13 / 33
その後の小犬
2
しおりを挟むそんな時、ますます那月をツンツンと突く、斉木の肩を、誰かの両手が後ろから力強く、ガシッと掴む。
「……………………斉木」
外の様子に気が付き、いつの間にか、家から出て来ていた九条だ。
那月は九条に気が付いていたけど、斉木は全然気が付いていなかった。
その九条は、いつもの微笑みが消え、冷たい無表情で斉木を見ている。
怒った顔も怖かったけど、
美形の無表情は、もっと怖い……。
その顔を、真正面から見てしまった那月は、ちょっと震えた。
「斉木……、那月をからかうなと言ったよね俺……。那月が、恥ずかしがり屋な事、斉木だって、知ってるだろ……」
うん、それは、ちょっと違うけど……。
那月は、決して恥ずかしがり屋ではない、ただ色々と躊躇う理由もあるし、緊張もしたりで戸惑っているだけなのだ。
そして、そうこうしているうちに、斉木の肩を掴む九条の両手には、見ているだけでも、どんどんと力が入っていくのが分かる。
「なのに、斉木は、俺のお願い、忘れたのかな?」
「ちょっ、いたっ、いたい、痛いって~! ご、ごめん! ごめん!」
「それに、なんで斉木が、俺より先に、那月と会ってるの? 那月の私服まで先に見て! 絶対! 許さない!」
「う、うわ~!! 痛い!! 痛い!! 痛~~い!! ごめんなさい!! ごめんなさ~い!!」
九条君……。
一言一言が、めっちゃ力強い……。
那月の私服は普通だ、そんな大したものでは無い。
平凡な那月に相応しい、よくある安い服で、服装だって普通だ。
九条君は、何だか部屋着でもかっこいいけど……。
「九条! ごめんなさい! 小……白井君も! からかって、ごめんなさい!」
かなり痛いのか、斉木はもう涙目だった。
見ていて那月は、ほんのちょっとだけ可哀想になる。
「痛~~い!!! ほんとに、ほんとに、ごめんなさ~い!!!」
「……九条君、おれ、気にして無いから、そろそろ、手を」
「那月、だけど……」
「本当に、大丈夫」
那月がそう言うと、九条は少し不満そうな顔をしながらも、やっと斉木を解放する。
九条君は、斉木君と居ると、
ちょっとだけ子供っぽい。
那月は心の中だけで、クスッと笑う。
今まで、九条の事を知らなかったから、美形過ぎて近寄りがたい様な気がしたけど、これから知っていけば、そうでもないのかなあと那月は最近思っている。
ただ、元々九条は人当たりも良いし気さくだから、知っていれば近寄りがたい様な、性格ではないのだけど。
那月は噂でしか知らなかったから、少しだけ親近感がわいた気がした。
ただし斉木君には厳しい。
すごく。
「じゃあオレ、出掛ける途中だし~、もう行くね~。ふふふ~。お二人は、おうちデート、楽しんでね~! ふふふ~」
解放された斉木は、懲りずにそんな事を言いながら、九条に捕まる前に素早く逃げて行った。
本当に斉木君は……、と那月は少し呆れた。
7
あなたにおすすめの小説
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
【完結】毎日きみに恋してる
藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました!
応援ありがとうございました!
*******************
その日、澤下壱月は王子様に恋をした――
高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。
見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。
けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。
けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど――
このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる