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落ちちゃう、一族 4
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山姫のあまりの勢いに驚き、美月は目をパチパチと瞬かせた。
「あ、……はい。やはり、祖父が祖母のために、長い時間をかけて掘り当てたみたいです。――さっき言っていた湯場も温泉を使っていて、露天風呂もあるんですよ?」
「ぐぬぬぬ……!な、なんと羨ましい――!妾も、妾も此処に住みたいくらいじゃ……!」
そう言いつつも山姫は、玄関脇にどっかと座り込んだ三つ目に話しかける。
「お家殿とは一応、話が着いた。其方はしばらく、その湯場脇にある小部屋にて過ごすが良い。…………しかも、温泉には入り放題らしい。其処でしっかり養生せよ、とのありがた~い申し出じゃ」
(おお~~!それは、かたじけない。其方にも手をかけさせたな)
「ただし!美月殿とご祖母殿の入浴中は、其方が責任を持って不審者、動物、モノ等々何人たりとも近づけぬよう外の見回りを徹底せよ、とのお達しじゃ」
(そのようなこと!当り前じゃ!)
「…………まさかこの様な事態になるとは思わなんだ故、今日はこのままで一度妾は帰るが、しかし!必ず!近いうちにまたこちらへ伺う故、それまではしばし我慢せよ」
(なんの、なんの~~我の誠をお家殿に受け取ってもらえるまで、我はこのまま此処に座り込んでも良いと思っていた。もう十分じゃよ?)
ガハハハッと笑う三つ目に、山姫はむきになって再来訪を約束する。
「ななっ――――それは、いかん!妾も温泉に入りた――ん、んんゴホンッ……いや、それでは余りにも其方が不憫故、時間があるときに何度でも妾もまた説得に参ろうぞ!それで良いかな?美月殿」
「え……?ええ、山姫さんがそうしてくれるのなら、よろしくお願いします?」
山姫に押し切られる風に、頭を下げる美月。
「よかろう、よかろう。こちらも、確かに承った!…………では、帰りにあのばす停とやらの近くに道を創って、今日はお暇するとしようか。明日の朝には、其処に深山のあやかし達がお迎えに来るだろう」
「あの……そこには何時ごろ行けば?」
「いつも通りの時間で構わぬよ?」
ええ?間に合います?と驚く美月に、山姫は得意げに余裕じゃ、妾の創る道の素晴らしさに驚くが良い!と上機嫌で歩き出した。
美月はダミーで用意しておいた茶封筒を右手に持って、左手にツキ、足元にクロを従え、走って車の所に戻る。
「――――お待たせしました!あの、理事長さん、これ…………どうぞ」
「ああ……美月さん。はい、確かに受け取りました。……もっと、ゆっくりしていても、良かったのに――――」
少々残念そうな緑雨理事長の呟きは、美月には聞こえず、大森チーフには聞こえた……。
大森チーフは思わず天を仰ぎながら、緑雨理事長に切り出す。
「……それでは、理事長。我々もそろそろ――――」
「ああ、そうだね。名残惜しいですが……今日は美月さんもお疲れでしょうから、これからゆっくり休んでください。先程、申し上げましたように思わぬトラブルで、美月さんの荷物を紛失してしまい、本当に申し訳ありませんでした。御気に召すかどうかは分かりませんが、明日また私が代替え品をお持ちいたしますので…………!」
「まあ、そんな――――よろしいのでしょうか?……お忙しいところを申し訳ないので、それは明日美月か私が取りに伺っても」
「いえいえ!明日はどうせこの辺りに出かける用もありますので……ついでで申し訳ないのですが、またこちらへ伺っても?」
グイグイと押す緑雨理事長……。
程なく明日の約束を見事取り付けた緑雨理事長は晴れやかに笑い、颯爽と車に乗り込んだ。
その後をトボトボとついていく、旧友のあやかし達。
(ああこの押しの強さ…………わし、ちょっと恥ずかしい)
(……仕方あるまい。何たって、緑雨家は恋に落ちる一族、として有名じゃからな~~ああなっては、最早誰にも止められんわい)
(まあ、……跡継ぎの問題は、兄君の一家の誰かが継ぐじゃろうから、特に問題はないか)
(跡継ぎ――?ああ、あのご婦人ではな、今からではちと――――ん?跡継ぎ?)
(……あのご婦人は、美月殿のご祖母。と、いうことは――――?)
(もしも、見事、春の坊、いや浩がかの女性の心を射止めれば――――?!)
(そうじゃ、そうじゃーー!然れば、必然的に未成年者である美月殿は――――!)
(我ら擁する、緑雨の保護下に――――!!)
急きょ盛り上がりを見せる、旧友のあやかし達。
(あの美月殿が緑雨家の身内に~~)
(浩の孫に~~!然れば、我は協力を惜しまぬぞ――!!)
(わしもじゃーー!)(我だって!)
先程とは打って変わって生き生きとやる気を見せるあやかし達を、胡乱気に見つめる山姫。
そして、肝心の美月とその祖母は、車の反対側で大森チーフに手渡された包みに感動していた。
「ええ?!わざわざ包んで来て下さったんですか?!」
「ハッハッハッ!折角作った小菓子だったのでね?もし良かったら、これでお茶してくれ給え」
「おばあちゃんーー!大森さんの作ったお料理も、お菓子も絶品なんだよ?!……どうしよう、すっごく嬉しい!」
飛び上がって喜ぶ美月を見て、にこにことお礼を述べる珠子に、さり気なく自分を更にアピールする大森チーフ。
大森チーフは、着実に美月を餌付けしにかかっている――!
そして、最終的に車を見送り、その後絶品小菓子でティータイムに突入した星野家では、当然、大森チーフの話題の方が尽きることはなく、よって好感度も高くなるという結果に相成った……。
「あ、……はい。やはり、祖父が祖母のために、長い時間をかけて掘り当てたみたいです。――さっき言っていた湯場も温泉を使っていて、露天風呂もあるんですよ?」
「ぐぬぬぬ……!な、なんと羨ましい――!妾も、妾も此処に住みたいくらいじゃ……!」
そう言いつつも山姫は、玄関脇にどっかと座り込んだ三つ目に話しかける。
「お家殿とは一応、話が着いた。其方はしばらく、その湯場脇にある小部屋にて過ごすが良い。…………しかも、温泉には入り放題らしい。其処でしっかり養生せよ、とのありがた~い申し出じゃ」
(おお~~!それは、かたじけない。其方にも手をかけさせたな)
「ただし!美月殿とご祖母殿の入浴中は、其方が責任を持って不審者、動物、モノ等々何人たりとも近づけぬよう外の見回りを徹底せよ、とのお達しじゃ」
(そのようなこと!当り前じゃ!)
「…………まさかこの様な事態になるとは思わなんだ故、今日はこのままで一度妾は帰るが、しかし!必ず!近いうちにまたこちらへ伺う故、それまではしばし我慢せよ」
(なんの、なんの~~我の誠をお家殿に受け取ってもらえるまで、我はこのまま此処に座り込んでも良いと思っていた。もう十分じゃよ?)
ガハハハッと笑う三つ目に、山姫はむきになって再来訪を約束する。
「ななっ――――それは、いかん!妾も温泉に入りた――ん、んんゴホンッ……いや、それでは余りにも其方が不憫故、時間があるときに何度でも妾もまた説得に参ろうぞ!それで良いかな?美月殿」
「え……?ええ、山姫さんがそうしてくれるのなら、よろしくお願いします?」
山姫に押し切られる風に、頭を下げる美月。
「よかろう、よかろう。こちらも、確かに承った!…………では、帰りにあのばす停とやらの近くに道を創って、今日はお暇するとしようか。明日の朝には、其処に深山のあやかし達がお迎えに来るだろう」
「あの……そこには何時ごろ行けば?」
「いつも通りの時間で構わぬよ?」
ええ?間に合います?と驚く美月に、山姫は得意げに余裕じゃ、妾の創る道の素晴らしさに驚くが良い!と上機嫌で歩き出した。
美月はダミーで用意しておいた茶封筒を右手に持って、左手にツキ、足元にクロを従え、走って車の所に戻る。
「――――お待たせしました!あの、理事長さん、これ…………どうぞ」
「ああ……美月さん。はい、確かに受け取りました。……もっと、ゆっくりしていても、良かったのに――――」
少々残念そうな緑雨理事長の呟きは、美月には聞こえず、大森チーフには聞こえた……。
大森チーフは思わず天を仰ぎながら、緑雨理事長に切り出す。
「……それでは、理事長。我々もそろそろ――――」
「ああ、そうだね。名残惜しいですが……今日は美月さんもお疲れでしょうから、これからゆっくり休んでください。先程、申し上げましたように思わぬトラブルで、美月さんの荷物を紛失してしまい、本当に申し訳ありませんでした。御気に召すかどうかは分かりませんが、明日また私が代替え品をお持ちいたしますので…………!」
「まあ、そんな――――よろしいのでしょうか?……お忙しいところを申し訳ないので、それは明日美月か私が取りに伺っても」
「いえいえ!明日はどうせこの辺りに出かける用もありますので……ついでで申し訳ないのですが、またこちらへ伺っても?」
グイグイと押す緑雨理事長……。
程なく明日の約束を見事取り付けた緑雨理事長は晴れやかに笑い、颯爽と車に乗り込んだ。
その後をトボトボとついていく、旧友のあやかし達。
(ああこの押しの強さ…………わし、ちょっと恥ずかしい)
(……仕方あるまい。何たって、緑雨家は恋に落ちる一族、として有名じゃからな~~ああなっては、最早誰にも止められんわい)
(まあ、……跡継ぎの問題は、兄君の一家の誰かが継ぐじゃろうから、特に問題はないか)
(跡継ぎ――?ああ、あのご婦人ではな、今からではちと――――ん?跡継ぎ?)
(……あのご婦人は、美月殿のご祖母。と、いうことは――――?)
(もしも、見事、春の坊、いや浩がかの女性の心を射止めれば――――?!)
(そうじゃ、そうじゃーー!然れば、必然的に未成年者である美月殿は――――!)
(我ら擁する、緑雨の保護下に――――!!)
急きょ盛り上がりを見せる、旧友のあやかし達。
(あの美月殿が緑雨家の身内に~~)
(浩の孫に~~!然れば、我は協力を惜しまぬぞ――!!)
(わしもじゃーー!)(我だって!)
先程とは打って変わって生き生きとやる気を見せるあやかし達を、胡乱気に見つめる山姫。
そして、肝心の美月とその祖母は、車の反対側で大森チーフに手渡された包みに感動していた。
「ええ?!わざわざ包んで来て下さったんですか?!」
「ハッハッハッ!折角作った小菓子だったのでね?もし良かったら、これでお茶してくれ給え」
「おばあちゃんーー!大森さんの作ったお料理も、お菓子も絶品なんだよ?!……どうしよう、すっごく嬉しい!」
飛び上がって喜ぶ美月を見て、にこにことお礼を述べる珠子に、さり気なく自分を更にアピールする大森チーフ。
大森チーフは、着実に美月を餌付けしにかかっている――!
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