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第1話
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街中がきらきらしたイルミネーションに彩られる十二月の半ば。私は、幼なじみの奏とイルミネーションを見に、渋谷へやって来ていた。
高校三年生の私たち。先日、お互いに推薦の結果が出て、無事進学先が決まったのだ。私はかねてより目指していた都内の美大の推薦が通り、奏はスポーツ推薦で有名私立大への内定が出た。
今日はそのちょっとしたお祝いデートである。
ふわふわと瞬く、木々に縫い付けられた光を見上げ、私は声を上げた。
「うわぁ~すごいきれい! 私、ここ来るの初めてだよ」
「俺も。結構すごい人だね」
「うん」
藍色の中に落ちた青白いイルミネーションの光たちは、淡く優しい色をしている。星の海かのような光景に見惚れていると、奏が「ほら」と私に手を差し出した。
「へ? なに?」
「はぐれるといけないから」
「あぁ、そっか。そうだよね」
周囲を見る。辺りはかなりの人で溢れ返っている。もしはぐれてしまったら、この中を探すのは大変そうだ。イルミネーションのトンネルの中とはいえ、結構暗いし。
私は素直にその手を取った。そのまま、光のトンネルをのんびりと歩く。
寒いのに心がポカポカする感じがした。
「ことり。こっち向いて」
ふと、奏が私を呼んだ。
「なに?」
顔を向けた瞬間、青一色だった視界に、なにかがチラついた。直後、ふわふわしたものが首元に触れ、思わず手をやる。
「え……」
驚いて目を瞬かせていると、奏がふっと笑った。
「クリスマスプレゼント」
「わぁ……」
マフラーだった。暗くて少し見えにくいけれど、赤と黒のチェック柄だ。私の学校の制服も黒と赤が基調になったセーラー服だから、制服に合わせてもきっととても合うだろう。
「ありがとう!!」
「安物だけどな」
と、奏は少し申し訳なさそうに笑った。
「ぜんぜん! ……でもどうしよう。私、なにも用意してなくて……」
「いいよ。これは俺があげたかっただけだからさ。合格おめでとう、ことり」
私は嬉しくて、奏が巻いてくれたマフラーに顔を埋める。
「ありがとう! 私、これ一生大切にするね!」
嬉しくて声を弾ませる私に、奏は大袈裟だよ、と笑った。そして、マフラーを撫でていた私の手をそっと握る。驚いて顔を上げると、奏は頬を染めて私を見下ろしている。
「奏?」
「あのさ……俺、好きなんだけど」
その瞬間、周囲のきらめきがぐっと増したような気がした。風が吹き、奏のすぐ背後にあったツリーに落ちていた雨粒が、ぽとりと滴る。昼前まで降っていた雨がイルミネーションの電球に落ちて、光をさらに淡く反射させていたのだ。
「ことりが、好きなんだよ」
見慣れたはずのその顔は、いつの間にか知らない人のように大人な顔をしていて、どこか胸がざわざわと騒いだ。
奏は少し照れくさそうに頭を搔いた。
「俺はずっと、ことりのことを幼なじみじゃなくて女の子として見てた。この意味、分かるか?」
こくりと頷く。
「これから俺たちは、別々の学校に行く。そうしたらきっと、今までのように会うことはできなくなると思う。俺は家を出るし、バイトとか課題とかで忙しくもなるだろうし……」
「あ……そっか。そうだよね」
「でも、俺はずっと、だれよりことりのそばにいたいと思ってる」
私の手を握る奏の手は、想像よりずっと大きくて骨張っていた。
「付き合ってほしいんだ」
奏を見上げる。奏の瞳は吸い込まれそうなほどに澄んでいる。
「うん。私も、奏のこと大好きだよ」
おずおずとそう答えると、奏はふっと微笑んだ。
「知ってる」
今は十二月なのに、私の心はまるで春風に包まれたかのようにあたたかくなった。
高校三年生の私たち。先日、お互いに推薦の結果が出て、無事進学先が決まったのだ。私はかねてより目指していた都内の美大の推薦が通り、奏はスポーツ推薦で有名私立大への内定が出た。
今日はそのちょっとしたお祝いデートである。
ふわふわと瞬く、木々に縫い付けられた光を見上げ、私は声を上げた。
「うわぁ~すごいきれい! 私、ここ来るの初めてだよ」
「俺も。結構すごい人だね」
「うん」
藍色の中に落ちた青白いイルミネーションの光たちは、淡く優しい色をしている。星の海かのような光景に見惚れていると、奏が「ほら」と私に手を差し出した。
「へ? なに?」
「はぐれるといけないから」
「あぁ、そっか。そうだよね」
周囲を見る。辺りはかなりの人で溢れ返っている。もしはぐれてしまったら、この中を探すのは大変そうだ。イルミネーションのトンネルの中とはいえ、結構暗いし。
私は素直にその手を取った。そのまま、光のトンネルをのんびりと歩く。
寒いのに心がポカポカする感じがした。
「ことり。こっち向いて」
ふと、奏が私を呼んだ。
「なに?」
顔を向けた瞬間、青一色だった視界に、なにかがチラついた。直後、ふわふわしたものが首元に触れ、思わず手をやる。
「え……」
驚いて目を瞬かせていると、奏がふっと笑った。
「クリスマスプレゼント」
「わぁ……」
マフラーだった。暗くて少し見えにくいけれど、赤と黒のチェック柄だ。私の学校の制服も黒と赤が基調になったセーラー服だから、制服に合わせてもきっととても合うだろう。
「ありがとう!!」
「安物だけどな」
と、奏は少し申し訳なさそうに笑った。
「ぜんぜん! ……でもどうしよう。私、なにも用意してなくて……」
「いいよ。これは俺があげたかっただけだからさ。合格おめでとう、ことり」
私は嬉しくて、奏が巻いてくれたマフラーに顔を埋める。
「ありがとう! 私、これ一生大切にするね!」
嬉しくて声を弾ませる私に、奏は大袈裟だよ、と笑った。そして、マフラーを撫でていた私の手をそっと握る。驚いて顔を上げると、奏は頬を染めて私を見下ろしている。
「奏?」
「あのさ……俺、好きなんだけど」
その瞬間、周囲のきらめきがぐっと増したような気がした。風が吹き、奏のすぐ背後にあったツリーに落ちていた雨粒が、ぽとりと滴る。昼前まで降っていた雨がイルミネーションの電球に落ちて、光をさらに淡く反射させていたのだ。
「ことりが、好きなんだよ」
見慣れたはずのその顔は、いつの間にか知らない人のように大人な顔をしていて、どこか胸がざわざわと騒いだ。
奏は少し照れくさそうに頭を搔いた。
「俺はずっと、ことりのことを幼なじみじゃなくて女の子として見てた。この意味、分かるか?」
こくりと頷く。
「これから俺たちは、別々の学校に行く。そうしたらきっと、今までのように会うことはできなくなると思う。俺は家を出るし、バイトとか課題とかで忙しくもなるだろうし……」
「あ……そっか。そうだよね」
「でも、俺はずっと、だれよりことりのそばにいたいと思ってる」
私の手を握る奏の手は、想像よりずっと大きくて骨張っていた。
「付き合ってほしいんだ」
奏を見上げる。奏の瞳は吸い込まれそうなほどに澄んでいる。
「うん。私も、奏のこと大好きだよ」
おずおずとそう答えると、奏はふっと微笑んだ。
「知ってる」
今は十二月なのに、私の心はまるで春風に包まれたかのようにあたたかくなった。
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