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「……ハッ!」
私はガバッと飛び起きた。
天蓋付きのベッド、最高級のシルクのシーツ、そして窓から差し込む爽やかな朝日。
「……夢じゃなかった」
頬をつねってみる。痛い。
昨夜の出来事が走馬灯のように脳裏を駆け巡る。
雪山での捕獲劇、王宮への強制送還、そしてフリード殿下からの『終身刑(プロポーズ)』宣告。
「ど、どうしましょう……。私、本当に捕まってしまったのね」
私は震える手で布団を握りしめた。
ここは『白の離宮』の最上階。
出入り口は屈強な騎士に守られ、窓には魔法結界。
完全なる密室、脱出不可能な監獄だ。
「……でも、不思議ね」
私はキョロキョロと部屋を見渡した。
「牢屋にしては、空調が完璧すぎるわ」
通常、大逆罪人の牢獄といえば、冷たくて湿っていて、ネズミがお友達な場所のはず。
なのにここは、適度な湿度とラベンダーの香りに包まれている。
「はっ! まさか……これは『精神的拷問』の一種!?」
私はハッと気づいた。
「そうよ、快適な環境を与えて油断させ、最後にドーンと絶望の底に叩き落とす……アメとムチの極致だわ! さすが殿下、慈悲がない!」
ガチャッ。
ドアが開き、数名のメイドが入ってきた。
手には洗面器やタオル、そして豪勢な衣装を持っている。
「おはようございます、ラヴィニア様。お目覚めはいかがですか?」
「……来たわね、看守たち」
私はベッドの上で身構えた。
「騙されないわよ。その笑顔の裏に、拷問器具を隠し持っているんでしょう!」
「はい?」
メイド長が首を傾げた。
「あの、お顔を拭かせていただきますね」
「くっ……温かい蒸しタオル攻撃!? 毛穴を開かせてどうするつもり!?」
「その後に、こちらの美容液をたっぷりと……」
「高級化粧品!? 私の肌をツヤツヤにして、処刑台での見栄えを良くする気ね!」
私は抵抗したが、プロのメイドたちの連携プレーには敵わなかった。
あっという間に顔を洗われ、髪をとかされ、薔薇の香りのするローションを塗りたくられた。
「さあ、お着替えを。殿下が『ラヴィニアにはこれが似合うはずだ』と選ばれた新作ドレスです」
差し出されたのは、目の覚めるようなパステルブルーのドレスだった。
レースとリボンがふんだんに使われており、どう見ても『罪人服』ではない。
「こんなひらひらした服で牢屋にいられるもんですか! もっとこう、麻袋みたいなボロ布を持ってきて!」
「そのようなものはございません」
「じゃあ、せめて鎖! 鉄球がついた足枷はないの!?」
「ございません」
「囚人番号は!? 私を『1番』って呼んで!」
「ラヴィニア様はラヴィニア様です」
メイドたちはにこやかに、しかし有無を言わせぬ手際で私をドレスに着替えさせた。
鏡の前に立たされると、そこには『これからお茶会に行く令嬢』そのものの私がいた。
「……屈辱だわ」
私は鏡の中の自分を睨みつけた。
「こんなに可愛く(素材が良いので)着飾らせて……。殿下は私を『愛玩動物』として飼い殺す気なのね!」
コンコン。
ノックの音がして、ドアが開いた。
「――騒がしいな、朝から」
現れたのは、身支度を整えたフリード殿下だった。
王太子の正装である濃紺の軍服に身を包み、その凛々しさは朝から致死量レベルだ。
「ひっ、殿下……!」
私は反射的に直立不動になった。
「おはよう、ラヴィニア。よく眠れたか?」
殿下は私の元へ歩み寄ると、自然な動作で私の腰に手を回し、引き寄せた。
「あ、あの、近いです! ソーシャルディスタンス!」
「ここは牢獄(マイルーム)だ。看守(オレ)が囚人(おまえ)との距離をどうしようと勝手だろう」
殿下はニヤリと笑い、私の額にチュッと音を立てて口付けた。
「おはようのキスだ」
「ぶふぉっ!」
私は変な声を出してのけぞった。
「な、ななな、何をなさるんですか! 神聖な朝に不純異性交遊は禁止です!」
「婚約者への挨拶だ。……ああ、今は『元』だったか」
殿下は楽しそうに目を細めた。
「だが、関係ない。お前がここで俺の妻になる覚悟を決めるまで、俺は毎日こうやって愛を注ぐつもりだからな」
「愛というか、呪いです! 心臓への負担がすごいです!」
「慣れろ。……さて、朝食にするか」
殿下が指を鳴らすと、ワゴンいっぱいの朝食が運ばれてきた。
焼きたてのパンケーキ、ポーチドエッグ、新鮮なサラダ、そしてフルーツの盛り合わせ。
「……殿下、質問があります」
私は震える手でフォークを持ち上げた。
「これは『最後の晩餐』でしょうか?」
「毎朝食べるつもりだが?」
「こんな贅沢な食事を毎日!? 国の予算が破綻します!」
「俺のポケットマネーだ。心配するな」
殿下は優雅にコーヒーを啜った。
「さあ、食べろ。残したら『口移し』の刑に処す」
「た、食べます! 完食します!」
私は必死の形相でパンケーキを口に詰め込んだ。
美味しい。悔しいけれど、涙が出るほど美味しい。
「(くっ……胃袋まで掴みにくるとは……! 殿下の戦略、恐るべし!)」
もぐもぐと頬張る私を見ながら、殿下は満足そうに頷いた。
「いい食べっぷりだ。……そういえば、ラヴィニア」
「ふぁい?」
「今日の予定だが」
「よ、予定?」
囚人の予定なんて『反省』か『労働』しかないはずだ。
私は身構えた。
ついに来るか。
石切り場での強制労働か、それとも地下牢の掃除か。
「俺はこれから執務がある。お前はこの部屋で、俺の帰りを待っていろ」
「……は?」
「読書でも、刺繍でも、好きなことをしていていい。ただし、俺のことを考える時間を一時間に一回は設けること」
「なんというナルシストな刑罰……!」
「それが嫌なら、執務室に連れて行って膝の上に乗せておくが?」
「部屋にいます! 全力で待機します!」
「よろしい」
殿下は立ち上がると、再び私に近づいてきた。
今度は頬に手を添えられ、至近距離で見つめられる。
「夕方には戻る。……いい子にしていろよ、俺のラヴィニア」
甘い、とろけるような低音ボイス。
そして投げかけられる、破壊力抜群のウインク(国宝級)。
「うっ……」
私は胸を押さえてよろめいた。
殿下が出て行った後、私はその場にへたり込んだ。
「……恐ろしい場所だわ」
ここは肉体的な苦痛を与える牢獄ではない。
甘やかされ、愛でられ、ときめきで心臓を酷使させられる『精神破壊施設(メロメロ・プリズン)』なのだ。
「負けない……私は負けないわ!」
私は残ったパンケーキを握りしめ、虚空に向かって誓った。
「この甘い罠に屈してなるものですか! 私は悪役令嬢! いつか必ず殿下に愛想を尽かされ、『やっぱり君は駄目だ』と言わせてみせるわ!」
そのためには、この快適すぎる環境に染まってはいけない。
私は立ち上がり、部屋の中を見回した。
「まずは、この部屋を『牢屋らしく』改造するのよ!」
私は手始めに、窓際のカーテンを閉め切り、部屋を薄暗くした。
そして、ふかふかのクッションを部屋の隅に積み上げ、その陰に体育座りをした。
「ふふふ……これよ。この陰鬱な雰囲気こそ、罪人に相応しいわ」
数時間後。
部屋に入ってきたメイドが、薄暗い部屋の隅でニヤニヤしながら壁のシミを数えている私を見て、「ひぃっ! ラヴィニア様がおかしくなられた!」と悲鳴を上げて逃げ出したのは言うまでもない。
私の孤独な(?)戦いは、まだ始まったばかりだった。
私はガバッと飛び起きた。
天蓋付きのベッド、最高級のシルクのシーツ、そして窓から差し込む爽やかな朝日。
「……夢じゃなかった」
頬をつねってみる。痛い。
昨夜の出来事が走馬灯のように脳裏を駆け巡る。
雪山での捕獲劇、王宮への強制送還、そしてフリード殿下からの『終身刑(プロポーズ)』宣告。
「ど、どうしましょう……。私、本当に捕まってしまったのね」
私は震える手で布団を握りしめた。
ここは『白の離宮』の最上階。
出入り口は屈強な騎士に守られ、窓には魔法結界。
完全なる密室、脱出不可能な監獄だ。
「……でも、不思議ね」
私はキョロキョロと部屋を見渡した。
「牢屋にしては、空調が完璧すぎるわ」
通常、大逆罪人の牢獄といえば、冷たくて湿っていて、ネズミがお友達な場所のはず。
なのにここは、適度な湿度とラベンダーの香りに包まれている。
「はっ! まさか……これは『精神的拷問』の一種!?」
私はハッと気づいた。
「そうよ、快適な環境を与えて油断させ、最後にドーンと絶望の底に叩き落とす……アメとムチの極致だわ! さすが殿下、慈悲がない!」
ガチャッ。
ドアが開き、数名のメイドが入ってきた。
手には洗面器やタオル、そして豪勢な衣装を持っている。
「おはようございます、ラヴィニア様。お目覚めはいかがですか?」
「……来たわね、看守たち」
私はベッドの上で身構えた。
「騙されないわよ。その笑顔の裏に、拷問器具を隠し持っているんでしょう!」
「はい?」
メイド長が首を傾げた。
「あの、お顔を拭かせていただきますね」
「くっ……温かい蒸しタオル攻撃!? 毛穴を開かせてどうするつもり!?」
「その後に、こちらの美容液をたっぷりと……」
「高級化粧品!? 私の肌をツヤツヤにして、処刑台での見栄えを良くする気ね!」
私は抵抗したが、プロのメイドたちの連携プレーには敵わなかった。
あっという間に顔を洗われ、髪をとかされ、薔薇の香りのするローションを塗りたくられた。
「さあ、お着替えを。殿下が『ラヴィニアにはこれが似合うはずだ』と選ばれた新作ドレスです」
差し出されたのは、目の覚めるようなパステルブルーのドレスだった。
レースとリボンがふんだんに使われており、どう見ても『罪人服』ではない。
「こんなひらひらした服で牢屋にいられるもんですか! もっとこう、麻袋みたいなボロ布を持ってきて!」
「そのようなものはございません」
「じゃあ、せめて鎖! 鉄球がついた足枷はないの!?」
「ございません」
「囚人番号は!? 私を『1番』って呼んで!」
「ラヴィニア様はラヴィニア様です」
メイドたちはにこやかに、しかし有無を言わせぬ手際で私をドレスに着替えさせた。
鏡の前に立たされると、そこには『これからお茶会に行く令嬢』そのものの私がいた。
「……屈辱だわ」
私は鏡の中の自分を睨みつけた。
「こんなに可愛く(素材が良いので)着飾らせて……。殿下は私を『愛玩動物』として飼い殺す気なのね!」
コンコン。
ノックの音がして、ドアが開いた。
「――騒がしいな、朝から」
現れたのは、身支度を整えたフリード殿下だった。
王太子の正装である濃紺の軍服に身を包み、その凛々しさは朝から致死量レベルだ。
「ひっ、殿下……!」
私は反射的に直立不動になった。
「おはよう、ラヴィニア。よく眠れたか?」
殿下は私の元へ歩み寄ると、自然な動作で私の腰に手を回し、引き寄せた。
「あ、あの、近いです! ソーシャルディスタンス!」
「ここは牢獄(マイルーム)だ。看守(オレ)が囚人(おまえ)との距離をどうしようと勝手だろう」
殿下はニヤリと笑い、私の額にチュッと音を立てて口付けた。
「おはようのキスだ」
「ぶふぉっ!」
私は変な声を出してのけぞった。
「な、ななな、何をなさるんですか! 神聖な朝に不純異性交遊は禁止です!」
「婚約者への挨拶だ。……ああ、今は『元』だったか」
殿下は楽しそうに目を細めた。
「だが、関係ない。お前がここで俺の妻になる覚悟を決めるまで、俺は毎日こうやって愛を注ぐつもりだからな」
「愛というか、呪いです! 心臓への負担がすごいです!」
「慣れろ。……さて、朝食にするか」
殿下が指を鳴らすと、ワゴンいっぱいの朝食が運ばれてきた。
焼きたてのパンケーキ、ポーチドエッグ、新鮮なサラダ、そしてフルーツの盛り合わせ。
「……殿下、質問があります」
私は震える手でフォークを持ち上げた。
「これは『最後の晩餐』でしょうか?」
「毎朝食べるつもりだが?」
「こんな贅沢な食事を毎日!? 国の予算が破綻します!」
「俺のポケットマネーだ。心配するな」
殿下は優雅にコーヒーを啜った。
「さあ、食べろ。残したら『口移し』の刑に処す」
「た、食べます! 完食します!」
私は必死の形相でパンケーキを口に詰め込んだ。
美味しい。悔しいけれど、涙が出るほど美味しい。
「(くっ……胃袋まで掴みにくるとは……! 殿下の戦略、恐るべし!)」
もぐもぐと頬張る私を見ながら、殿下は満足そうに頷いた。
「いい食べっぷりだ。……そういえば、ラヴィニア」
「ふぁい?」
「今日の予定だが」
「よ、予定?」
囚人の予定なんて『反省』か『労働』しかないはずだ。
私は身構えた。
ついに来るか。
石切り場での強制労働か、それとも地下牢の掃除か。
「俺はこれから執務がある。お前はこの部屋で、俺の帰りを待っていろ」
「……は?」
「読書でも、刺繍でも、好きなことをしていていい。ただし、俺のことを考える時間を一時間に一回は設けること」
「なんというナルシストな刑罰……!」
「それが嫌なら、執務室に連れて行って膝の上に乗せておくが?」
「部屋にいます! 全力で待機します!」
「よろしい」
殿下は立ち上がると、再び私に近づいてきた。
今度は頬に手を添えられ、至近距離で見つめられる。
「夕方には戻る。……いい子にしていろよ、俺のラヴィニア」
甘い、とろけるような低音ボイス。
そして投げかけられる、破壊力抜群のウインク(国宝級)。
「うっ……」
私は胸を押さえてよろめいた。
殿下が出て行った後、私はその場にへたり込んだ。
「……恐ろしい場所だわ」
ここは肉体的な苦痛を与える牢獄ではない。
甘やかされ、愛でられ、ときめきで心臓を酷使させられる『精神破壊施設(メロメロ・プリズン)』なのだ。
「負けない……私は負けないわ!」
私は残ったパンケーキを握りしめ、虚空に向かって誓った。
「この甘い罠に屈してなるものですか! 私は悪役令嬢! いつか必ず殿下に愛想を尽かされ、『やっぱり君は駄目だ』と言わせてみせるわ!」
そのためには、この快適すぎる環境に染まってはいけない。
私は立ち上がり、部屋の中を見回した。
「まずは、この部屋を『牢屋らしく』改造するのよ!」
私は手始めに、窓際のカーテンを閉め切り、部屋を薄暗くした。
そして、ふかふかのクッションを部屋の隅に積み上げ、その陰に体育座りをした。
「ふふふ……これよ。この陰鬱な雰囲気こそ、罪人に相応しいわ」
数時間後。
部屋に入ってきたメイドが、薄暗い部屋の隅でニヤニヤしながら壁のシミを数えている私を見て、「ひぃっ! ラヴィニア様がおかしくなられた!」と悲鳴を上げて逃げ出したのは言うまでもない。
私の孤独な(?)戦いは、まだ始まったばかりだった。
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