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第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます
15:答えのない問題
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「……ディロス様。私は、父上や母上のように……父上とディロス様のようになれるでしょうか?」
僕に抱きしめられたまま、口をつぐんでいたイデアルがぽつりと呟く。
これは、また……難しい問題がきたな……。
正直、僕から返せる答えの中に正解はないと思う。
「それは……僕にはわからないかな。でもね? 伴侶の形って伴侶ごとに違うから、どれが正解って事はないと思うよ」
僕は、イデアルとマリカ嬢が仲のよい夫婦だった事を知っている。
今のイデアルと記憶の中のイデアルでは、違いも出てきてはいるだろうけど……それでも、本質が変わらないのであれば、二人は良き伴侶として国を引き立ててくれるのではないかと思った。
「今は、まだ会った事もないから不安だと思う。でも、あちらも同じように不安だと思っているかもしれないからそれはわかっておいてあげてね」
イデアルは、優しすぎるからこれくらいの言葉でも負担になりそうだけど……どちらも不安だと思っている可能性は伝えておく。
記憶の中のあのマリカ嬢からは想像できないけど……そうした方がイデアルは心構えが出きるかなとも思ったから。
「そうですね……どんな方かは会わねばわかりません。ですが、父上の選んだ方ですから私の正妃……いずれの王妃として相応しい方なのだと思います」
「うん、そうだね」
「夫となる私がこの調子では、マリカ嬢にも不安を与えるかもしれません。もっと精進しないと……」
思った以上に効果があったせいでどことなく思い詰めた言い様になっていることを焦る。
「イデアル、そこまでは思い詰めなくても大丈夫だよ?」
「ですが……」
「イデアルの志は素晴らしいけど、そこまで思い詰めちゃうとどっちも緊張しちゃうからね? いつも通り、いつも通り……ほら、深呼吸」
イデアルを落ち着かせるように、深呼吸させるとちょっとだけイデアルのテンションがクールダウンする。
「申し訳ありませんディロス様……」
「突然の事だから、気を張っちゃうよね。でも、まだ日程は決まってないし、それまでに気持ちを落ち着けよう。イデアルも、僕もね」
「……はい」
ようやく笑みを浮かべたイデアルにホッとして、最後にぎゅっと抱きしめる。
「さ、今日も学友の子達がくるんでしょう? 気を取り直して楽しんでおいで」
今日の授業は、確か剣の鍛練だったはずだ。イデアルは特別運動神経がいいわけではないけど、悪いわけでもない。
学友達と体を動かすのはいい気分転換になるはずだ。
「はい、楽しんできます」
今日の授業を思い出したのかイデアルは、キョトンとしてから照れ臭そうに笑う。
「ディロスただいまー!」
「父様ー!」
イデアルが自分の離宮へと向かうのを見送りに、玄関に足を進めると外からティグレとアグノスが飛んでくる。
外でシュロム過ごして、元気いっぱいだ。
「兄上!今から離宮ですか?」
「兄上、いっちゃうのー?」
二人は、僕の隣にイデアルが居ることに気づいてそちらへと駆けてくる。
「うん、頑張って勉強してくるよ」
「はい!でも、帰ってきたら遊んでくださいね!」
「兄上!アグノスも」
「いいよ。帰ってきたらね」
「やったー!」
「わーい!」
帰ってきたら遊んでもらえると約束した二人が喜ぶ。二人ともイデアルの事も大好きなんだよなぁ……。
微笑ましさに笑っていたら、ティグレ達から遅れて戻ってきたシュロムがイデアルの肩を叩く。
「イデアル、離宮まで送ろう」
「……はい、ありがとうございます父上」
婚約の事があったから、少し緊張しているようだったけど、イデアルの顔に笑みが浮かんだ。
「父上も兄上もいってらっしゃーい!」
「いってらっしゃーい!」
「いってらっしゃい」
王宮へ向かうシュロムと自分の離宮へ向かうイデアルを三人で見送る。
少し寂しい時間かもしれないけど、それでも頑張る二人が誇らしくなる時間でもあった。
僕に抱きしめられたまま、口をつぐんでいたイデアルがぽつりと呟く。
これは、また……難しい問題がきたな……。
正直、僕から返せる答えの中に正解はないと思う。
「それは……僕にはわからないかな。でもね? 伴侶の形って伴侶ごとに違うから、どれが正解って事はないと思うよ」
僕は、イデアルとマリカ嬢が仲のよい夫婦だった事を知っている。
今のイデアルと記憶の中のイデアルでは、違いも出てきてはいるだろうけど……それでも、本質が変わらないのであれば、二人は良き伴侶として国を引き立ててくれるのではないかと思った。
「今は、まだ会った事もないから不安だと思う。でも、あちらも同じように不安だと思っているかもしれないからそれはわかっておいてあげてね」
イデアルは、優しすぎるからこれくらいの言葉でも負担になりそうだけど……どちらも不安だと思っている可能性は伝えておく。
記憶の中のあのマリカ嬢からは想像できないけど……そうした方がイデアルは心構えが出きるかなとも思ったから。
「そうですね……どんな方かは会わねばわかりません。ですが、父上の選んだ方ですから私の正妃……いずれの王妃として相応しい方なのだと思います」
「うん、そうだね」
「夫となる私がこの調子では、マリカ嬢にも不安を与えるかもしれません。もっと精進しないと……」
思った以上に効果があったせいでどことなく思い詰めた言い様になっていることを焦る。
「イデアル、そこまでは思い詰めなくても大丈夫だよ?」
「ですが……」
「イデアルの志は素晴らしいけど、そこまで思い詰めちゃうとどっちも緊張しちゃうからね? いつも通り、いつも通り……ほら、深呼吸」
イデアルを落ち着かせるように、深呼吸させるとちょっとだけイデアルのテンションがクールダウンする。
「申し訳ありませんディロス様……」
「突然の事だから、気を張っちゃうよね。でも、まだ日程は決まってないし、それまでに気持ちを落ち着けよう。イデアルも、僕もね」
「……はい」
ようやく笑みを浮かべたイデアルにホッとして、最後にぎゅっと抱きしめる。
「さ、今日も学友の子達がくるんでしょう? 気を取り直して楽しんでおいで」
今日の授業は、確か剣の鍛練だったはずだ。イデアルは特別運動神経がいいわけではないけど、悪いわけでもない。
学友達と体を動かすのはいい気分転換になるはずだ。
「はい、楽しんできます」
今日の授業を思い出したのかイデアルは、キョトンとしてから照れ臭そうに笑う。
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「父様ー!」
イデアルが自分の離宮へと向かうのを見送りに、玄関に足を進めると外からティグレとアグノスが飛んでくる。
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