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10 勇者レオンの死
しおりを挟むライナーの話をまとめるとこうだ。
7年前レオンが勇者に選ばれ、ライナーともう1人の剣士と聖女マリアの4人で魔王を倒す旅に出た。
まだ10代の若者達に過酷な旅だった。そしてそんな中、まるで当然かのように勇者レオンと聖女マリアが付き合うようになる。
ライナーはまだ旅の途中であるし、魔王を倒す偉業を果たすまでは付き合うのは待った方がいいのではないかとレオンに言ったのだが……。どうやら年頃の女の子であるマリアの方が恋に夢中で、レオンも困りつつも諌めきれず、仲間内の雰囲気も妙にギスギスしてくるようになる。
そして今度はそんな煮え切らないレオンに愛想を尽かしたのか、マリアはライナーにやたらと付いてくるようになった。ライナーはそんな気はないと突き放したが、今度はレオンとライナーの仲までもがおかしくなり始める。
「ライナー。俺にマリアと付き合うなと言ったのはお前が彼女と付き合いたいからだったのか!」
レオンがライナーを詰(なじ)り喧嘩になったところに、凶悪な魔物ヒュドラが現れ……。
「……まあ、俺側から言えばこういう話だ。せっかくレオンは勇者に選ばれたのに、凄く馬鹿馬鹿しい事でレオンは死に何もかもが無くなった。
……エレナ、ごめんな。アイツが死んだのは俺のせいでもある。だけど俺はアイツの恋人に手を出したりなんかしていない! 俺は……ずっとエレナが好きだったんだから!」
そう言ってライナーは少し顔を赤くしながらセリをじっと見つめた。セリは驚きで目を見開く。
「……俺は、小さな頃からずっとエレナが好きで……。レオンの所へ行くとエレナがいて、いつも無茶ばかりする俺たちにエレナが怒って……。あの宝物みたいな時間が大好きだったんだ。ずっと、あんな時間が過ごせると思ってた。いつかもっと強くなってエレナに告白して、ずっと守って生きていくのが夢だった……」
ライナーの真剣な告白に、セリは驚きつつもエレナだった時を思い出しつつ言った。
「……私は生まれつき身体が弱くて、少し動いたらすぐ熱を出してよく寝込んでたものね……。あの冬も、ちょっと頑張って編み物をしてたら風邪をこじらせてそのまま……。……ライナー、ありがとう。そんな風に思ってくれてたなんて、エレナは幸せな人生だったよ」
エレナの最期の時。身体が弱く何も出来ず周りの大切な皆に負担をかけてばかりな自分。なんて不幸なんだろうと思いながら逝ったけれど……。
こんなにも、想ってくれる人がいた。そして両親も弟も、エレナを愛してくれた。短かったけれど、幸せな人生だったのだ。
「エレナ。……セリ。一から始めさせてほしい。俺という人間をもう一度見て欲しい。俺、セリと会ってからまるでエレナの時みたいに、こう……胸の辺りがほんわか、あったかくなるんだ。……だから生まれ変わりって聞いて凄く納得した」
ライナーは真っ直ぐにセリを見つめながら言った。その瞳は、子供だったあの頃と変わらない。
「……ライナー……。こんな嘘みたいな話を、ライナーは信じてくれるんだね」
セリは嬉しくて涙が出そうだった。生まれ変わりだなんてこんな話、誰も信じてくれないと思っていたのに。
本当は誰よりも信じて欲しかった、ライナーが信じてくれた。
「ッたり前だろう!? セリが嘘なんてつくはずがない! それにセリの中に確かにエレナを感じるんだ。
レオンの事は本当にごめん。……でも俺は今同じ状況になってもどうしたらレオンが死なずに済んだのかが分からない。
あの安全とは言えない場所で俺に喧嘩をして来たのはレオンだし、あの凶悪なヒュドラ相手にどうして自分だけが助かったのかも分からない。もしかして、最後はレオンが庇ってくれたのかもしれない」
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