明日はちゃんと、君のいない右側を歩いてく。

朱宮あめ

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第2章

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 お母さんが出ていった扉を見つめて、もう一度ため息をつく。
 お母さんとお父さんの寝室は、私の部屋のとなりだ。そこまでうなされていた声が聞こえていたのだろうか。気をつけなくちゃ、と思いながら、もう一度息を吐いた。

 時計を見ると、深夜の二時。
 起きるには早すぎる時間だけれど、もう一度眠る気にはなれなかった。とはいえどうやって暇を潰そう。

 汗のせいで肌寒さを感じたとき、ふと彼の顔が浮かんだ。

 彼は今、どうしているだろう。
 会いたい。

 思ったら、もう止められない。ティーシャツとジーンズに着替えて、足音を立てないように階段を降りる。

 一階に降りるとリビングに灯りがついていた。キッチンを覗くと、お母さんがいた。目が合い、しまったと思う。

「あ、水波。今ホットミルク作ってるから……って、その格好外着じゃない」

 引き止められる前に、と、急いで玄関に向かう。

「ちょっとどこに行くの! こんな時間に……」
「……ちょっと、散歩」
「ダメよ、今何時だと思ってるの! 危ないでしょう!」

 強く腕を掴まれ、私はその手を力任せに振り払った。
「放してよ!」
「水波!」
「夜だからなに!? 私はただ、勝手に人の部屋に入ってくるような人がいるこの家にいたくないの!」

 お母さんがハッとした顔をする。

「ごめんなさい……でも、落ち着いて水波」
「落ち着いてって、なに」
「怖い夢を見たなら、明日先生にそのことを言おう。きっと良くなるお薬もらえるから。不安なら、お母さんも一緒についてくから」
「うるさい! 薬なんていらない! そういうことじゃないの!」
「水波……」

「結局、お母さんには私の気持ちなんて分からないんだよね。……お願いだから、放っておいて」
 無表情で告げると、お母さんが泣きそうな顔をした。

「……水波」
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