ慣れてる人って普通いませんよね!?え、私がおかしいのでしょうか!?
「ほい。おまちどーさん!」
そんなことを考えているうちにキールさんが出来上がった料理を運んできてくださいました。
「キター!いただきますー!」
「本当に食べていいんですか?」
「食べて食べて。いっぱい食べて。足りなかったら注文でも何でもして」
「そして、オレを儲けさせてくれるんだろ?ありがてーな。」
「キールさんは無視して良いから食べて食べて」
「い、いただきます」
お、美味しい…。なんですかこの味付けは!あの体格に似合わずとても繊細な味がします!少しピリッとしたこの辛さも素敵です!
「イオリ」
「ふぁい!?」
「なんだその間抜けな返事」
「なんでもないです、流してください」
「多分、お前とレンちゃん?は、歳も近いだろうから安心してるけどもし未成年だったら…」
「だったら…?」
「そういうことはしないようにな」
「…キールさんは見境なく俺が手を出すと思ってるんですか」
「うん」
「俺の名刀シリーズで切り伏せてやる!そこに直れェ!」
「ハッハッハッ!許せ!」
「許す」
何の話をしているのでしょうか?私に関係することのようですが、よくわかりません。
「という訳でキールさん、マリアちゃんください」
「どういう訳か知らんが断る」
「けち」
ご主人様とキールさんの何気無い会話。冗談だとわかっていてもモヤモヤします。むぅ。
モヤモヤしていることに気付いてください!と言う意味を込めてご主人様の服の裾を引っ張ってみました。
「どうしたのレンちゃん」
どうして気付いてくれないんですか!…まあいいです。私のことを気遣って何度も「どうしたの?」と聞いてくれたのでちょっと得した気分です。
ご主人様も私もお腹いっぱいになったのでお店を出ることにしました。支払いをサッと済ませ、ご馳走様、と慣れた様子でお店を出るご主人様。少しだけですが、私と出会う前のご主人様をしれて良かった気がします。
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