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革命編 六章:創造神の権能
大階段の再戦
しおりを挟む天界に存在する白い大陸に到着したウォーリス達は、そこに建てられた巨大な神殿へ訪れる。
そして創造神の権能を手に入れ世界を掌握する為に、『鍵』となるアルトリアとリエスティアを連れながら神殿の最奥まで歩み進んでいた。
その後背を守るように拠点の留守を任された側近アルフレッドは、妨害工作と偽装を用いて箱舟が天界に侵入した事に気付き、迎撃と襲撃の対応を行う。
しかしマギルスを筆頭としたエリクとケイルに神殿の入り口を突破され、武玄と巴等を含む五名によって追撃を妨害されてしまった。
そうして箱舟の安全を最優先で確保する為に、魔鋼で形成された黒い人形の群れを操る機械人間のアルフレッドの討伐が始まる。
その一方で、アルトリアを先導させているウォーリスとザルツヘルムは、長い階段を登り終えながらようやく神殿の入り口となる大扉の前まで辿り着いていた。
「――……ここが、入り口か」
「……この扉は……私の……」
ウォーリスは百メートルを余裕で超える意匠の凝った白い大扉を見上げ、僅かに微笑みを浮かべる。
逆にアルトリアは、その門の意匠と形状を見ながら記憶に存在する扉と重なる光景を思い出していた。
それはマシラ共和国で自身の魂で見た、輪廻へと繋がる白い扉。
全く同じ扉を現実の世界でも見てしまったアルトリアは、少なからず動揺を強めていた。
そんなアルトリアに対して、ウォーリスは声を向ける。
「さぁ、この扉を開けてくれたまえ。アルトリア嬢」
「……開け方なんて、知らないわ」
「そうかね? 私には、君がこの扉を見知っているように思えるのだがね」
「……ッ」
「まぁ、知らないと言うのならしょうがない。――……ザルツヘルム。『魂』と『器』を触れさせろ」
「ハッ」
開け方を知らないと言うアルトリアの言葉に、呆れるような吐息をウォーリスは漏らす。
そしてリエスティアを左腕で抱えたザルツヘルムにそう命じると、歩み寄りながら右手でアルトリアの左手首を掴んだ。
呪印を施されたアルトリアはその手を振り払おうとしたが、それも叶わずにザルツヘルムに強めの口調を向けられる。
「離して……!」
「無駄な抵抗は、御止めになった方がよろしいかと。……さぁ、『器』に触れてください」
「……ッ」
苦々しい面持ちを浮かべるアルトリアは、左腕を掴まれながら身体ごとリエスティアの傍まで近付けさせられる。
そして左手でリエスティアの身体に触れさせられた瞬間、二人の身体が再び黄金色の輝きを放ち始めた。
それに呼応するように、神殿の大扉も黄金色に輝き始める。
すると巨大な扉が緩やかに内側に動き始め、まるで主を迎え入れるように神殿の大扉が開いた。
それを見るウォーリスは、微笑みを強めながらアルトリアに視線と声を向ける。
「どうやら神殿は、創造神の帰りを歓迎してくれているようだ。……さぁ、案内を続けてくれたまえ」
「……ッ!!」
皮肉染みた声色でそう告げるウォーリスに、アルトリアは嫌悪の表情を強める。
そしてザルツヘルムは掴んでいた左手首を離し、再びアルトリアを先導させながらウォーリスと共に歩み始めた。
しかし次の瞬間、ザルツヘルムが何かに気付くように後方へ意識と視線を向ける。
同じようにウォーリスも何かに気付き、上機嫌だった様子から僅かに不機嫌そうな表情を浮かべた。
「……アルフレッドめ、敵の突破を許したか」
「ウォーリス様、ここは私が」
「……仕方ない。『器』を渡せ」
ウォーリスとザルツヘルムは互いに神殿まで近付いて来る敵の存在を感知し、アルフレッドがその役割を果たせなかった事を察する。
そしてザルツヘルムは抱えていたリエスティアの身体をウォーリスに引き渡すと、再び階段側へ戻った。
するとウォーリスは左腕にリエスティアを抱えたまま、前に立つアルトリアの右腕を掴んで後ろ腰に回して拘束しながら歩かせる。
「ク……ッ!!」
「私達は、先に進むとしよう。――……ザルツヘルム。ここは任せたぞ」
「はい」
後ろに右腕を回したまま歩かされるアルトリアと、それを強制するウォーリスは、大扉の奥に進んでいく。
すると二人がある程度の位置まで先を歩むと、自然と大扉が閉まり始めた。
それを背中を向けて見送るザルツヘルムは、階段の下から近付いて来る見知った気配に意識を集中させる。
すると凄まじい速度で長い大階段を駆け上がる青い光を目にし、左腰に携えた黒い刀身の長剣を引き抜いた。
そして階段を飛び降りるように駆け下りるザルツヘルムは、下から迫る青い光と衝突する。
そこで再びザルツヘルムが対峙したのは、一番に正面門を突破したマギルスだった。
「――……少年っ」
「――……悪魔のおじさんっ!!」
二人は互いに長剣と大鎌の刃を衝突させ、凄まじい衝撃を周囲に生み出しながら激突する。
そして互いに拮抗した衝突の直後、相手の腹部に左脚を放ったザルツヘルムだったが、それをマギルスは回避しながら飛び退いた。
マギルスは身を翻しながら階段に着地し、腰を僅かに落としてザルツヘルムを見上げる。
逆にザルツヘルムは真っ直ぐに身体を伸ばした後、右手に握る長剣を構えながらマギルスを見下ろした。
互いに鋭い眼光を向け合いながら構える二人の耳に、大扉が閉まる音が聞こえる。
それを聞いたマギルスが、僅かに眉を顰めながら問い掛けた。
「ちぇっ、もうちょっとで追い付けたのになぁ」
「そのようだ」
「アリアお姉さんと、リエスティアって人。神殿の奥に入ったの?」
「そうだ」
「じゃあ、僕も入っていい?」
「残念ながら、それを許せる立場に私はいない」
「ま、そうだよね。――……じゃあ、同盟都市での決着。今度こそ付けようか」
「それも残念なことだが――……君では、私の命まで届かない」
「やってみないと、分かんないよ!」
そうした言葉を向け合った後、互いの身体が異質な色を帯び始める。
ザルツヘルムは再び身に巣喰わせる下級悪魔達と瘴気を混ぜ合わせ、騎士のような黒い武具を形成しながら身体を覆い始めた。
しかし顔を覆う甲冑の隙間から、マギルスが前回とは異なる変化を見せ始めている事に気付いた。
それはマギルスが新たに身に着けている魔鋼の装備であり、衣のようになっていた表面部分が徐々に青い鱗鎧となって変化していく。
更に襟首が変化しながら青い髪を覆うように頭装備となり、更に正面の顔を覆うように仮面が付けられた。
前回とは異なる形状の鎧を身に纏い始めるマギルスの様子に、ザルツヘルムは訝し気な視線を送る。
そして互いに変化させた装備を身に着けた後、マギルスは大鎌を軽く回しながら絵を階段に付けて言い放った。
「――……ねぇねぇ。僕の新しい装備、格好良いかな?」
「……まさか、その装備に使われている素材……。……魔鋼?」
「正解!」
「この短時間で、魔鋼で作られた装備とは。――……だが、例えどれだけ頑強な装備であっても。中身を叩けば問題にはならない」
「やってみたらいいよ。――……でも今度は、僕が勝つもんねっ!!」
「ッ!!」
そう言い合いながら互いに上下の階段で構えた後、次の瞬間には階段を走る黒と青の閃光が衝突する。
すると互いに大きく左右に別れて吹き飛んだ後、ザルツヘルムは階段へ着地しながら踏み止まり、マギルスも逆側の階段に着地しながら踏み止まった。
そして暇も与えぬように、二人は武器を振るいながら距離を詰めて飛び掛かる。
「やぁああッ!!」
「……ォオオッ!!」
互いに武器に溜めた瘴気と魔力の斬撃が放たれながら、武器の力場が交わり弾ける。
しかしその余波を諸共しない二人は、互いの武器を衝突させながら階段を飛び交う黒と青の光となって攻防を続けた。
それから数分後、同じく神殿の大階段を走り登るエリクとケイルは、その遥か上で戦いマギルスとザルツヘルムの強い気配を確認する。
そこが頂上付近であり、ウォーリス達に追い付き始めている事を二人は察した。
「――……マギルスの奴、追い付けたのか……!?」
「……アレは、マギルスと戦っていた悪魔だ。……ウォーリスはいない」
「じゃあ……」
「悪魔を置いて、神殿の奥へ向かったんだ。……アリアも連れて……!」
「……エリク、最初はマギルスと戦ってる悪魔野郎を倒すぞ!」
「!」
「ウォーリスと戦うには、三人が揃ってなきゃ駄目だ! 一人でも欠けるわけにはいかない!」
「……分かった!」
エリクとケイルは階段を駆け跳びながらそう話し、ウォーリスを倒す為にマギルスと戦う悪魔騎士ザルツヘルムの討伐を目的に定める。
そして互いに抱える武器を右手に持ち、階段を登りながらザルツヘルムまで迫ろうとしていた。
こうして巨大な神殿の大扉まで辿り着いたエリク達は、悪魔騎士ザルツヘルムと対峙する。
悪魔化したザルツヘルムの実力は未来で戦った悪魔を超える強さを持ち、更に数多の命を貯蓄として持つ状況は、ウォーリスの次に難敵と定めるに十分な相手だった。
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