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「……皆様、落ち着いてくださいまし。これは単なるパーティーではなく、我が国の食の未来を占う『聖戦』ですわ!」
王宮の一角にあるサンルーム。
私の前には、つやつやと輝く炊きたてのご飯が山盛りにされた大皿が並んでいました。
先日、ゼノス様にいただいたおむすびの感動が忘れられず、私は公爵家の財力とコネをフル活用して、東方から最高級の銘柄米を取り寄せたのです。
「お嬢様……。聖戦だなんて、また物騒なことを。……でも、このお米の香り、確かに抗いがたい魅力がありますわね」
アンナが鼻をひくつかせながら、手際よく海苔を切り分けています。
私は、具材として「脂の乗った焼き鮭」「蜂蜜漬けの梅干し」「おかか醤油」そして「ピリ辛の肉味噌」を用意しました。
ところが、そこに招かれざる客……いえ、パン派の急進派が乱入してきたのです。
「待ちなさい! そんな泥臭い穀物を王宮で広めるなんて、正気ですの!?」
メアリー様が、焼き立てのクロワッサンが山盛りになったバスケットを抱え、ジュリアン殿下を引き連れて現れました。
殿下も、バゲットを杖のように突きながら、不機嫌そうに鼻を鳴らします。
「そうだぞチューナ! 洗練された貴族の食事といえば、バターの香る白いパンと決まっている。……米などという、何杯でも食べられてしまうような野蛮な炭水化物は、我が国の品位を貶めるものだ!」
「……殿下。今、『何杯でも食べられる』とおっしゃいましたわね? それこそが、お米の最大の賛辞ではありませんか!」
私は立ち上がり、しゃもじを剣のように掲げました。
「パンは確かに美味しいですわ。サクサクとした食感、バターの風味……。ですが、お米は『包容力』が違いますの。どんな具材も受け入れ、噛めば噛むほど甘みが溢れ出す。……これこそが、食卓の真の支配者ですわ!」
「笑わせないで! そんな真っ白な塊に、何ができるというのです!?」
メアリー様の挑発に、私は静かに微笑みました。
「よろしいでしょう。では、この『おむすび』を一口食べて、それでもパンが一番だと言い切れるなら、私は潔くしゃもじを置きますわ」
私は、手のひらに少しの塩をつけ、熱々のご飯を優しく、しかし確かな圧で三角形にまとめました。
中には、じっくりと焼き上げた鮭のハラス。
それをパリッとした海苔で包み、メアリー様の前に差し出しました。
「……ふん、食べて差し上げますわ。……はむっ」
メアリー様が、不本意そうに一口。
その瞬間、彼女の瞳が大きく見開かれました。
「…………っ! ……な、何ですの、この多幸感は……!」
「メアリー!? どうした、しっかりしろ!」
「……王子様。……お口の中で、お米の一粒一粒が解けて、中から脂の乗った鮭がこんにちは、していますわ……。……それに、この海苔の磯の香りと塩気が、お米の甘みを暴力的なまでに引き立てて……!」
メアリー様は、二口、三口と、夢中で食べ進めました。
「おい、私にも食わせろ!」
ジュリアン殿下も、我慢できずに手を伸ばしました。
私が差し出した「肉味噌おむすび」を頬張った瞬間、殿下は天を仰ぎました。
「……う、うめぇぇぇ! なんだこれは! 肉の旨味とお米が合わさって、胃袋に直接『幸せ』を叩き込まれているようだ! ……パンでは、この『一体感』は出せん……!」
「でしょう!? さあ皆様、もっと召し上がれ! ここには焼きおにぎりも、出汁茶漬けの用意もございますわよ!」
いつの間にか、サンルームは「米派」に転向した貴族たちで埋め尽くされました。
「パンもいいけど、やっぱり米だわ」「この背徳感のある炭水化物の塊がたまらない」という声が飛び交います。
そんな喧騒の中、ゼノス様がそっと私の隣に立ちました。
「……チューナ様。またしても、食べ物で国を二分する騒動を起こしましたね」
「あら、ゼノス様。二分ではありませんわ。今、この場所は『米』によって一つに結ばれたのです」
私は、ゼノス様のために特別に作った「ツナマヨ(私の名前にちなんで少し豪華にしました)」のおむすびを差し出しました。
「……フフ。……いただきます。……貴女の結ぶおむすびは、どうしてこうも、私の心を、いえ、胃袋を締め付けるのでしょうか」
ゼノス様は、愛おしそうにおむすびを頬張り、満足げに目を細めました。
「……チューナ様。一つ提案があります。……このお米を、我が国の公式な備蓄食糧として採用しましょう。……これがあれば、国民はどんな困難も、満腹の笑顔で乗り越えられるはずだ」
「名案ですわ、ゼノス様! では、そのための『試食会』を、毎日開催しなければなりませんわね!」
「……それは、ただ貴女が食べたいだけでは?」
ゼノス様のツッコミも、もはや心地よいスパイスです。
こうして、王宮を揺るがした炭水化物戦争は、お米の圧倒的な包容力によって幕を閉じました。
パン派の象徴だったジュリアン殿下が、最後には「パンにお米を挟んだら最強ではないか?」という謎の理論を提唱し始めたのは、また別のお話です。
その夜。ゼノスの手帳には、いつにも増して力強い文字が刻まれていました。
『報告:チューナ・フォン・グラッセ。彼女の手によって、我が国の食文化は新たな次元へと到達した。……真っ白なお米のように純粋で、噛めば噛むほど味わい深い彼女を、私は一生かけて味わい尽くしたい(意味深)。……追伸、彼女がおむすびを頬張る際、海苔が前歯についていたが、それすらも愛おしく感じた私は、もう手遅れかもしれない』
王宮の一角にあるサンルーム。
私の前には、つやつやと輝く炊きたてのご飯が山盛りにされた大皿が並んでいました。
先日、ゼノス様にいただいたおむすびの感動が忘れられず、私は公爵家の財力とコネをフル活用して、東方から最高級の銘柄米を取り寄せたのです。
「お嬢様……。聖戦だなんて、また物騒なことを。……でも、このお米の香り、確かに抗いがたい魅力がありますわね」
アンナが鼻をひくつかせながら、手際よく海苔を切り分けています。
私は、具材として「脂の乗った焼き鮭」「蜂蜜漬けの梅干し」「おかか醤油」そして「ピリ辛の肉味噌」を用意しました。
ところが、そこに招かれざる客……いえ、パン派の急進派が乱入してきたのです。
「待ちなさい! そんな泥臭い穀物を王宮で広めるなんて、正気ですの!?」
メアリー様が、焼き立てのクロワッサンが山盛りになったバスケットを抱え、ジュリアン殿下を引き連れて現れました。
殿下も、バゲットを杖のように突きながら、不機嫌そうに鼻を鳴らします。
「そうだぞチューナ! 洗練された貴族の食事といえば、バターの香る白いパンと決まっている。……米などという、何杯でも食べられてしまうような野蛮な炭水化物は、我が国の品位を貶めるものだ!」
「……殿下。今、『何杯でも食べられる』とおっしゃいましたわね? それこそが、お米の最大の賛辞ではありませんか!」
私は立ち上がり、しゃもじを剣のように掲げました。
「パンは確かに美味しいですわ。サクサクとした食感、バターの風味……。ですが、お米は『包容力』が違いますの。どんな具材も受け入れ、噛めば噛むほど甘みが溢れ出す。……これこそが、食卓の真の支配者ですわ!」
「笑わせないで! そんな真っ白な塊に、何ができるというのです!?」
メアリー様の挑発に、私は静かに微笑みました。
「よろしいでしょう。では、この『おむすび』を一口食べて、それでもパンが一番だと言い切れるなら、私は潔くしゃもじを置きますわ」
私は、手のひらに少しの塩をつけ、熱々のご飯を優しく、しかし確かな圧で三角形にまとめました。
中には、じっくりと焼き上げた鮭のハラス。
それをパリッとした海苔で包み、メアリー様の前に差し出しました。
「……ふん、食べて差し上げますわ。……はむっ」
メアリー様が、不本意そうに一口。
その瞬間、彼女の瞳が大きく見開かれました。
「…………っ! ……な、何ですの、この多幸感は……!」
「メアリー!? どうした、しっかりしろ!」
「……王子様。……お口の中で、お米の一粒一粒が解けて、中から脂の乗った鮭がこんにちは、していますわ……。……それに、この海苔の磯の香りと塩気が、お米の甘みを暴力的なまでに引き立てて……!」
メアリー様は、二口、三口と、夢中で食べ進めました。
「おい、私にも食わせろ!」
ジュリアン殿下も、我慢できずに手を伸ばしました。
私が差し出した「肉味噌おむすび」を頬張った瞬間、殿下は天を仰ぎました。
「……う、うめぇぇぇ! なんだこれは! 肉の旨味とお米が合わさって、胃袋に直接『幸せ』を叩き込まれているようだ! ……パンでは、この『一体感』は出せん……!」
「でしょう!? さあ皆様、もっと召し上がれ! ここには焼きおにぎりも、出汁茶漬けの用意もございますわよ!」
いつの間にか、サンルームは「米派」に転向した貴族たちで埋め尽くされました。
「パンもいいけど、やっぱり米だわ」「この背徳感のある炭水化物の塊がたまらない」という声が飛び交います。
そんな喧騒の中、ゼノス様がそっと私の隣に立ちました。
「……チューナ様。またしても、食べ物で国を二分する騒動を起こしましたね」
「あら、ゼノス様。二分ではありませんわ。今、この場所は『米』によって一つに結ばれたのです」
私は、ゼノス様のために特別に作った「ツナマヨ(私の名前にちなんで少し豪華にしました)」のおむすびを差し出しました。
「……フフ。……いただきます。……貴女の結ぶおむすびは、どうしてこうも、私の心を、いえ、胃袋を締め付けるのでしょうか」
ゼノス様は、愛おしそうにおむすびを頬張り、満足げに目を細めました。
「……チューナ様。一つ提案があります。……このお米を、我が国の公式な備蓄食糧として採用しましょう。……これがあれば、国民はどんな困難も、満腹の笑顔で乗り越えられるはずだ」
「名案ですわ、ゼノス様! では、そのための『試食会』を、毎日開催しなければなりませんわね!」
「……それは、ただ貴女が食べたいだけでは?」
ゼノス様のツッコミも、もはや心地よいスパイスです。
こうして、王宮を揺るがした炭水化物戦争は、お米の圧倒的な包容力によって幕を閉じました。
パン派の象徴だったジュリアン殿下が、最後には「パンにお米を挟んだら最強ではないか?」という謎の理論を提唱し始めたのは、また別のお話です。
その夜。ゼノスの手帳には、いつにも増して力強い文字が刻まれていました。
『報告:チューナ・フォン・グラッセ。彼女の手によって、我が国の食文化は新たな次元へと到達した。……真っ白なお米のように純粋で、噛めば噛むほど味わい深い彼女を、私は一生かけて味わい尽くしたい(意味深)。……追伸、彼女がおむすびを頬張る際、海苔が前歯についていたが、それすらも愛おしく感じた私は、もう手遅れかもしれない』
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