小犬の気持ち

はづき惣

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その後の小犬

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「すごく大人しいし、可愛いね」

「可愛い……」

「毛並みがふわふわで、目がまん丸」

「すごく可愛い……」

 
 本当にそうだねと相槌をうち、抱っこしている犬から視線を上げると、九条が綺麗な顔で、うっとりと優しく微笑んでいた。

 
 そんな九条の顔を見ると、那月の頬が何だか少し熱くなってきてしまう。


 九条君は、ほんとにハルが可愛いんだなあ。
 確かにすごく可愛いもんね。
 

 いつも九条は那月の事を可愛いと言けれど、別に可愛いくもないし、そういう自覚もないしで本気にはしていない。

 だから、のんびりと犬を撫でながら、那月の顔は自然と笑顔になっていた。


「ほんと、すごく可愛いね」

「本当に……笑うとすごく可愛い」

「おれには、よく分からないけど、この子笑ってるのかな?」

「那月の笑顔がすごく可愛い」

 ……え?


 スリっと頬を撫でられたので、那月はふっと九条を見上げてしまい、次の瞬間に固まった。

 九条が那月を見つめながら、頬を染め目を細めて、甘く甘く微笑んでいたから。


「那月は俺といても、あまり笑ってくれないから、こんな風に笑ってくれると嬉しい」

「……」


 確かに九条といると色々緊張したりで、笑う余裕なんてないかもなと那月は思い返す。


 だいたいは、困った顔か驚いた顔しかしていない。


「那月にはいつもこうして、笑っていて欲しい」


 そう言って九条は、那月の腰に両腕を回し抱き寄せ、そっと二人の額を合わせる。

 近すぎる距離に、那月は顔を真っ赤にして動揺し、必死になって腕の中にいる犬を、潰さない様にと慌てた。
 

「く、九条君……、ハルが……」

「……そろそろ俺の事も、名前で読んでほしいな」

「ぇえ! ……名前」

「ね、お願い」


 またお願いされてしまった!
 で、でも……名前は……何だか恥ずかしいし……。


 甘く優しい声でのお願いに、那月はますます赤くなって、どうしたらいいのか分からなくなってしまう。


「那月」

「……っ、……った、……たっ」

「俺の名前、知ってるよね?」

「……ぅ、……うん、……た、たつ

 キュゥゥ~~ン ワン!


 その時、那月の腕の中で、今まで静かに大人しくしていたハルが、九条を見上げて吠えた。

 那月は初めて聞いた鳴き声に、抱っこしたハル
へと視線を落とす。


 急に鳴くなんて、どうしたんだろ?


「…………ハル、……そうだよね、……お兄さんを困らせては駄目だよね、那月はすごく恥ずかしがり屋だし」

「ん?」

「……分かった、分かったから、那月によく似た可愛い目で、俺を責めるように見ないで、なんだか那月に責められてるみたいだから」

「…………ぇ、えぇ」


 困ったように苦笑した九条が、優しくハルに話かけている。

 さっきまでの緊張感を忘れて、那月は何だか少し可笑しくなって、小さく笑ってしまった。

 そうしてそんな那月の事を、嬉しそうに見つめながら、ハルの頭を撫でて九条も笑っていた。


 ハルが助けてくれたみたい。
 ……でも、似てはいないよね?
 
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