【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

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組織の調査2

オーダーメイド

ヒサメとローザの話合いは当の本人抜きで速やかに終わり、温泉の山を賜ることとなった。
「温泉は掘ってからお渡ししますのでご安心下さい。何か他に必要なものがあればいつでも黄金の国にご連絡下さいね。」
「ありがとうございます。」
もはや、山なんてもらえないと言える雰囲気でもなく私はお礼を言い続けた。
目覚めてから数日後には一度白銀の国へと移動することになり、ローザに別れを告げた。
白銀の国では療養とシグレの特訓が待っている。
毒蛇の毒の研究も、アサヒの花の解毒薬の研究も同時に遂行されている中、私も魔法を強化しなければならない。


白銀の国に到着し、リハビリがてらビルの元へと向かうと、とても心配された。
「リビさん、何があったんですか?」
泣きそうな顔で聞くビルに人命救助でちょっと無茶をしたとぼやかして伝えると、ビルの水魔法が傷だらけの私の手を包み込んだ。
「こんなに痛そうな傷初めて見ました。私の魔法じゃ自然治癒を少しだけ早めることしかできませんが、させて下さい。」
ビルの水は心地よく、痛々しいその亀裂を清めてくれた。
「泉の谷の精霊様の泉なら、もっと治りが早くなるかもしれませんよ。」
あらゆる外傷を癒してくれる泉の谷の精霊様だが、何故だか私は、この亀裂が治るとは思えなかった。


ビルにお礼を言ってボタンと共に自室に戻ると、私は肌が見えないようにスカーフを巻くことにした。
普段から長袖長ズボンではあったし、首と頬の傷さえ隠せれば周りもそれほど気にならないだろう。
ふと、ベッドを見るとソラがぐっすりと眠っている。
黄金の国近くの町から、白銀の国へと戻るまでの道のりはそれなりに長い。
黄金の国へと向かうときよりも速度を上げたから、疲れるのは当然だ。
だが、ソラは成長と共に飛行速度も上がってきている。
私が乗っているから遠慮している部分もあるから、振り落とされないように固定するベルトが必要かもしれない。
「あのボタンさん、黒羽鳥って手綱がありますよね。今までソラに乗る時手綱とか考えたことがなかったんですが、今後ソラのスピードが上がるなら手綱か、ベルトみたいなものが必要だと思っていて。売っているところがあれば、教えて頂けませんか?」
私の問いかけにボタンは頭を悩ませる。
「黒羽鳥の手綱でしたら、うちの武器屋でも取り扱っているんですが、さすがにドラゴンの大きさのものはないですね。というのも、そもそもドラゴンに乗っている人が世界的にも少ないので売っている人も少ないと思います。」
「他の種類のドラゴンでも少ないんですね。」
「確かに、ブルームーンドラゴンに乗っているのはおそらくリビさんだけです。ただ、それだけではなく他のドラゴンも希少でプライドが高い。なかなか人を乗せてくれないんですよ。」
ソラ以外のドラゴンに会ったことはないが、イメージとして人を乗せないというのは理解できる。
すると、ボタンが閃いたように声を弾ませた。
「良かったら作れるか聞いてみましょうか、ソラさんに乗るよう専用のベルト!」



ソラが起きてから、私とボタンとソラは、ボタンの実家である武器屋に来ていた。
「おや、ボタンじゃないか!リビさんもいらっしゃい!」
「今日も騎士の制服が決まってるなボタン!おお、ドラゴンくんとリビさんも一緒か!」
今日のボタンの両親は喧嘩しておらず、元気はつらつだ。
要塞の浄化の件でソラも白銀の国では顔が知れたらしく、ボタンの父はドラゴンくんと呼んでいるようだ。
ボタンがベルトの件を説明すると、ボタンの両親は自信満々な顔をした。
「アタシたちに任せておきな!今は依頼も落ち着いてるし、すぐに作れるよ。」
「おうよ、安全性に優れた逸品に仕上げるから、まずドラゴンくんのサイズを測らせてもらえるか?」
ソラがバンザイの姿勢で測られているのがかわいい。
胴回りや首の大きさ、羽の長さ、色んなサイズを確認している。
「これから先もドラゴンくんは大きくなるだろうからね。それなりにサイズ調整できるものに仕上げるよ。」
「そうだなぁ。ネコくんぐらい大きくなったらさすがに作り直しだがよ!あははっ。」
笑い合うボタンの両親は本当に仲が良さそうだ。
ネコくんとは、と思ってボタンを見ると説明してくれた。
「鉱石浄化の際に職人を送迎した猫又の魔獣がいたでしょう?あの猫又が付けていたベルトも両親が作っているんです。」
「あの大きなやつもお二人で作ってるんですか!?凄いですね。」
私が感嘆の声を上げれば、ボタンの両親はにこやかに答える。
「嬉しいこと言ってくれるねぇ。一応この店は、国王も御用達だからね!出来上がりを楽しみにしといておくれ。」
「安心安全、カッコいい出来に仕上げるからよ!来週また来てくれな。」



そう言われて武器屋を出たが、さすがに1週間は早すぎでは。
そう思ってボタンに聞いてみることにした。
「両親は、依頼された品をすぐに取りかからないと気が済まないタイプなんです。工程を分けて、それぞれの依頼を同時進行にこなしていく。だから父は、依頼を受けすぎてしまうこともよくあるんです。それで前回は喧嘩してましたしね。」
「そうでしたね。でも、それにしてもオーダーメイドですよ?1週間でできるものなんですかね?」
「大丈夫ですよ。腕が良くて速いって評判なんです。」
両親のことを話すボタンはどこか嬉しそうで、私も笑顔になる。
「キュキュ!」
「そうだね、楽しみだね!」



私たちは3人でご飯を食べて、城へと戻ってきた。
部屋に戻ろうとしていると、シグレがこちらへと歩いてくる。
「リビさん、ヒサメ様がお呼びです。」
「はい、分かりました。」
私が頷くと、何かを察したボタンがソラの手を繋いだ。
「ソラさん、お城探検しませんか?」
「キュ!」
ソラは頷くと、私とシグレに手を振ってボタンと歩いていく。
「ソラがいては駄目な話ですか?」
私の問いにシグレは真面目な表情のまま頷いた。
「今はまだ、知らなくてもいい話です。」
「そうですか。」
シグレに案内されたのは王の間の隣にある会議室だ。
以前ここで私は、ヒサメに異世界からきたことを告げたのだ。
扉をノックして、それから中へ入るとヒサメは一番奥の椅子に座っていた。
私が入ると後ろからシグレも部屋へと入り、鍵を閉めた。
ヒサメのすぐ近くの椅子へと座り、シグレは私の隣に立った。
「静寂の海でクレタ殿の体内から発見された毒を研究者の皆が調査していた。さらに今回、グウル国王が持っていた小瓶をこちらで回収し、同じく研究者に調査を頼んでいた。その結果、分かったことがある。」
ヒサメはどこか冷静を取り繕おうとしているようにも見えた。
その珍しい光景に、私も緊張感が高まっていく。
私の顔を一瞬見て、目を伏せるヒサメは徐に口を開いた。
「静寂の海での毒も、黄金の国の毒も、どちらにもブルームーンドラゴンの血液が検出された。」

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