9 / 9
救い出せたら、それでいい
しおりを挟む
「……やってしまった」
ベッドの上で出る大きなため息。
「……悲しいこと言うなよ」
「……起きてたのか、縁」
「俺は嬉しかったのに、お前は違うんだ?」
「覚えてないから、わかんねぇ」
目を覚まして、隣をみると裸の縁が寝ていた。
状況を把握するのに時間はかかったけど、そういうことだろう。
同窓会までは覚えているのに、ここにこんな形でいることになっている記憶はまったくない。
「おかしいな……そんなに飲んでないはずなのに」
昨日のあの状況なら、セーブしていてもセーブできなくて、酔ってしまいそうだから弱いお酒をゆっくりと飲んでいたはずだった。
そして、もしかしたらと、そんな淡い期待ばかりがよぎって、あまり酒を飲むこともしなかった。
酔っていたら隼から連絡が来ても相手をしてあげられないから。
どうやら俺は都合のいい相手でもいいくらい隼のことが好きになってしまったようだ。
身体を繋げている頃は、俺の方が相手をしてやってる感じで立場が逆だったように思えるのに、離れて気づく俺はバカなんだろう。
「酔わせたからな。俺が」
「は?だって、お前がくれた酒.......は!?」
ここで縁に騙されたときづかないほど俺は馬鹿ではない。
「こういうことになりたくて酔わせた。お前に弱い酒って嘘ついて飲ませたよ」
「……っ、なんでそんなこと」
隼以外の男に身体を捧げるつもりなんて二度となかったのに。
好きでもない男に抱かれて喘いでいたのかと思うとそれだけで吐き気がする。
「気持ちよさそうに鳴いてたよ」
「うるせぇ。黙れ」
前なら縁とこういう関係になれて嬉しかったはずなのにいまは気持ち悪さしか残らないなんて、人の気持ちというのは移りやすいものだ。
「いいじゃん、今日休みだしもう1回しよ?」
「やめ……んっ」
俺の抵抗もむなしく、簡単に縁の力に負けてしまう。
「可愛い、本当に可愛い。昨日も可愛くて、何度も何度も……」
「何度もしたのかよ……どーりで……」
身体が重たいとは思ってた。
隼としたあとももちろいつも重たいけど、隼はいつも俺の身体をいたわってくれていたから。
あぁ、やっぱり俺は隼がいいとこんな時も思ってしまう。
「……っ、縁は他にも相手いんだろ」
「は?好きなのは莉央だけだよ?」
「じゃあ、遊びなのかよ。この前キスしてた相手は……」
「キス……あぁ」
一瞬考えたあと、思い出したように目を見開く。
「あれは、昔から俺の奴隷」
「奴隷……?」
俺が大切に思っている居場所である隼のことを「奴隷」と表現したことに腹が立って仕方なかった。
でも、隼のことを何も知らない俺がとやかくいう問題でもなくて、何も言えない自分が悔しかった。
「うん。あの日は莉央に振られた腹いせに抱いた」
「いつもそんなことしてんのかよ.......」
「そうだな。莉央の代わりにしてるね、基本的には」
「やめろよ、そーいうふうにやんの。奴隷なんて人に使う言葉じゃない」
なんとしてもそんなふうに隼のことを使ってほしくなんてなかった。
もう俺のところに戻ってきてくれなくても構わない。
ただ、隼が幸せに笑っていてくれればそれでいいから。
俺は以前縁に思っていたようなことを隼に思っていた。
縁もどこにいるのか、なにをしているのか分からなかったけど、会えなくても笑ってくれてればそれでよかったから。
「莉央が俺の気持ちに応えてくれたらいいんだよ。そうしたらあいつを使わなくてもいいんだ」
「.......っ、なんだよ。それ」
「だってそうだろ?俺があいつのこと奴隷にするのは莉央のせいなんだよ」
「俺の、せい.......」
俺のせいで隼が傷ついていると思ったら胸が苦しかった。
「はじめは、莉央が俺の元から去った日だよ」
「卒業式.......」
「あそこから、あいつとの関係が生まれたんだ。あいつを抱いていれば満たされた。莉央を重ねて満たされたんだ」
苦しそうな顔で話す縁はきっと俺があんなふうに去ったことで傷ついてきたのだろう。
だとすれば、やはり原因は俺にあるのかもしれない。
「でも、だからといって俺は縁とはもう会いたいとか思わないよ」
「なんでなんだ.......女なんかどうでもいいだろ。だって、お前気持ち良さそうだった.......」
俺の前に膝をついて、顔を俯かせる。
「俺はお前に嘘をついた」
「嘘?」
「俺は女なんかすきじゃないし、お前のことが好きだった」
こんな風になっている縁のことを放っておけなくて、つい手を伸ばす。
それが隼のことを助けることになるなら。
でも、だからといって縁の気持ちに応えるなんてできないから、ただ愛されてきた縁という存在を認めてあげたかった。
「俺を.......好き?」
「好きだから、離れた」
「じゃあ.......っ「でも、俺にはもう大事な存在がいるんだ。だからごめん。でもお前はあいされてきたんだから、そんなお前が人を傷つけることなんてするな。そんなお前は見たくない」
「.......莉央」
縁の目が見開かれていく。
「莉央にはいつも気付かされてばかりだな。こんなことしてても時間の無駄なんだよな.......」
「縁。お前は愛されてるよ。だから、俺のことを信じて」
「.......莉央」
縁は昔から愛情に満たされていない人間だった。
そんな縁の元を自己満足で離れた俺がきちんと縁のことを救い出してやらないとならない。そんな気がした。
「お前と付き合うとか、こういうことするとか考えられないけど.......友達としてならもう離れないから」
また、違う意味でやり直せたらそれでいい。
そして、隼のことを救い出せたらそれで。
ベッドの上で出る大きなため息。
「……悲しいこと言うなよ」
「……起きてたのか、縁」
「俺は嬉しかったのに、お前は違うんだ?」
「覚えてないから、わかんねぇ」
目を覚まして、隣をみると裸の縁が寝ていた。
状況を把握するのに時間はかかったけど、そういうことだろう。
同窓会までは覚えているのに、ここにこんな形でいることになっている記憶はまったくない。
「おかしいな……そんなに飲んでないはずなのに」
昨日のあの状況なら、セーブしていてもセーブできなくて、酔ってしまいそうだから弱いお酒をゆっくりと飲んでいたはずだった。
そして、もしかしたらと、そんな淡い期待ばかりがよぎって、あまり酒を飲むこともしなかった。
酔っていたら隼から連絡が来ても相手をしてあげられないから。
どうやら俺は都合のいい相手でもいいくらい隼のことが好きになってしまったようだ。
身体を繋げている頃は、俺の方が相手をしてやってる感じで立場が逆だったように思えるのに、離れて気づく俺はバカなんだろう。
「酔わせたからな。俺が」
「は?だって、お前がくれた酒.......は!?」
ここで縁に騙されたときづかないほど俺は馬鹿ではない。
「こういうことになりたくて酔わせた。お前に弱い酒って嘘ついて飲ませたよ」
「……っ、なんでそんなこと」
隼以外の男に身体を捧げるつもりなんて二度となかったのに。
好きでもない男に抱かれて喘いでいたのかと思うとそれだけで吐き気がする。
「気持ちよさそうに鳴いてたよ」
「うるせぇ。黙れ」
前なら縁とこういう関係になれて嬉しかったはずなのにいまは気持ち悪さしか残らないなんて、人の気持ちというのは移りやすいものだ。
「いいじゃん、今日休みだしもう1回しよ?」
「やめ……んっ」
俺の抵抗もむなしく、簡単に縁の力に負けてしまう。
「可愛い、本当に可愛い。昨日も可愛くて、何度も何度も……」
「何度もしたのかよ……どーりで……」
身体が重たいとは思ってた。
隼としたあとももちろいつも重たいけど、隼はいつも俺の身体をいたわってくれていたから。
あぁ、やっぱり俺は隼がいいとこんな時も思ってしまう。
「……っ、縁は他にも相手いんだろ」
「は?好きなのは莉央だけだよ?」
「じゃあ、遊びなのかよ。この前キスしてた相手は……」
「キス……あぁ」
一瞬考えたあと、思い出したように目を見開く。
「あれは、昔から俺の奴隷」
「奴隷……?」
俺が大切に思っている居場所である隼のことを「奴隷」と表現したことに腹が立って仕方なかった。
でも、隼のことを何も知らない俺がとやかくいう問題でもなくて、何も言えない自分が悔しかった。
「うん。あの日は莉央に振られた腹いせに抱いた」
「いつもそんなことしてんのかよ.......」
「そうだな。莉央の代わりにしてるね、基本的には」
「やめろよ、そーいうふうにやんの。奴隷なんて人に使う言葉じゃない」
なんとしてもそんなふうに隼のことを使ってほしくなんてなかった。
もう俺のところに戻ってきてくれなくても構わない。
ただ、隼が幸せに笑っていてくれればそれでいいから。
俺は以前縁に思っていたようなことを隼に思っていた。
縁もどこにいるのか、なにをしているのか分からなかったけど、会えなくても笑ってくれてればそれでよかったから。
「莉央が俺の気持ちに応えてくれたらいいんだよ。そうしたらあいつを使わなくてもいいんだ」
「.......っ、なんだよ。それ」
「だってそうだろ?俺があいつのこと奴隷にするのは莉央のせいなんだよ」
「俺の、せい.......」
俺のせいで隼が傷ついていると思ったら胸が苦しかった。
「はじめは、莉央が俺の元から去った日だよ」
「卒業式.......」
「あそこから、あいつとの関係が生まれたんだ。あいつを抱いていれば満たされた。莉央を重ねて満たされたんだ」
苦しそうな顔で話す縁はきっと俺があんなふうに去ったことで傷ついてきたのだろう。
だとすれば、やはり原因は俺にあるのかもしれない。
「でも、だからといって俺は縁とはもう会いたいとか思わないよ」
「なんでなんだ.......女なんかどうでもいいだろ。だって、お前気持ち良さそうだった.......」
俺の前に膝をついて、顔を俯かせる。
「俺はお前に嘘をついた」
「嘘?」
「俺は女なんかすきじゃないし、お前のことが好きだった」
こんな風になっている縁のことを放っておけなくて、つい手を伸ばす。
それが隼のことを助けることになるなら。
でも、だからといって縁の気持ちに応えるなんてできないから、ただ愛されてきた縁という存在を認めてあげたかった。
「俺を.......好き?」
「好きだから、離れた」
「じゃあ.......っ「でも、俺にはもう大事な存在がいるんだ。だからごめん。でもお前はあいされてきたんだから、そんなお前が人を傷つけることなんてするな。そんなお前は見たくない」
「.......莉央」
縁の目が見開かれていく。
「莉央にはいつも気付かされてばかりだな。こんなことしてても時間の無駄なんだよな.......」
「縁。お前は愛されてるよ。だから、俺のことを信じて」
「.......莉央」
縁は昔から愛情に満たされていない人間だった。
そんな縁の元を自己満足で離れた俺がきちんと縁のことを救い出してやらないとならない。そんな気がした。
「お前と付き合うとか、こういうことするとか考えられないけど.......友達としてならもう離れないから」
また、違う意味でやり直せたらそれでいい。
そして、隼のことを救い出せたらそれで。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
届かない「ただいま」
AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。
「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。
これは「優しさが奪った日常」の物語。
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ/Ⅱ
MITARASI_
BL
I
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
Ⅱ
高校を卒業し、同じ大学へ進学した陸と颯馬。
別々の学部に進みながらも支え合い、やがて同棲を始めた二人は、通学の疲れや家事の分担といった小さな現実に向き合いながら、少しずつ【これから】を形にしていく。
未来の旅行を計画し、バイトを始め、日常を重ねていく日々。
恋人として選び合った関係は、穏やかに、けれど確かに深まっていく。
そんな中、陸の前に思いがけない再会をする。
過去と現在が交差するその瞬間が、二人の日常に小さな影を落としていく。
不安も、すれ違いも、言葉にできない想いも抱えながら。
それでも陸と颯馬は、互いの手を離さずに進もうとする。
高校編のその先を描く大学生活編。
選び続けることの意味を問いかける、二人の新たな物語。
続編執筆中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる