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第一部:本編
6:商談
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「別に奴隷が欲しかった訳じゃない。そいつが欲しかったんだ」
聞こえてきたヘルトさんの言葉に耳を疑う。
「ふむ……護衛から聞いた話だと、顔見知りとの事ですが……同情から奴隷を購入するのはおすすめいたしませんよ?」
「こちらの勝手だろう。金は出す」
店主の言葉にヘルトさんが店主を睨み付ければ、後ろ姿の店主は肩を竦めた。
「……こちらとしては、もっと質の良い奴隷をおすすめしたかったところですが」
「くどい」
なおも、言いすがる店主の言葉を両断したヘルトさんは、腰につけたポーチから革袋を取り出すと店主との間にあるテーブルへと投げる。
大きさは、僕の手のひらに収まりそうな大きさなのに、ドッ……と、重い音をたてた革袋を店主が手に取り、革袋の口を開いた。
「……お望みのままに。これだけ頂いてお売りしないわけにもいきませんから」
珍しく弾んだ声の店主にあの革袋の中にいくら入っていたのだろうかと、血の気が引く。
あの店主が喜ぶほどなのだ。あの重い音といい……ヘルトさんに大金を払わせてしまったのだろうという事実が僕へとのしかかった。
「エルツ。来なさい」
「……っ! は、い……」
後ろに控えていた僕を店主が呼ぶ。ヘルトさんに買われた事とその事への申し訳なさにぎこちない歩みで僕は店主の横へと立った。
「代金はいただきましたが、商品の説明がまだでしたので説明させていただきますね」
僕の隣で店主がにこやかに笑いながら言葉を続ける。
「まず、この体格ですから戦闘奴隷としての適正はないと判断し、雑用奴隷として教育を施しています」
淡々と告げる店主。だけど、僕が施された教育はそれだけではない。
「また……エルツ顔をあげなさい」
俯く僕に気づいた店主に命令され、僕は顔をあげる。
「頬に刻まれた刻印のとおり、性奴隷としての教育も済んでおります」
ヘルトさんの視線が僕の頬に刺さった。
その事に俯いて刻印を隠したい気持ちで頭がいっぱいになる。
確実にヘルトさんに認識された。僕がどんな事を教育されたのか、どう躾られたのか。
ヘルトさんに買われたのだからすぐに知られる事ではあった。だけど、憧れた人に……僕が性奴隷として学んだ事を知られた事実が僕の胸を締め付けた。
「とは言っても、男も女も知りませんのでご安心ください」
説明を続けていた店主が最後にそう付け加える。
そこまで説明しなくてもいいのに……。
事実ではあるが、それすら僕を辱しめるには十分で……羞恥心からか顔が熱くなり、手をぎゅっと握った。
聞こえてきたヘルトさんの言葉に耳を疑う。
「ふむ……護衛から聞いた話だと、顔見知りとの事ですが……同情から奴隷を購入するのはおすすめいたしませんよ?」
「こちらの勝手だろう。金は出す」
店主の言葉にヘルトさんが店主を睨み付ければ、後ろ姿の店主は肩を竦めた。
「……こちらとしては、もっと質の良い奴隷をおすすめしたかったところですが」
「くどい」
なおも、言いすがる店主の言葉を両断したヘルトさんは、腰につけたポーチから革袋を取り出すと店主との間にあるテーブルへと投げる。
大きさは、僕の手のひらに収まりそうな大きさなのに、ドッ……と、重い音をたてた革袋を店主が手に取り、革袋の口を開いた。
「……お望みのままに。これだけ頂いてお売りしないわけにもいきませんから」
珍しく弾んだ声の店主にあの革袋の中にいくら入っていたのだろうかと、血の気が引く。
あの店主が喜ぶほどなのだ。あの重い音といい……ヘルトさんに大金を払わせてしまったのだろうという事実が僕へとのしかかった。
「エルツ。来なさい」
「……っ! は、い……」
後ろに控えていた僕を店主が呼ぶ。ヘルトさんに買われた事とその事への申し訳なさにぎこちない歩みで僕は店主の横へと立った。
「代金はいただきましたが、商品の説明がまだでしたので説明させていただきますね」
僕の隣で店主がにこやかに笑いながら言葉を続ける。
「まず、この体格ですから戦闘奴隷としての適正はないと判断し、雑用奴隷として教育を施しています」
淡々と告げる店主。だけど、僕が施された教育はそれだけではない。
「また……エルツ顔をあげなさい」
俯く僕に気づいた店主に命令され、僕は顔をあげる。
「頬に刻まれた刻印のとおり、性奴隷としての教育も済んでおります」
ヘルトさんの視線が僕の頬に刺さった。
その事に俯いて刻印を隠したい気持ちで頭がいっぱいになる。
確実にヘルトさんに認識された。僕がどんな事を教育されたのか、どう躾られたのか。
ヘルトさんに買われたのだからすぐに知られる事ではあった。だけど、憧れた人に……僕が性奴隷として学んだ事を知られた事実が僕の胸を締め付けた。
「とは言っても、男も女も知りませんのでご安心ください」
説明を続けていた店主が最後にそう付け加える。
そこまで説明しなくてもいいのに……。
事実ではあるが、それすら僕を辱しめるには十分で……羞恥心からか顔が熱くなり、手をぎゅっと握った。
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