調教ホテル 堕ちる夜

黒猫と夜

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第四章 調教の館

第十八節:地獄

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玲奈の身体はまだびくっ、びくんっと小さく痙攣を繰り返していた。
涙で濡れた頬、涎で光る顎、紅潮した肌。全身が「犯された証」を刻まれたまま震えている。

美咲はその顔を両手で挟み込み、目を逸らさせないようにした。
「玲奈、まだ終わりじゃないの。ここまでで限界だと思った? ――甘いわ。ご主人様の望みは、もっと先にあるの」

玲奈の唇が震え、かすれた声が押し出される。
「……も、もう……無理……これ以上は……」
声にならない吐息が混じり、**ひゅっ、ひゅぅ……**と喉が鳴る。

しかしご主人様がその傍らに立つと、玲奈の背筋が無意識に震えた。
低い声が室内を支配する。
「……無理かどうかを決めるのは、お前じゃない。俺だ」

玲奈の心臓が再び強く跳ねた。どくんっ、どくんっと鼓動が耳の奥を叩く。
「……っひ……」
その瞬間、彼女は自分の呼吸さえ支配されていることを思い知らされる。

美咲はご主人様の言葉に合わせるように玲奈の耳に唇を寄せ、囁いた。
「聞いた? これから先、玲奈がどうされるかは全部ご主人様が決めるの。私も従うし、玲奈も従うしかないのよ」

玲奈の胸が激しく上下し、はぁっ、はぁっと浅い息が乱れる。
「……っ、いや……そんな……」
まだ言葉で拒もうとするが、その声は細く、怯えと絶望に震えていた。

ご主人様は冷徹に続ける。
「今のお前は快楽に溺れている途中だ。嫌がる心と悦ぶ身体、その矛盾が崩れるまで――俺は徹底的に調教する」

玲奈の目が大きく見開かれ、瞳の奥で恐怖と羞恥、そして言葉にできないざわめきが入り混じる。

美咲は優しく微笑み、玲奈の頬を撫でた。
「大丈夫よ玲奈……。すぐに、拒むことさえ出来なくなるから。次はもっと深いところで……ご主人様に、そして私に、感じさせられるの」

玲奈の唇から、再び震える吐息が漏れた。
「……っ……やめ……っ、誰か……」
その声は、助けを呼ぶ叫びではなく、自らの無力さを認めるかのような消え入りそうな呟きに変わっていった。

ご主人様はその様子に満足げに頷き、次の調教に向けて美咲に目配せする。
「――美咲。準備をしろ。まだ、こいつには“教えること”が山ほどある」

美咲は「はい、ご主人様」と恍惚に頷き、玲奈の濡れきった身体を抱き留めながら、新たな責めに移る準備を始めた。

重苦しい沈黙の中、玲奈は肩で荒い息を繰り返していた。
二重責めの余韻に体を震わせ、まだ心は混乱から抜け出せていない。

そんな彼女にご主人様の冷たい声が落ちる。
「まだ自分の立場を理解していない顔だな。……いいだろう。今日はそれを、骨の髄まで叩き込んでやる」

「っ……や、やめて……もう、いや……」
涙を溜め、声を震わせる玲奈。

美咲がその頬を撫で、囁く。
「玲奈。ご主人様が決めたことは、絶対よ。あなたに拒む自由なんて、ないの」

重苦しい空気の中、鉄扉が開く音が鈍く響いた。
ぶわりと押し寄せる悪臭。汗と皮脂、乾いた垢と唾液が混じった、鼻腔を突き刺すような強烈な匂いだった。

「っ……うぅ……くさい……っ、やだっ、やだぁ……!」
玲奈は両肩を震わせ、必死に顔を逸らした。

現れたのは脂ぎった髪を乱雑に束ね、黄ばんだ歯を見せて笑う男。
ひと息ごとに腐ったような臭気を吐き出し、近づくだけで玲奈の胃が裏返りそうになる。

ご主人様の冷たい声が空気を裂いた。
「玲奈。奉仕しろ」

「やめてっ……お願い……こんな人に……触れたくないっ……!」
涙声で懇願する玲奈。だが美咲が冷たく見下ろし、頬を撫でて囁いた。
「玲奈。ご主人様の命令よ。……従うしかないわ」

男が一歩、また一歩と近づく。
靴音に合わせて空気が濁り、玲奈は椅子ごと身をのけ反らすが、逃げ場はなかった。

「へへ……お嬢さまのお口で、俺を楽しませろよ」
男は乱暴に玲奈の髪を掴み、顔を自分の股間へと引き寄せる。

「いやぁっ……やめてぇっ! くさい……っ、汚いの……いやぁぁぁっ!」
玲奈は必死に叫び、唇を閉ざす。

だが顎を力強く掴まれ、唇が無理やりこじ開けられた。
「んぐっ……っ! やだっ、いやぁぁぁぁっ!」

酸味と塩気が混じった皮膚の臭いが口内を満たし、玲奈は涙を溢れさせる。
「……っ、しょっぱい……くさい……こんなの、いやっ……吐きそう……!」

「舌を出せ……舐めろ」
男は下卑た声を吐き、玲奈の頭を押さえ込む。

「いやっ……無理っ……やだぁぁぁ!」
抵抗する玲奈。だが強引に押さえ込まれ、舌を突き出される形になる。

「ぺろっ……ひぅっ……いや……! 汚い……くさい……やめてぇぇぇっ!」
舌の先でざらついた皮膚をなぞるたび、塩気と汗の酸味が口内に広がり、吐き気に喉が震える。

美咲が淡々と呟いた。
「玲奈、顔を背けないで。……ご主人様が望んでいるのは、あなたが堕ちていく姿よ」

玲奈は涙で視界を曇らせながら、喉の奥から声を絞り出す。
「いやぁっ……やめて……お願い……こんなの、いやぁぁぁっ……!」

だが男は笑いながらさらに頭を押し込み、喉奥へと突き入れてきた。
「ほら……もっと奥だ……吐きそうになってる顔、最高だぜ」

「んぐぅっ……っ、ごぼっ……やだっ……くるしいっ……!」
涎と涙で顔を濡らし、玲奈は必死に喉を広げようとするが、えずきが止まらない。

「いいぞ……泣きながら喉で締め付けてる……たまんねぇ……」
男の腰が痙攣し、頭をさらに押さえ込む。

「くっ……出すぞ……全部、喉で受けろ!」

「んむぅぅぅっ!? んぐっ……ごくっ、ごくっ……ひぅっ……!」
熱く濃厚な液体が喉奥に叩き込まれ、玲奈の目が大きく見開かれる。
吐き出したいのに、頭を押さえ込まれ逃げ場がない。

「飲め……残さずだ!」

「んぐぅっ……ごくっ、ごくっ……ひゅぅっ……げほっ……!」
涙と涎で顔を濡らしながら、玲奈は必死に飲み下すしかなかった。

男は満足げに髪を引き上げ、吐息を荒げて笑う。
「へっ……お嬢さまが俺のを全部飲み干した顔……最高だな」

玲奈はぐったりと肩を落とし、嗚咽混じりに声を漏らす。
「……いや……いやぁ……もう……」

しかし男はさらに顔を近づけ、唇を押し付けた。
「飲んだら最後はキスだろ……味わえよ、自分の喉に流し込んだばかりの熱を……」

「っ……いやぁぁぁっ! やめてっ……!」
必死に首を振る玲奈。だが顎を強く掴まれ、唇を奪われる。

「んぐっ……ひぅっ……くさい……しょっぱい……いやぁぁぁっ!」
舌を絡められ、喉奥から逆流する匂いが再び鼻腔を支配する。
吐き気と羞恥と屈辱で、玲奈の心は悲鳴を上げ続けた。

ご主人様が低く告げる。
「これで終わりだと思うな。……お前を待つのは、さらに深い地獄だ」

玲奈の瞳は涙で濡れ、絶望に濁りながら震えていた。
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