異世界ゴーストレイヴン ~不幸すぎる俺は幽霊に呪い殺され異世界転生!なぜかその幽霊まで憑いてきたので一緒に異世界で無双します!~

バルト

文字の大きさ
24 / 30
始まりの呪い

第24話:冒険の準備

しおりを挟む
 カウンター前のテーブルに腰を下ろすと、手元の書類をまとめたシェリルが、パタパタとファイルを開いて笑顔を向けてきた。
 眼鏡越しの瞳は真面目そうなのに、どこか明るくて親しみやすい。テンション高めの優等生って感じだ。

「それではっ! 改めまして、レインさん、サヤさん──おふたりの正式な冒険者登録が完了しましたっ! 本日より赤蓮の牙所属、“Dランク冒険者”として正式に活動開始ですっ!」

「おお~……なんか、いよいよって感じするな」
「ね~、仮登録のときはまだ半信半疑だったけど、今はちゃんと“冒険者”って感じじゃん!」

 サヤも感慨深そうに笑い、ポンと胸を張る。

「そして、こちらがギルドメンバーの証となる認定バッジです!」

 シェリルが小さな布張りの箱を開き、二つの金属製バッジを差し出した。
 中央には“朱雀の翼”の意匠が刻まれ、ランクを示す刻印が添えられている。

「お好きな場所につけてください。冒険者としての身分証も兼ねてますから、なるべく外から見える位置にお願いしますね!」

「おお……こういうの、ちょっと憧れてたんだよな」

 俺はそっと手に取り、胸元のベルト部分に装着した。

「へへっ、似合ってる~? ウチもここにつけちゃおっと!」

 サヤは勢いよく上着の左肩にぱちんとつけ、その仕草には誇らしさがにじんでいた。

「はいっ、そこで──こちらが本日から受けられるクエスト一覧になります!」

 シェリルがすぐに数枚の書類をテーブルに広げる。

「お三方のランクや条件に合わせて、私のほうでいくつか候補をピックアップしておきました。今回はルナベールさんがBランクなので、Dランクのおふたりも“複合編成”として中~上級のクエストが受けられるんですっ!」

「へぇ……けっこうあるんだな」

 目を通すと、具体的な依頼の数に思わず驚いた。

「これは特例なんですけどね。信頼と同行者の実績があれば、チームとして受けられる範囲がぐんと広がるんですよ~。ルナベールさんのおかげですねっ!」
「ふむふむ……つまり、ウチらのランクだと無理だけど、ルナちゃんがいればイケるってことか~」

 サヤが満足げに頷く。

「そのとおりです! なので、最初のうちは“信頼できる仲間と組む”ことがとっても大事なんですよっ」
「がんばります」

 ルナベールが真っ直ぐに頷くと、シェリルは「はいっ、応援してます!」と満面の笑みを浮かべた。

「で、ですね! 今日のおすすめはこちらっ。未踏破の小規模ダンジョン《アレスの穴》での採取依頼です!」
「ダンジョン!?」

 思わず身を乗り出す。

「依頼主は王都工房組合。目的は“リヴァイアストーン”という希少鉱石の採取です。発見されたばかりの岩窟なので、内部は未調査ですが……魔物の強さは中級程度と推測されてます!」
「へぇ~、なんか楽しみになってきたじゃん」

 サヤがニヤッと笑う。

「ただし! 条件がありますっ!」

 シェリルがぴしっと人差し指を立てた。

「日没までに戻ること! 深追いせず、安全に成果を持ち帰ることが最優先ですっ! 初回ですから、そこは慎重にお願いしますねっ!」
「了解っす!」

 サヤが元気に返事し、俺とルナベールも揃ってうなずいた。

「……最初の一歩としては、ちょうどいい難易度かもしれません」

 ルナベールが呟くと、シェリルは眼鏡を押し上げ、またにっこりと笑った。

「初めての冒険には、“出会い”と“学び”がいっぱい詰まってるんですから。どうか、気をつけて。ご武運を!」

 ──その後、俺たちはルナベールの部屋に集まり、出発前の作戦会議を行った。

「えっと……まずは、ダンジョン探索時の基本について、簡単にまとめてみました」

 ルナベールが差し出したのは、手書きメモがびっしり詰まった紙。きっちり整った字で、項目ごとに箇条書きやマーカーが施されている。

「さすがルナちゃん、真面目~。字キレイすぎて感動なんだけど」
「ありがとうございます。でも、これは基本なので……ちゃんと頭に入れてくださいね?」

 ルナベールは微笑んで返しつつ、床に地図を広げた。

「今回のダンジョン《アレスの穴》は、まだ構造が把握されていない未踏破区域です。念のため、非常時の対応を想定して準備をしましょう」
「非常時って……まさか死ぬとか!?」
「あり得ます」

 ルナベールはきっぱりと断言した。

「マジで!?」
「冗談です。でも、万が一に備えるのが“冒険者”ですから。たとえば――」

 彼女はテーブルに三つの小さなアイテムを並べた。

「これは回復薬。基本的な体力回復アイテムで、軽傷ならこれ一本で対応できます」
「ふむふむ……なるほど」

 俺は真面目にメモを取り始める。

「次は灯火石。暗闇を一定時間照らしてくれる石です。魔力を流し込めば光ります」
「わ、キラキラじゃん! ウチ、これアクセサリーにした~い♡」
「ダメです。これは命に関わる道具です」
「お前、真面目に聞いとけって」
「は~い」
「はい、次は“テレポートスクロール”。これが一番重要です。発動すればギルド前まで強制帰還できますが……使用には制限があります。一人一回、魔力を込めて数秒の詠唱が必要です。発動中に中断されると無効になりますので――」
「レインの役目っぽいね、逃げ足なら速そうだし」
「いや、お前だってビビったら秒で逃げるタイプだろ」
「ふふっ、言い合いをしている場合じゃありませんよ」
「はーい、先生~♡」

 苦笑しつつメモを続ける。サヤはふざけてるようで、必要な単語はきっちり口に出して覚えていた。

「持ち物はこれで良し、と……装備の確認も忘れずに。念のため、お二人には私の短剣をお貸しします。防具はこのクエストが完了して報酬を貰ったら買いに行きましょう。今回のクエストは戦闘にはならないと思うので大丈夫かと」
「りょうかい」

 こうして、一通りの準備と確認を終えた俺たち三人。

 ──ついに、初めての冒険の時が来た。

「……じゃ、行こっか。トライデントの初陣ってやつ、見せつけてやろーぜ☆」
「おう、行こう!」
「気を引き締めて、気をつけていきましょう!」

 陽の光の下、俺たちはギルドを後にした。
 目指すは、未踏破の岩窟 《アレスの穴》。
 初めての本格クエスト、その幕が今、上がろうとしていた――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界複利! 【単行本1巻発売中】 ~日利1%で始める追放生活~

蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。 中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。 役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

処理中です...