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第二章 崩壊と再生
第一節:思惑(男視点)
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あの夜、美咲は完全に堕ちきったわけではなかった。
体は既に自分の熱と快楽に染め上げられていたが、心の奥ではまだ婚約者という存在に縋ろうとしていた。
だからこそ――面白い。
「最後に壊すのは、心だ」
そのために利用するのは、美咲の婚約者・翔太。
彼女が唯一まだ「自分の居場所」として縋ろうとする存在を、目の前で打ち砕く。
そして翔太の前で、彼女自身に「裏切り」を強制させる。
そうなれば、美咲は自ら望んで堕ちていく。
もう二度と、他の誰にも救えなくなる。
その筋書きは、最初から頭の中に描かれていた。
翔太が違和感を抱き始めていることなど、手に取るようにわかった。
人の心の揺らぎや疑念は、わずかな仕草から透けて見える。
ましてや、美咲のように隠し事が苦手な女ならなおさら。
「どうせなら、確信に変えてやろう」
そう考え、差出人不明の郵便物を送った。
一枚の写真と、一言のメッセージカード。
そこには、美咲が鏡の前で首輪と縄に縛られ、後ろから貫かれている姿が鮮明に映っていた。
モザイクなど不要。ありのままの堕落を突きつければいい。
翔太は動揺し、疑念を確信に変え、必ず動く。
その先に待っているのは、自分が用意した「舞台」だ。
数日の間、翔太が美咲を尾行していることは、こちらもすぐに把握した。
鈍い。素人丸出しの尾行など、少し気を配ればすぐに気づける。
だが、美咲はそのことにまったく気づいていなかった。
いや、気づく余裕すらなかった。
(可愛いものだ……自分を追ってくる男がいるとも知らず、ただ俺からの連絡を待ち焦がれている……)
その姿を想像するだけで、支配欲はさらに膨らんでいく。
翔太は、何日も何も掴めずに空回りしていた。
それもまた計画通り。
焦燥と疑念を募らせれば募らせるほど、罠にかかった時の衝撃は強くなる。
そして――「仕上げ」の日を迎えた。
美咲には、短いメッセージを送った。
「○○ホテル、20時。部屋番号は――」
久しぶりの呼び出しに、美咲は迷いながらも従った。
翔太との予定を断ってまで。
その一方で翔太にも仕掛けを施した。
どうせ美咲を追って尾行してくるに違いない。
その瞬間を狙えばいい。
翔太が、ホテルの廊下の物陰から美咲を伺っている。
息を殺し、声をかけようとしたその瞬間――
俺は背後に忍び寄り、用意していた金属バットの柄で後頭部を打ち据えた。
「ゴッ!」という鈍い音。
翔太は驚いた顔を見せる間もなく崩れ落ち、床に倒れ込む。
意識が沈んでいく彼の瞳に、ほんの一瞬、俺の影が映った。
(これでいい……お前は俺の舞台装置に過ぎない)
美咲は、翔太の存在に気づくこともなく、カードキーを差し込んで部屋へ入っていく。
すべてが予定通り。
美咲には、最初の部屋に入るように指示を出していた。
だが、そこに置かれていたのは一枚の紙切れ。
「15分後、最上階のVIPルームへ来い」
理由も告げず、ただ従わせる。
従順に動く彼女の姿を思い浮かべるだけで、支配の手応えは確かだった。
翔太は気絶したまま。
俺は用意していた別室に彼を運び込んだ。
目を覚ました時、彼が目撃する光景は――美咲が自分の目の前で快楽に堕ちていく姿だ。
「翔太、お前の役目はただ一つ。美咲を見捨てさせること」
そして美咲には、その瞬間をもって完全に理解させる。
「お前を救うのは俺だけだ」と。
計画はすでに完成していた。
後は、舞台の幕を上げるだけだ。
胸の奥で湧き上がるのは、冷徹な快感だった。
相手の人生を、自分の思うままに書き換えていく。
美咲の体を徹底的に調教した夜も愉悦だったが、今度は心を壊す舞台。
翔太の絶望と、美咲の裏切りと、そして彼女の堕落――。
すべてが揃った時、彼女は本当の意味で俺のものになる。
(美咲……お前の涙も、叫びも、すべて俺のためにあるんだ)
そう確信した瞬間、胸の奥で抑えきれない興奮が熱を帯びていた。
体は既に自分の熱と快楽に染め上げられていたが、心の奥ではまだ婚約者という存在に縋ろうとしていた。
だからこそ――面白い。
「最後に壊すのは、心だ」
そのために利用するのは、美咲の婚約者・翔太。
彼女が唯一まだ「自分の居場所」として縋ろうとする存在を、目の前で打ち砕く。
そして翔太の前で、彼女自身に「裏切り」を強制させる。
そうなれば、美咲は自ら望んで堕ちていく。
もう二度と、他の誰にも救えなくなる。
その筋書きは、最初から頭の中に描かれていた。
翔太が違和感を抱き始めていることなど、手に取るようにわかった。
人の心の揺らぎや疑念は、わずかな仕草から透けて見える。
ましてや、美咲のように隠し事が苦手な女ならなおさら。
「どうせなら、確信に変えてやろう」
そう考え、差出人不明の郵便物を送った。
一枚の写真と、一言のメッセージカード。
そこには、美咲が鏡の前で首輪と縄に縛られ、後ろから貫かれている姿が鮮明に映っていた。
モザイクなど不要。ありのままの堕落を突きつければいい。
翔太は動揺し、疑念を確信に変え、必ず動く。
その先に待っているのは、自分が用意した「舞台」だ。
数日の間、翔太が美咲を尾行していることは、こちらもすぐに把握した。
鈍い。素人丸出しの尾行など、少し気を配ればすぐに気づける。
だが、美咲はそのことにまったく気づいていなかった。
いや、気づく余裕すらなかった。
(可愛いものだ……自分を追ってくる男がいるとも知らず、ただ俺からの連絡を待ち焦がれている……)
その姿を想像するだけで、支配欲はさらに膨らんでいく。
翔太は、何日も何も掴めずに空回りしていた。
それもまた計画通り。
焦燥と疑念を募らせれば募らせるほど、罠にかかった時の衝撃は強くなる。
そして――「仕上げ」の日を迎えた。
美咲には、短いメッセージを送った。
「○○ホテル、20時。部屋番号は――」
久しぶりの呼び出しに、美咲は迷いながらも従った。
翔太との予定を断ってまで。
その一方で翔太にも仕掛けを施した。
どうせ美咲を追って尾行してくるに違いない。
その瞬間を狙えばいい。
翔太が、ホテルの廊下の物陰から美咲を伺っている。
息を殺し、声をかけようとしたその瞬間――
俺は背後に忍び寄り、用意していた金属バットの柄で後頭部を打ち据えた。
「ゴッ!」という鈍い音。
翔太は驚いた顔を見せる間もなく崩れ落ち、床に倒れ込む。
意識が沈んでいく彼の瞳に、ほんの一瞬、俺の影が映った。
(これでいい……お前は俺の舞台装置に過ぎない)
美咲は、翔太の存在に気づくこともなく、カードキーを差し込んで部屋へ入っていく。
すべてが予定通り。
美咲には、最初の部屋に入るように指示を出していた。
だが、そこに置かれていたのは一枚の紙切れ。
「15分後、最上階のVIPルームへ来い」
理由も告げず、ただ従わせる。
従順に動く彼女の姿を思い浮かべるだけで、支配の手応えは確かだった。
翔太は気絶したまま。
俺は用意していた別室に彼を運び込んだ。
目を覚ました時、彼が目撃する光景は――美咲が自分の目の前で快楽に堕ちていく姿だ。
「翔太、お前の役目はただ一つ。美咲を見捨てさせること」
そして美咲には、その瞬間をもって完全に理解させる。
「お前を救うのは俺だけだ」と。
計画はすでに完成していた。
後は、舞台の幕を上げるだけだ。
胸の奥で湧き上がるのは、冷徹な快感だった。
相手の人生を、自分の思うままに書き換えていく。
美咲の体を徹底的に調教した夜も愉悦だったが、今度は心を壊す舞台。
翔太の絶望と、美咲の裏切りと、そして彼女の堕落――。
すべてが揃った時、彼女は本当の意味で俺のものになる。
(美咲……お前の涙も、叫びも、すべて俺のためにあるんだ)
そう確信した瞬間、胸の奥で抑えきれない興奮が熱を帯びていた。
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