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麗しの生徒会長

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 やがて、定刻になり、入学式が始まった。

 流石、天下の五月雨学園。
 美月はまたしても圧倒され、この学園に入れた喜びを噛みしめた。
 式など堅苦しくつまらないもの、という今までの美月の常識を覆すほど、壇上に立つ方々のお話は面白い。
 そして、メリハリが聞いていて、無駄のない式運びだ。

 自主性を重んじ、かつ自己責任のとれる人材を、という学園の根底に流れる理念は、美月のとって非常に共感出来るものだった。

 そして、学園の果たすべき役割として、生徒達には思う存分学べる環境を与え、かつ生徒自身の可能性を広げるための選択肢を増やすべき、といったところで、明日から実施される実力テストの説明に入る。

 流石は五月雨学園……。
 明日行われるテストは、どうやらいわゆる進学校の実力テストとは、完全に別物らしい。
 強いて言うならば、知能テストに近いもの、なのか……?
 しかし、何やら専門用語が続出し、美月は理解不能になった。

 何これ?これって、高校新一年生にも分かるものなの?
 
 美月は自分の理解力が不安になり、そっと周りを窺うも、皆賢そうな顔つきで真剣に話を聞いているようだ。

 やばっ……わたし、しっかりしないと、落ちこぼれちゃうかも。

 折角、憧れの学園に入学出来たのだ。
 トップは無理でも、少しでも上位に食い込めるよう、美月は頑張っていきたかった。
 少なくとも、努力は惜しまないつもりだ。

 不安を振り払い、美月はさらに気合を込め、集中して懸命に話の筋を追う。

 ふむふむ、成程。
 どうやら明日のテストは、生徒自身の可能性を探るもので、今更ジタバタしても仕方のない部類みたいだ……。
 しかも、成績には入らない。けれども、欠席不可で新入生は全員参加の上、全力で事に当たるよう、呼びかけられている。
 なお、極々稀にテストの長引く者もいるが、その場合も全力を尽くすように、とのことだ。
 翠ちゃんが言っていたのは、これだね。……まあ、やっぱり滅多にないことで、先生も一応、といった感じが垣間見えるから、これは気にしないで大丈夫かな。
 後程、テスト参加の意思確認(不参加の場合は入学取り消しもあり得る、だとー?!)の署名の上、明日の試験会場その他のプリントを渡します、というところで、話は終わった。

 今までの学力重視の受験勉強からかけ離れたテスト内容の説明に美月は大いに戸惑ったが、入学取り消しの危険性があるならば、テストを受けないという選択肢は端からない。

 けれども、それは一体どんなテストなの?と心の中で密かに明日について思いを馳せていると、周囲のどよめきではっと美月は我に返った。

 見れば壇上に新たな人物が……認識した途端、美月はそこから意識を逸らせなくなる――

 柔らかな空気を纏い、まるで春の日差しのような温かな眼差しを持って会場内を見渡す、大輪の如く華やかで美しい女生徒は、鈴を鳴らすような心惹かれる声で入学のお祝いの言葉を述べ、自らを2-1Aに属する今年度の生徒会長だと名乗った。

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