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序章
俺の人生イージーモード計画
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俺の人生は既にイージーモードである。しかし前世で苦難の道を歩んだ俺は、妥協せずスーパーイージーモードな人生を往くために努力をすることにした。俺ってえらい。
まず勉学に励んだ。勉強は大事である。苦労した俺が言うんだから間違いない。
結果俺は十歳にしてこの世界基準で言う高校…高等部レベルの学力を持つこととなった。素晴らしい。
周りからは神童だともてはやされたが俺は謙虚だった。というか中身三十いくつのお兄さんなのだから当然である。
次に剣術など運動にも手を抜かなかった。目指せ文武両道!
そして元々の運動神経が良かったらしくこれまた大成功だった。スティルヤード家の誇りだと言われた。
俺は照れながらも謙虚だった。性格も美しくなろうと決意したのである。驕れるものはみな滅びるのだ。
マナーや礼儀作法も完璧にマスターし、礼儀正しく良い子であるよう努めた。俺ってすごい。
そんな俺はすこぶる緊張していた。何故なら今日は俺が将来仕える第二皇子と会う日なのだ。
俺にとって第二皇子は主人、つまり上司である。粗相は許されない、心証が悪くても駄目だ。すべては俺の出世街道のため。第一印象は良くあるべきだろう。
ここは皇族の方々の住む城。客室でその時を、今か今かと待っていた。
「レオンハルト様、第二皇子殿下が参られました。」
侍女が俺を呼ぶ。いよいよ決戦の時──!
「わかった。すぐに行くよ。」
第二皇子、イヴァング・アルス・ローライズ。俺と同い年の金髪隻眼の美少年である。
絵画でしか見たことがなかったがこれは…
「皇子殿下、お初にお目にかかります。レオンハルト・アルム・スティルヤードと申します。以後お見知りおきを。」
丁寧に、優雅に、華やかに。ゆっくりと頭を下げ自慢の澄んだ声で挨拶をする。さあ皇子、どう来る──?
「…イヴァング。」
えっ。
「いつまでそこに突っ立っている。茶会をするんだろう、移動するぞ。」
な…俺の挨拶に対しての反応がそれだけか!?いくら同性とはいえ息を呑むくらいしても罰は当たらないぞ?
「はい、皇子殿下。」
しかし俺は良い子なのでそんな思いは態度に出さず、しずしずと皇子の後ろについて行く。
これからの予定は簡単で、父様たちの用事が終わるまで庭園で皇子と茶をしばきお喋りするだけだ。
所詮ついでなのだ、この顔合わせは。
「紅茶の好みはあるか。」
ぶっきらぼうな口調で皇子が問うてくる。もてなす気はあるんだな。
「では皇子殿下のおすすめを頂けますか?」
「…おい、ディンブラをアイスティーで。」
皇子はこれまた不愛想に、控えている召使いへ指示を出す。アイスティーか、暑いからちょうどいいな。
「ありがとうございます、皇子殿下。」
「その皇子殿下と言うのをやめろ。」
横暴そうなやつ…まあこの年頃なら可愛いものである。
「わかりました、ではイヴァング殿下とお呼びしても?」
「…それでいい。」
イヴァングは少し襟足の伸びた金髪につり目の少年だった。俺の方が正統派皇子みたいな髪型してるな。
絵画よりもきつい印象を受けるのはにこりとも笑わないからだろうか。絵画も笑ってなかったけど。
「こうしてイヴァング殿下とお茶ができて嬉しいです。僕、この話を聞いてからずっと楽しみにしていたんですよ。」
とりあえず媚びを売ろう。少しでも親しくならねば…!
「そうか。俺は正直億劫だったがな。」
はあ???なんだこいつ喧嘩売ってんのか?買いたいが我慢だ。ビークール俺。
「そうでしたか…貴重なお時間を頂いてしまって申し訳ありません。せめて少しでもイヴァング殿下にお楽しみいただけるよう、がんばりますね。」
「お楽しみね…はあ。」
溜息つきやがったぞこいつ!
「殿下、何か趣味はございますか?」
まずは趣味だな、話が合えば儲けものである。
「…別に。」
はあ~??なんだこいつ傲岸不遜にも程があるぞ?
「そうですか。僕は最近剣術の稽古に精を出しておりまして、これがまた面白いのですよ。」
こうなったらこちらのペースに乗せてやるまで…!
「へえ。…それで?」
「…僕とお手合わせ願えませんか、殿下。」
ボッコボコにしてやるよ…。この俺を煽ったこと、後悔させてやる!!
なんとか殿下にご了承いただき、木でできた訓練用の剣で相対する。
審判には殿下の護衛騎士にやってもらうことにした。
「それでは両者構えて、止めと言ったらすぐに剣を手放すように。…開始!」
「はあ!」
先手必勝、斜め上から斬りかかる。殿下はすぐさま防御し、そのまま圧し切るように剣を薙ぎ払った。
右、左、右、右。連続で斬りかかるも全ていなされる。この皇子、強い…!
「中々手強い…流石は殿下、素晴らしい腕前ですッね!」
言い終わる前に殿下は真上から斬りかかってくる。このガキ…!
フェイントをいれつつリズミカルに剣を振り、回転し遠心力を使い威力を上げる。
隙ができればそこに突きを放ち、受けきれなかった殿下の手首に一撃叩き込む。
…剣が殿下の手を離れた。
「そこまで!」
審判が止めに入る。やったぜ!俺の勝利だ!
「…フン。」
そっぽを向いた殿下は若干涙目だ。やりすぎたか?だが…
「ふ、ふふふ、あははは!やった勝った!」
小生意気な殿下をギッタンギッタンにしてやったぜ!バーカバーカ!!
「殿下、久々にいい勝負が出来ました、楽しかったです。ありがとうございました!」
これは事実だ。強すぎた俺はそんじょそこらの同年代とでは勝負にならなかったのである。
「…そうか。まあ、なんだ、またやってもいい。つ、次は、勝つ。」
…一丁前に悔しいらしい。なんだ、意外と素直な奴じゃないか。
「ええ、ぜひまた手合わせしましょうね。僕も腕を磨いておきます!」
その後は茶を飲み、話もそこそこ盛り上がって終了した。中々良い結果ではないだろうか?
迎えに来た父様と馬車に乗る。行きと変わらないが逆走する風景をぼんやりと眺めていた。
「皇子殿下とは仲良くできそうかい、レオン?」
父様が優しく語りかけてくる。紺色の髪をオールバックにしたおじさまって感じの人だ。
「はい、最初は不安でしたが仲良くなれました。また会う約束もしたのですよ。」
「そうか、それはよかった。ではまた訪問の予定を立てなくてはね。」
「はい。」
俺の人生は、順調に進んでいる。
《イヴァングside》
面倒だと思った。今日は俺に客が来るらしい。同じ年の少年で、神童だなんだともてはやされた良家のお坊ちゃんだ。
将来は俺の右腕、一番の臣下になるらしい。どうしてそんなに優秀なら兄につかないのだろう、第二皇子の俺なら操りやすいとでも思われているのだろうか。
城の窓から、城内に入って来る馬車が見える。あれに乗っているのが例のお坊ちゃんだ。名前は確かレオンハルトといったか。
降りてきたその少年を見たとき、俺は思わず息を呑んだ。
あれは天使だ。そう思った。
すぐに違うと思いなおした、あいつだってどれだけ綺麗な見目をしていても俺を利用する気なんだ。みんなそうだ。
あいつが挨拶をしてきた。やっぱり天使のようだったけど、腹の中では何を考えているか分かったものではない。
適当に俺が飲みたかった紅茶を頼みあいつを見る。ニコニコ笑っている。ご機嫌とりなんかしなくていい。
鈴の鳴るような声であいつは俺に手合わせを申し込んできた。何を考えているのかさっぱりわからない。
結果として俺は惨敗だった。一撃も食らわせられなかった。剣術は兄弟の中でも俺が一番なのに、それでも勝てなかった。悔しい。
あいつは笑っていた。心底嬉しそうな笑みだった。綺麗だと思った。
やっぱりあいつは天使だった。
また会いたいと思った。だから再戦を申し込めばあいつは楽しそうに笑った。
どくりと心臓が音をたてる。そわそわして落ち着かない。
ああ、これは、何という感情なのだろう。
「レオンと、呼んでもいいか。」
「はい、もちろんです殿下。」
「俺のことはイヴァと呼んでくれ。」
「…公の場以外でなら。」
「敬語も使わなくていい。」
「わかった、イヴァ。これでいい?」
「…ああ。」
今日はいい夢が見れそうだ。
まず勉学に励んだ。勉強は大事である。苦労した俺が言うんだから間違いない。
結果俺は十歳にしてこの世界基準で言う高校…高等部レベルの学力を持つこととなった。素晴らしい。
周りからは神童だともてはやされたが俺は謙虚だった。というか中身三十いくつのお兄さんなのだから当然である。
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俺は照れながらも謙虚だった。性格も美しくなろうと決意したのである。驕れるものはみな滅びるのだ。
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俺にとって第二皇子は主人、つまり上司である。粗相は許されない、心証が悪くても駄目だ。すべては俺の出世街道のため。第一印象は良くあるべきだろう。
ここは皇族の方々の住む城。客室でその時を、今か今かと待っていた。
「レオンハルト様、第二皇子殿下が参られました。」
侍女が俺を呼ぶ。いよいよ決戦の時──!
「わかった。すぐに行くよ。」
第二皇子、イヴァング・アルス・ローライズ。俺と同い年の金髪隻眼の美少年である。
絵画でしか見たことがなかったがこれは…
「皇子殿下、お初にお目にかかります。レオンハルト・アルム・スティルヤードと申します。以後お見知りおきを。」
丁寧に、優雅に、華やかに。ゆっくりと頭を下げ自慢の澄んだ声で挨拶をする。さあ皇子、どう来る──?
「…イヴァング。」
えっ。
「いつまでそこに突っ立っている。茶会をするんだろう、移動するぞ。」
な…俺の挨拶に対しての反応がそれだけか!?いくら同性とはいえ息を呑むくらいしても罰は当たらないぞ?
「はい、皇子殿下。」
しかし俺は良い子なのでそんな思いは態度に出さず、しずしずと皇子の後ろについて行く。
これからの予定は簡単で、父様たちの用事が終わるまで庭園で皇子と茶をしばきお喋りするだけだ。
所詮ついでなのだ、この顔合わせは。
「紅茶の好みはあるか。」
ぶっきらぼうな口調で皇子が問うてくる。もてなす気はあるんだな。
「では皇子殿下のおすすめを頂けますか?」
「…おい、ディンブラをアイスティーで。」
皇子はこれまた不愛想に、控えている召使いへ指示を出す。アイスティーか、暑いからちょうどいいな。
「ありがとうございます、皇子殿下。」
「その皇子殿下と言うのをやめろ。」
横暴そうなやつ…まあこの年頃なら可愛いものである。
「わかりました、ではイヴァング殿下とお呼びしても?」
「…それでいい。」
イヴァングは少し襟足の伸びた金髪につり目の少年だった。俺の方が正統派皇子みたいな髪型してるな。
絵画よりもきつい印象を受けるのはにこりとも笑わないからだろうか。絵画も笑ってなかったけど。
「こうしてイヴァング殿下とお茶ができて嬉しいです。僕、この話を聞いてからずっと楽しみにしていたんですよ。」
とりあえず媚びを売ろう。少しでも親しくならねば…!
「そうか。俺は正直億劫だったがな。」
はあ???なんだこいつ喧嘩売ってんのか?買いたいが我慢だ。ビークール俺。
「そうでしたか…貴重なお時間を頂いてしまって申し訳ありません。せめて少しでもイヴァング殿下にお楽しみいただけるよう、がんばりますね。」
「お楽しみね…はあ。」
溜息つきやがったぞこいつ!
「殿下、何か趣味はございますか?」
まずは趣味だな、話が合えば儲けものである。
「…別に。」
はあ~??なんだこいつ傲岸不遜にも程があるぞ?
「そうですか。僕は最近剣術の稽古に精を出しておりまして、これがまた面白いのですよ。」
こうなったらこちらのペースに乗せてやるまで…!
「へえ。…それで?」
「…僕とお手合わせ願えませんか、殿下。」
ボッコボコにしてやるよ…。この俺を煽ったこと、後悔させてやる!!
なんとか殿下にご了承いただき、木でできた訓練用の剣で相対する。
審判には殿下の護衛騎士にやってもらうことにした。
「それでは両者構えて、止めと言ったらすぐに剣を手放すように。…開始!」
「はあ!」
先手必勝、斜め上から斬りかかる。殿下はすぐさま防御し、そのまま圧し切るように剣を薙ぎ払った。
右、左、右、右。連続で斬りかかるも全ていなされる。この皇子、強い…!
「中々手強い…流石は殿下、素晴らしい腕前ですッね!」
言い終わる前に殿下は真上から斬りかかってくる。このガキ…!
フェイントをいれつつリズミカルに剣を振り、回転し遠心力を使い威力を上げる。
隙ができればそこに突きを放ち、受けきれなかった殿下の手首に一撃叩き込む。
…剣が殿下の手を離れた。
「そこまで!」
審判が止めに入る。やったぜ!俺の勝利だ!
「…フン。」
そっぽを向いた殿下は若干涙目だ。やりすぎたか?だが…
「ふ、ふふふ、あははは!やった勝った!」
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「殿下、久々にいい勝負が出来ました、楽しかったです。ありがとうございました!」
これは事実だ。強すぎた俺はそんじょそこらの同年代とでは勝負にならなかったのである。
「…そうか。まあ、なんだ、またやってもいい。つ、次は、勝つ。」
…一丁前に悔しいらしい。なんだ、意外と素直な奴じゃないか。
「ええ、ぜひまた手合わせしましょうね。僕も腕を磨いておきます!」
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「はい、最初は不安でしたが仲良くなれました。また会う約束もしたのですよ。」
「そうか、それはよかった。ではまた訪問の予定を立てなくてはね。」
「はい。」
俺の人生は、順調に進んでいる。
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面倒だと思った。今日は俺に客が来るらしい。同じ年の少年で、神童だなんだともてはやされた良家のお坊ちゃんだ。
将来は俺の右腕、一番の臣下になるらしい。どうしてそんなに優秀なら兄につかないのだろう、第二皇子の俺なら操りやすいとでも思われているのだろうか。
城の窓から、城内に入って来る馬車が見える。あれに乗っているのが例のお坊ちゃんだ。名前は確かレオンハルトといったか。
降りてきたその少年を見たとき、俺は思わず息を呑んだ。
あれは天使だ。そう思った。
すぐに違うと思いなおした、あいつだってどれだけ綺麗な見目をしていても俺を利用する気なんだ。みんなそうだ。
あいつが挨拶をしてきた。やっぱり天使のようだったけど、腹の中では何を考えているか分かったものではない。
適当に俺が飲みたかった紅茶を頼みあいつを見る。ニコニコ笑っている。ご機嫌とりなんかしなくていい。
鈴の鳴るような声であいつは俺に手合わせを申し込んできた。何を考えているのかさっぱりわからない。
結果として俺は惨敗だった。一撃も食らわせられなかった。剣術は兄弟の中でも俺が一番なのに、それでも勝てなかった。悔しい。
あいつは笑っていた。心底嬉しそうな笑みだった。綺麗だと思った。
やっぱりあいつは天使だった。
また会いたいと思った。だから再戦を申し込めばあいつは楽しそうに笑った。
どくりと心臓が音をたてる。そわそわして落ち着かない。
ああ、これは、何という感情なのだろう。
「レオンと、呼んでもいいか。」
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「俺のことはイヴァと呼んでくれ。」
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えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
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