田舎生活 ~農業、海、山、そして異世界人!?~

蛍 伊織

文字の大きさ
25 / 43
第一部 

お前の気持ちはわかった。

しおりを挟む
「俺達は一旦家に帰る。準備しなきゃいけないことがあるし。明日、満田の家で落ち合おう。」

満田と公爵を説得しに行くことが決まると、牛田と玉崎、鳥飼の3人は慌てるようにして屋敷を出て行った。

「夕食ぐらい食べて行けばいいのに。」

それに準備って何をする気だ?

・・・まぁいいか。俺も今日の内にやっておかないといけないことがあるし。騒ぐ奴らがいないのは好都合だ。

食堂へと戻った。そこにはリリーナ、ユイ、プリムが残っている。クラウスさんは夕食の準備、婆ちゃんは部屋に行ったようだ。

俺が今日やらないといけないこと、それは・・・。


深呼吸をしながら目を閉じる。そして意を決しある人に声をかけた。


「ユイさん、お話しがあります。」

「・・・なんだ。」

「その、ここではちょっと。どこか2人で話せませんか?」

ユイはしばらく無言で俺のことを見ていた。そしておもむろに顎を動かし、『こちらに来い。』と合図をする。

黙って後ろを付いて行くと、そこは彼女の部屋だった。

「カギをかけろ。」

中に入ると部屋の鍵をかけるよう命令された。その通りにする。鍵のかかった部屋で女の子と2人っきり、普段であればドキドキする状況だが、今は別の意味で緊張していた。





「・・・ごめん。」



頭を精一杯下げ、声を振り絞る。

「俺、ユイさんと話をした日の夜、リリーナさんを手伝うってことを決めたんです。すぐに言えばよかったんだけど、今日まで内緒にしてました。本当にごめんなさい。」

殴られるのは覚悟の上だった。ユイも俺が協力してくれると思ったからあんな話をしたんだと思う。でも、俺はリリーナの考えに賛同した。

「・・・・。」

「・・・・。」

ユイは無言のままで、その手も動くことはなかった。

どのくらいの時間が流れたかわからなかったが、ユイは「はぁ。」と大きなため息をついた。

「・・・つまり、お前は私ではなく姫様を選んだと言うことか。」

その声は怒っているわけではなく、どこか寂し気に聞こえる。予想外だった。

「いや、その。リリーナさんとユイさんのどちらかを選んだつもりはなくて・・・。」

「でも、姫様と一緒に畑をやっていくんだろう?」

「ええっと。それはそう、なんですが。リリーナさんとだけじゃないです。プリムやクラウスさん、そしてもちろんユイさんともやっていきたいんです。」

「・・・。」

俺は話している内に胸の奥から何か熱いものが込み上げてくるような気がした。

「俺はこの1ヶ月が本当に楽しかったんですよ。うっかりユイさんに触って殴られる、プリムがしてくるイタズラに驚く、リリーナさんにからかわれる。そんな毎日をこれからもずっと送りたいって思ったんです。」

「そんな生活でいいのか?」

ユイは俺の目を真っ直ぐ見ながら聞いた。俺は「もちろん。」と頷く。

「俺は前の仕事をしている時は会社と家をただ往復するだけ。辞めてここに帰って来てからもご飯が食べられればいいって言う軽い気持ちで婆ちゃんの手伝いをするだけだった。でも、今は違うんです。」

頭の中をこの1ヶ月間のことが駆け巡る。朝、リリーナの「おはよう。」という挨拶。昼、一緒に汗を流して働くユイ。夜、楽しそうにご飯を食べるプリム。

異世界がリリーナ達を必要としているのはわかる。でも、俺もみんなを手放したくないんだ。

「俺はこの田舎で農業をやります。でも、リリーナさんだけを選ぶんじゃありません、ユイさんも、プリムも、クラウスさんも。みんな一緒に、『家族』としてやりたい。」

―――――
自分の気持ちを洗いざらいぶちまけた。呼吸をするのも忘れていたのか息苦しい。俺は深呼吸をしながらユイの反応を待っていた。

彼女はしばらく俺をじっと見ていたかと思うと、小さく何かつぶやいた。

「え!?す、すみません。聞こえませんでした。もう一回言ってもらえませんか?」

「な、なんでもない!!」

ユイは頬を赤く染め、そっぽを向いてしまう。

「と、とにかく!お前の気持ちはわかった。」

その言葉を聞いて俺は胸のつかえが取れた気がした。

「そこまで言うなら真剣にやるのだな。姫様の足を引っ張らないように。」

俺は「わかりました。」と言いながら力強く頷く。

「まぁ、私の方は元の世界に帰る方法を見つけたしな。姫様にはゆっくり考えて結論を出してもらうさ。」

「え!?い、いつの間に。」

「ふふ、簡単なことだ。明日、公爵から奪い取ればいいのだ。」

ユイは剣を強く握りしめながらこっちを向き、ニヤッと笑った。

――――――
「話は終わった。さっさと部屋を出ていけ。」

どこか楽し気に俺を部屋から追い出すとユイは扉をパタンと閉めた。

「あぁ、緊張した。告白するわけでもないのに。夕食はまだのようだから、ちょっと部屋に戻って休もう。」

自分の部屋の扉を開ける。中は窓が開いていて気持ちのいい風が入り込んでいた。

「あれ?開けっ放しにしてたんだっけ。・・・まぁいいか。」

ひと眠りしようと思いベットを見る。すると何故かシーツがこんもりと盛り上がっており、中で何かがモゾモゾと動いていた。

なんだ?

恐る恐る手を伸ばし、一気にはぎ取る。中から現れたのは体を隠そうと縮こまるプリムだった。

「むぅ、雄太を驚かそうと思ったのに。」

「いや、バレバレだったから。」

本当にあれで隠れているつもりだったのだろうか。プリムはベットの真ん中に座るとこちらを見て「エヘヘ。」と笑う。

「何だよ。」

「雄太、一緒に寝よ?」

「ぶほっ。ゴホッゴホッ。い、いきなり何を言ってるんだ。そんなことできるわけないだろ。」

「できるよぅ。ほら、あなたぁ、こっちへいらっしゃい。」

そう言ってベットの左半分を開けて寝ころび、右手でここだよと言わんばかりにポンポンと叩く。

「こらっ。」そう言って俺はプリムの頭にチョップする。「あうっ。」という声とともにプリムは頭を押さえた。

「子どもが大人をからかっちゃいけません。」

「いたぃ。プリム、もう大人だよ。」

「はいはい。後10年もしたら大人だよ。まったく、仕込んだのは婆ちゃんか?それとも・・・。」

「雄太!」

こっちを見ろ、というようにプリムは俺の名前を呼ぶ。

「何だよ。」

嫌々ながら振り向いた俺に真剣な顔で言う。

「雄太、明日はボクも行くからね。」

なんだ・・・、お前それを言いに来たのか。置いて行かれるとでも思ったのだろうか。

「ああ、もちろんさ。プリムは魔法使いなんだろ?困った時は助けてくれよ。」

プリムは顔を二カッとさせると「おう!任せとけ!!」と言ってベットを飛び降りた。

「雄太、頑張ろうね!」

そして俺の部屋から走り去って行く。

やれやれ、本当に子どもだなぁ。

そしてベットへ転がり、いよいよ寝ようとしたところである物がないことに気づいた。

「ふ、布団がない!?プリムのやつか。」

部屋のどこを探しても掛布団は見つからない。

「プリム、どこだ!?」

布団を取り返そうとプリムを追いかけて屋敷を走り回る。プリムは見つかると「ここまでおいで!」と言い笑いながら逃げ回っていた。

そうこうしている内にクラウスさんの「夕食の準備ができましたよ。」という声が1階から聞こえて来るのだった。

―――――
「くそ、眠れなかった。」

「残念だったね、雄太。」

「お前、後で覚えてろよ。」

食堂に入るといつも以上に力の入った料理が数多く並んでいる。クラウスさんがお茶の用意をしながら言った。

「明日は決戦ですからな。みなさま、思い残すことがないようお腹いっぱい食べてください。」

「クラウスさん、縁起でもないですよ。」

「そうですよ。クラウス。勘違いしてはいけません。私たちは説得に行くのですから。」

「・・・姫様、『まさか公爵を痛めつけるチャンスが来るなんて!』と喜んでいるのが顔に出ております。」

「あら、そう?ふふっ。」

リリーナの顔は、今まで見た中で一番邪悪な笑みを浮かべていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...