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7 ライナーの過去
しおりを挟む4人はテーブルを囲み注文をしても暫く無言だった。
……やがて「済まなかった……」とそれだけをライナーは呟いた。
誰にでも、人に言えない秘密がある。
セリもまだ3人に言えない話はあるし、この3人もそれぞれ何かを抱えていそうだった。隠し事ばかりでは良くないかもしれないけれど、どうしても言えない……言いたくない事は誰にでもあるものだ。
それが分かっているから、3人は何も聞かなかった。そしてだんだん4人はポツリポツリとどうでも良いような話をしていった。
……しかしその日はいつものように盛り上がる事はなかった。
そしてその夜。
いつもより少し早く家に帰り、それぞれ風呂に入ったり寝支度をしているとライナーが皆に声をかけた。
「みんな……。悪りぃ、ちょっといいか?」
その真剣で少し緊張した様子に、3人は彼が何事かを告白するつもりだと察した。彼らはそれぞれ秘密を抱えているが、話す気になった仲間の秘密は真剣に聞き尚且つ意見を求められれば述べ、そしてその後は自分達の秘密にする覚悟がある。
皆が居間に集まると、ライナーは緊張した様子でポツリポツリと話をし出した。
「今日は……すまん。なんかおかしな雰囲気にさせちまったよな。今日のアレは……。昔の、おれの仲間なんだ。パーティーを組んでてアイツは……『聖女』だった」
……仲間。……恋人じゃ、なかったのかな?
おそらく3人共そう考えた。しかし本人が言わない事を敢えて聞き出す事はしない。
……と、思っていたのだが。
「そうなのね。凄い美人さんだったしライナーを熱い視線で見てたから、恋人だったのかと思っちゃったわ」
ダリルは意外にあっさりと聞いた。
「……違う。アイツは、俺の仲間の恋人だったんだ。俺の……とても大切な、ちっちゃな頃からの仲間だったヤツだ」
ドクリ……。
ライナーの言葉を聞いてセリは胸が騒めく。
『ちっちゃな頃からの』……レオンのこと?
『仲間だった』……過去形? ……どうして?
「大切な仲間……。勇者レオンの恋人だったってことか」
アレンがズバリと言い、ライナーは明らかに動揺した。その横ではセリも驚いていた。
「んなっ……! お前達知って……!」
「……ったり前でしょう? アンタ元から有名人だったからね? いくら遠い国の端の地に来たって、世界的に有名な勇者とその仲間なんか冒険者ならまず知ってるわよ。半信半疑だったりただ同じ名前だと思ってる奴らもいるでしょうけどね。ああ、私たちはライナーが勇者の仲間だからパーティーを組んだ訳じゃないわよ? ただ気が合っただけ。
ずっと黙ってるつもりだったけど、セリも一緒になった事だし良い機会だからちゃんと分かってるって伝えておきたかっただけよ」
ダリルがツラツラと言った言葉に、ライナーは俯き「そうか……、知ってたのか……」と呟いた。
レオンが『勇者』……!
セリは驚きつつ皆がサクサク話を進める今ならと、この3ヶ月ずっと聞きたくて聞けなかった質問をセリも聞いてみる。
「あの……! その、レオンは……、あの女性と付き合ってたの? それに、今勇者レオンはどうしてるの……?」
『勇者レオン』。……前世での、セリの弟。
セリが姉として生きていた時はただのレオンだったけれど。あの頃から剣も魔法もピカイチの才能を持っていた。
そして、そのレオンの幼馴染で親友だったのがライナー。……前世でのセリの、初恋の人だった。
今までずっと聞きたかったけれど聞けなかった。あれ程仲の良かったライナーとレオン。それがどうして今は一緒ではなくてこんな故郷から遠く離れた街にライナー1人でいるのか。
「セリ。……知らないの? 勇者レオンは……」
言いにくそうに言ったアレンのその言葉を聞いた瞬間、セリの意識は暗転した。
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