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第一部:本編

89:二体のギルド登録

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「それで……魔導人形の二体は、ダンジョンに連れていくつもりかい?」
「そうだな。深層でもやっていけそうだから最深層を目指すつもりだ」

 僕とヘルトさんから後ろの二人に視線を向けたギルドマスターの言葉にヘルトさんが頷く。

「へー、今まで魔導義手を探すために安全を優先していた君がね……そうしてくれると私の無念も晴れそうだよ」

 その言葉に僕が首を傾げれば、ギルドマスターが僕の様子に気づいたのか言葉を続ける。

「私が居たパーティーは、ここのダンジョンで壊滅的な被害を受けてね。二十階層での転移事故……特級に上がって気が大きくなっていたんだろうね。私以外は戻ってこなかった。私も地上に戻るまでに足を痛めて引退したけどね。それでも、未練がましくこの町から離れられずにいるのさ」

 肩を竦めて自嘲的な笑みを浮かべるギルドマスター。

 特級冒険者になってもダンジョンから無事に戻れるわけではない。

 彼の言葉に、それを改めて実感した。

「ま、私の事はいいよ。年配者の戯れ言だ」
「爺くせぇ事言うな。俺まで歳くってるように思われるだろう」
「冒険者としてはオールドだろう君」
「まだまだ現役で若いつもりだが?」

 ギルドマスターの言葉を嫌そうにするからヘルトさんにギルドマスターが笑う。

「はははははっ。まあ、気持ちは若いだろうねぇ」
「笑ってねぇで、こいつらどうしたらいい? ダンジョンに入れるにはギルド証とか認識票がいるだろう」

 ヘルトさんが渋い顔をしたままにぼやく。

 二人をダンジョンに連れていきたいが、問題がそこなのだ。

 入場する為には、ギルドへの登録が必要となる。

 魔導人形を帯同させた記述は、ヘルトさんでも見た事はないらしく、この場合どうするかも兼ねての報告だったのだ。

「そうだねぇ……認識票は、奴隷用のものだし……ギルド証かな。隷属魔法が彼らにも効くなら別だけど」
「そこんとこどうなんだ?」
「ぼく達は、すでにマスターとの契約を果たしております」
「その為、わたし達への隷属魔法を含めた契約魔法への実行は無効となります」
「じゃあ、ギルド証だね」

 ギルドマスターとヘルトさんの視線を受けた二人が質問に答えれば、ギルドマスターは二人へとギルド証の発行を認めた。

 なんということだろう。二人の主人の僕より二人が先に冒険者になってしまうらしい。

「魔力の登録ができたらいいけど……できないなら形だけでも似せたものでいいかな」
「ギルマスが不正を口にするんじゃねぇよ」

 ……大丈夫なのかな。
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