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昔と同じ
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「おう、来たんだ」
「そっちこそ」
隼に会えなくなって3週目。
今日は高校の同窓会で縁は一度も来たことがないと他の友人から聞いていたから来てみた。
入ろうとした入口で会った人物こそ縁だった。
出会った瞬間帰ろうと思ったくらい、失敗したと思った。
考えてみれば、縁はいままで海外にいたから同窓会に出られるわけがない。
海外から帰ってきているいま出席することなんて考えてみれば容易にわかることなのだ。
「ま、仲良くしようぜ」
「表向きはな」
俺は縁と仲良くするつもりなどさらさらなかった。
そりゃあもちろん、縁は俺にとって親友だったけど今の俺にとっては好きな男とキスをしていた男だ。
「なんだよ、つれないなぁー」
「別に。ほら、行くぞ」
歩き出した俺の後ろから縁がついてくる気配を感じた。
「なぁ、今日途中で抜け出そうぜ」
腕を俺の肩へ回す。
「なんでだよ」
「二人きりになりたいから」
「ここで十分だよ」
縁の腕を外して、たどり着いた襖のドアを開ける。
「おおー!莉央も縁も久しぶりじゃん!」
「片倉(かたくら)か」
「お前ら、相変わらず仲良いんだなあー」
あの頃の面影を残したままのクラスメイトに少しホッとする。
「じゃあ2人の飲み物も揃ったし。はじめますかー!」
幹事である当時の学級委員の一声で各々頼んだドリンクのグラスを持つ。
「清林(せいりん)学園にかんぱーい!」
「カンパーイ!」
近くにいたクラスメイトたちとグラスを合わせる。
俺は飲みすぎないように気をつけようと思いながら、ゆっくりと飲み始める。
「莉央はいまなにしてんの?」
「建築会社にいる」
「へぇ!どこなの?」
「大江(おおえ)建設だよ」
久しぶりに参加した俺への質問が集中する。
「俺よりも縁に聞いた方がいいだろ。久しぶりの日本だぞ」
「縁はもう聞かなくても有名だからなー?」
「え?そうなのか?」
何も知らない俺はちらっと横にいる縁を見る。
「別に有名でもないよ」
「有名だろー!ハリウッドの超人気作撮ったんだろ!?」
「へぇ.......すごいじゃん」
海外に行っただけですごいとは思っていたけどここまですごくなっているとは思わなかった。
俺は縁のことを見ないようにしていたから、必然とハリウッド系を避けてきた。
だからまったく縁の活躍は知らなかった。
「それに.......なぁ?御曹司のハリウッド進出なんて珍しいじゃん」
「.......御曹司?」
「は?お前あんな仲良かったのに知らなかったの?」
「あんまそーいう話はしてこなかったから」
御曹司だとかそんな話はもうどうでもよかった。
俺はあんなに縁のことを好きだとか言っておいて、何も知らなかったことにショックを隠しきれない。
「莉央にだけは御曹司とかそういう目で見られたくなかったんだ」
「本当に好きだったのか謎だね」
俺はもう投げやりになっていた。
もう縁が俺のことをどう思っていたって関係ないはずなのに、知りたかったと思うのは俺のエゴなのかもしれない。
「ごめん、言わなかったのは謝るけど、気持ちは疑わないで欲しい」
慌てたように俺を自分の方へと向かせる。
「あ、莉央。飲み物なくなってるよ。飲みやすいからこれ飲みなよ」
「あぁ、ありがとう.......」
縁から受け取ったグラスの中の飲み物は本当に飲みやすかった。
「これ、飲みやすいな.......」
「だろ?莉央と飲んだことないけど、きっとそんなに強くなさそうだから弱いの頼んでおいたんだよ」
「.......助かる」
縁の言うように別に弱いというわけではない。
でも、今日の俺はきっと飲みすぎてしまうから弱い酒を飲めるのは正直いって助かる。
「俺の親父がマリアージュグループの会長なんだ」
少しの沈黙のあと、縁がポツリと話だした。
「マリアージュってあのホテル王!?」
「あぁ、そうだよ」
「すげぇ.......ってこの前のホテルだよな」
「うん、そう」
マリアージュグループといえば、国内外屈指の大企業だ。
全世界に高級ホテルをもち、この前俺たちが社員旅行で泊まった豪華ホテルもマリアージュだった。
「で、ハリウッドにいて大丈夫なのか?継がなくていいの?お前たしか長男だったよな?」
「あぁ、いいんだ。有能な弟がいるからね」
フッと縁が笑う。
「あぁ、縁の弟たしかめっちゃ頭いいって言ってたよな」
「うん。俺は出来の悪い兄だからさ。親にとっても俺が海外進出したのはそういう意味で嬉しかったと思うよ」
昔から感じてた縁の弟に対する劣等感と親への拒絶。
それが大人になったいまはさらに顕著になった気がする。
「昔から言ってるじゃん。縁は縁だし、親が縁のことを蔑ろにするわけないって」
「そうやって俺に言ってくれるのは、莉央だけだったよ。だから、俺は莉央がいればよかったんだ」
「.......縁」
昔と同じ表情だ。
たぶん、俺はこの縁の俺に絶大な信頼をおいてくれている表情に気持ちを募らせたんだ。
そして、にげてしまいたくなった。
「この先もずっと莉央に話を聞いて貰おうと思ってたら.......いなくなるんだもん。困ったよ」
「.......ごめん」
「俺にとってのはけ口はあるからいいけどさ.......それまでなくなったら俺はきっと生きていけないんじゃないかな」
遠い目をしてそんなことを言う縁。
ふと、この前の隼とのキスを思い出す。
はけ口とは、もしかして隼のことなのだろうか。
「そっちこそ」
隼に会えなくなって3週目。
今日は高校の同窓会で縁は一度も来たことがないと他の友人から聞いていたから来てみた。
入ろうとした入口で会った人物こそ縁だった。
出会った瞬間帰ろうと思ったくらい、失敗したと思った。
考えてみれば、縁はいままで海外にいたから同窓会に出られるわけがない。
海外から帰ってきているいま出席することなんて考えてみれば容易にわかることなのだ。
「ま、仲良くしようぜ」
「表向きはな」
俺は縁と仲良くするつもりなどさらさらなかった。
そりゃあもちろん、縁は俺にとって親友だったけど今の俺にとっては好きな男とキスをしていた男だ。
「なんだよ、つれないなぁー」
「別に。ほら、行くぞ」
歩き出した俺の後ろから縁がついてくる気配を感じた。
「なぁ、今日途中で抜け出そうぜ」
腕を俺の肩へ回す。
「なんでだよ」
「二人きりになりたいから」
「ここで十分だよ」
縁の腕を外して、たどり着いた襖のドアを開ける。
「おおー!莉央も縁も久しぶりじゃん!」
「片倉(かたくら)か」
「お前ら、相変わらず仲良いんだなあー」
あの頃の面影を残したままのクラスメイトに少しホッとする。
「じゃあ2人の飲み物も揃ったし。はじめますかー!」
幹事である当時の学級委員の一声で各々頼んだドリンクのグラスを持つ。
「清林(せいりん)学園にかんぱーい!」
「カンパーイ!」
近くにいたクラスメイトたちとグラスを合わせる。
俺は飲みすぎないように気をつけようと思いながら、ゆっくりと飲み始める。
「莉央はいまなにしてんの?」
「建築会社にいる」
「へぇ!どこなの?」
「大江(おおえ)建設だよ」
久しぶりに参加した俺への質問が集中する。
「俺よりも縁に聞いた方がいいだろ。久しぶりの日本だぞ」
「縁はもう聞かなくても有名だからなー?」
「え?そうなのか?」
何も知らない俺はちらっと横にいる縁を見る。
「別に有名でもないよ」
「有名だろー!ハリウッドの超人気作撮ったんだろ!?」
「へぇ.......すごいじゃん」
海外に行っただけですごいとは思っていたけどここまですごくなっているとは思わなかった。
俺は縁のことを見ないようにしていたから、必然とハリウッド系を避けてきた。
だからまったく縁の活躍は知らなかった。
「それに.......なぁ?御曹司のハリウッド進出なんて珍しいじゃん」
「.......御曹司?」
「は?お前あんな仲良かったのに知らなかったの?」
「あんまそーいう話はしてこなかったから」
御曹司だとかそんな話はもうどうでもよかった。
俺はあんなに縁のことを好きだとか言っておいて、何も知らなかったことにショックを隠しきれない。
「莉央にだけは御曹司とかそういう目で見られたくなかったんだ」
「本当に好きだったのか謎だね」
俺はもう投げやりになっていた。
もう縁が俺のことをどう思っていたって関係ないはずなのに、知りたかったと思うのは俺のエゴなのかもしれない。
「ごめん、言わなかったのは謝るけど、気持ちは疑わないで欲しい」
慌てたように俺を自分の方へと向かせる。
「あ、莉央。飲み物なくなってるよ。飲みやすいからこれ飲みなよ」
「あぁ、ありがとう.......」
縁から受け取ったグラスの中の飲み物は本当に飲みやすかった。
「これ、飲みやすいな.......」
「だろ?莉央と飲んだことないけど、きっとそんなに強くなさそうだから弱いの頼んでおいたんだよ」
「.......助かる」
縁の言うように別に弱いというわけではない。
でも、今日の俺はきっと飲みすぎてしまうから弱い酒を飲めるのは正直いって助かる。
「俺の親父がマリアージュグループの会長なんだ」
少しの沈黙のあと、縁がポツリと話だした。
「マリアージュってあのホテル王!?」
「あぁ、そうだよ」
「すげぇ.......ってこの前のホテルだよな」
「うん、そう」
マリアージュグループといえば、国内外屈指の大企業だ。
全世界に高級ホテルをもち、この前俺たちが社員旅行で泊まった豪華ホテルもマリアージュだった。
「で、ハリウッドにいて大丈夫なのか?継がなくていいの?お前たしか長男だったよな?」
「あぁ、いいんだ。有能な弟がいるからね」
フッと縁が笑う。
「あぁ、縁の弟たしかめっちゃ頭いいって言ってたよな」
「うん。俺は出来の悪い兄だからさ。親にとっても俺が海外進出したのはそういう意味で嬉しかったと思うよ」
昔から感じてた縁の弟に対する劣等感と親への拒絶。
それが大人になったいまはさらに顕著になった気がする。
「昔から言ってるじゃん。縁は縁だし、親が縁のことを蔑ろにするわけないって」
「そうやって俺に言ってくれるのは、莉央だけだったよ。だから、俺は莉央がいればよかったんだ」
「.......縁」
昔と同じ表情だ。
たぶん、俺はこの縁の俺に絶大な信頼をおいてくれている表情に気持ちを募らせたんだ。
そして、にげてしまいたくなった。
「この先もずっと莉央に話を聞いて貰おうと思ってたら.......いなくなるんだもん。困ったよ」
「.......ごめん」
「俺にとってのはけ口はあるからいいけどさ.......それまでなくなったら俺はきっと生きていけないんじゃないかな」
遠い目をしてそんなことを言う縁。
ふと、この前の隼とのキスを思い出す。
はけ口とは、もしかして隼のことなのだろうか。
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