【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

文字の大きさ
109 / 169
真実の追究1

覚悟

「私はハル。お嬢さんの魔法が強くなるまでずっと観察していたのよ。」

観察していたというのはどういうことだ。
私は恐る恐る思ったことを口に出していた。
「ストーカー、ですか?」
「ふざけたこと言ってないでさっさと行くわよ。お嬢さんを心待ちにしてるわ。」
「誰がです?」
ハルは私の話も聞かずにソラに話しかけた。
「ソラ、お嬢さんと私、二人乗せて飛べるかしら。」
「キュ。」
ソラが頷いたので、私は飛行用ベルトをソラに取りつけ始める。
「ソラ、痛いところない?」
「キュキュ!」
「良かった。苦しかったら、ここを緩めるんだよ。」
私が手前、ハルがその後ろに乗る。
すると、手綱をハルが掴んだ。
避難の目を向けると、ハルは何食わぬ顔をする。
「何よ、私の間にいるんだから落ちる心配はないでしょ。それに行先知ってるのは私。別に強く手綱を引っ張ったりしないわ。ソラ、行くわよ。」
ソラの体が浮かび上がり、ハルが指をさす。
「ここから東に進む。目指すは遠霧山えんきりやまよ。」
「キュ!!」
手綱がついていることで安心したのか、ソラは思いっきり速度をあげた。
その勢いで私は、後ろに体が持ってかれてハルの胸にぶつかる。
固い・・・。
背中を強く打ったが、壁かと思った。
「すみません。」
一応謝っておいたが、ハルは気にしている様子もない。
「そのまま大人しく寄りかかってなさい。飛ばすわよ。」
「キュ!」
ソラは何故かハルの言うことを聞いて速度を上げた。
ソラが警戒していない人なら安心かな。
私は固い背もたれに身を預けながら、乾かないように目を閉じた。


速度を上げたソラでも1日でたどり着ける場所ではないらしく野宿することになった。
闇魔法で有名な私は町の宿を取ることは厳しいだろうという見解の一致により今は森の中だ。
迷いの森ではないので、ここにはモンスターが出るはず。
ヒサメたちとともにいる時は心強かったが、今はそんな頼りになる人達はいない。
ソラも魔法が使えるし、私もそれなりに強くなったし大丈夫かな。
私は火を起こしているハルを見る。
過去が見える魔法ってことは、攻撃型ではない。
他にも魔法を持っていれば別だが。
身長はあるが、ヒサメほどの筋力はなさそうだ。
いや、獣人と比較するのは良くないか。
「ちょっと、体をジロジロ見るのやめてくれる?気が散るわ。」
「あ、すみません。ハルさんって戦えるのかなって思って。」
「あら、どこぞの王子様のように守ってほしいのかしら?あいにく私は、狼獣人ほどの戦闘向きではないわよ。」
そう言われて私は、やはり彼らに守ってもらってばかりだったなと痛感する。
私が安心して野宿出来ていたのは、ヒサメやボタンがいてくれたおかげだ。
はじめの野宿でもフブキとヒサメが一緒だったし、安心感しかなかったからこんなに心許ない野宿は初かもしれない。
「いえ、戦闘が不得意なら私が守ります。」
「へぇ、存外頼もしいじゃない。グウル国王を救う時も思ったけど、ちゃんと覚悟ができる人間なのね。」
ハルはそう言いつつ、パンを取り出して私とソラに渡した。
「どうも。ところで、ハルさんはどうしてグウル国王の解毒方法を知っていたんです?だいたい、私を観察していたってところから疑問が多すぎます。これから誰に会いに行くのかも聞かせてくれないし。」
矢継ぎ早にそう問えば、ハルはパンを齧る。
「お嬢さんは、私のことがどう見えているの?疑っている相手にのこのこ付いてくるようなお馬鹿には見えないけれど、かと言って私が安全であるという確証はなさそうじゃない。どういう見解を持って、私と一緒に来ようと考えたのかしら。」
「一つ目は、グウル国王の命を救う協力をしてくれたことです。あの場であなたの助言と魔法薬が無ければ、グウル国王は死んでいた。そうなれば、あらゆる状況が一変していたはずです。」
ソラは隣でパンをもぐもぐと齧っている。
「二つ目は、ソラがあなたを警戒していないからです。ソラは人を見る目があるので。」
そんなことを言えば、ハルは笑いだす。
「随分と勘に頼った回答だわ。それだけじゃ、私が安全かなんて分からないじゃない。そもそも、私があの魔法薬を持ち歩いていたのはグウル国王を助けるためじゃないわ。」

ハルは私をずっと観察していた。
それは私を待っている人がいるからで、口ぶりからして私の魔法が必要なのだ。

「私の魔法が弱いから、強くなるまで観察して待っていたということですか。」
「ええ、そうよ。自分で考えられて偉いわね。」
なんだかとても腹が立つ言い方だが、これは収穫祭のときにも思ったのだ。
「その嫌味な言い方は、私の闇魔法の魔力を上げるためですか。」
「収穫祭のときには、負の感情の増幅によって魔力を上げようと思ったわ。けど、思っていたよりあなたは恋に振り回されてくれなかった。あの騎士の坊ちゃんへの恋も、聖女への嫉妬も、お嬢さんにとっては魔力を上げるほどの感情が沸き上がるものではなかったの。恋や嫉妬に狂って、暴走する人間なら簡単だったのに。」

収穫祭のあのとき、私は私なりに傷ついたというのになんて言い草だろうか。
妖精であるツキがいてくれたから、私は落ち着きを取り戻したといえる。
決して、ヴィントさんへの想いが薄かったわけじゃない。

「本当にそんな人間なら、あなたは私を連れて行かなかったんじゃないですか。」

そんなことを言えば、ハルは口角をあげた。
「どうしてそう思うの。」
「こんなに長い期間、私の魔力が強くなるまで待っていたんでしょう?でも、あの魔法薬ならいつでも使えたはずです。私を言いくるめて魔法薬を飲ませ、私の魔法を使わせればいい。収穫祭で煽る必要はないし、さっさとあの場で連れて行くことも出来たはず。そうしないのは、魔力が高い低いだけではなく、私という人間を確かめる必要があったからではないんですか。」

魔法だけを使わせたいなら、どう考えてもまどろっこしいのだ。
いくらでも嘘をついて、さっさと誘拐して、強制的に魔法を使わせればいいだけだ。
そうしなかった理由がハルにはあるのだ。

「国王を救うとき覚悟があるかと聞いたり、覚悟の証を誇れとハルさんは言いました。そして先ほど、覚悟ができる人間だと。それが、ハルさんの中で重要なことだったのではないですか?」

それを聞いたハルは、私の頬の傷を指でなぞった。

「私は、信用の出来る人以外会わせたくなかったの。覚悟もないような女を利用するくらいなら、別の方法を探そうと決めていたのよ。けれど、あなたの過去を見て考えが変わった。ドラゴンを守った、竜人族の子供を救い、狼獣人の命を繋いだ。どれもこれもぎりぎりで、余裕なことは一度もない。あなたが持っていたのは、弱い魔法と覚悟だけ。このまま強くなってくれれば、何も問題はないと思った。」

ハルは酷い亀裂が入っている首まで指を動かす。

「静寂の海の人魚族、そして今回の黄金の国。やり方が大胆になっていることから、時が迫っているのだということに気づいた。だから、お嬢さんには予備として持っていた魔法薬を飲ませグウル国王の命を救ってもらった。あなたなら、絶対に魔法薬を飲んでくれると私には分かっていたのよ。ずっと、見ていたから。そしてそんなあなたなら、あの人に会ってほしいと思ったの。」
「だから、あの人って誰ですか。」

ハルは口許に指を当ててから、私の耳元で囁いた。

「私の大切な師匠、ヒバリ。」

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

アラフォー幼女は異世界で大魔女を目指します

梅丸みかん
ファンタジー
第一章:長期休暇をとったアラフォー独身のミカは、登山へ行くと別の世界へ紛れ込んでしまう。その場所は、森の中にそびえる不思議な塔の一室だった。元の世界には戻れないし、手にしたゼリーを口にすれば、身体はなんと6歳の子どもに――。 ミカが封印の箱を開けると、そこから出てきたのは呪いによって人形にされた大魔女だった。その人形に「大魔女の素質がある」と告げられたミカは、どうせ元の世界に戻れないなら、大魔女を目指すことを決心する。 だが、人形師匠はとんでもなく自由すぎる。ミカは師匠に翻弄されまくるのだった。 第二章:巷で流れる大魔女の遺産の噂。その裏にある帝國の侵略の懸念。ミカは次第にその渦に巻き込まれていく。 第三章:異世界で唯一の友人ルカが消えた。その裏には保護部屋の存在が関わっていることが示唆され、ミカは潜入捜査に挑むことになるのだった。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。