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革命編 六章:創造神の権能

退路なき道へ

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 敵拠点である黒い塔に侵入した元七大聖人セブンスワンのシルエスカとバリスは、他の三名と別れてアルフレッドの討伐を目指す。
 その途中に三体ふくすう機械人間アルフレッド達に襲われ、バリスにその場を任せながらアルフレッド本人を探すべく上層へ向かおうとしていた。

 そうした一方、別の方角に向かっていた武玄ブゲントモエも、同じく二体の機械人間アルフレッドに奇襲を受ける。
 二人はそれを見事に回避してみせると、そのまま機械人間アルフレッドと対峙しようとした。

 しかしその折に、武玄ブゲンは隣に立つトモエへ声を向ける。

「――……機械人間やつらの相手は、儂がする」

「!」

トモエ、お前は機械人間アレを操る絡繰師ものを探し出せ。……先程の意趣返しだ」

「……分かりました」

 武玄ブゲンの言葉を聞いたトモエは、僅かに瞳を細めながらも反論を挟まずに応じる。
 そして身構える姿勢を戻して立たせたトモエに対して、武玄ブゲンは目にも止まらぬ抜刀から巨大な気力斬撃ブレードを放った。

「月の型、『弦月げんげつ』っ!!」

『!』

 淀みの無い動作から繰り出され流れるように放たれた長刀から、凄まじい剣圧を含んだ気力斬撃が機械人間アルフレッドの二体を襲う。
 それにより吹き飛ばされながら魔鋼マナメタルの壁に叩きつけられた機械人間サイボーグ達の隙を突き、トモエは別の通路まで走り向かった。

 そして武玄ブゲンはその場に残り、そのまま立ち戻る機械人間アルフレッド達に声を向ける。

汝等うぬらの相手は、儂じゃ」

『……一体でも追い込まれた貴方が、我々を相手にして勝てるとでも?』

「斬るのは難しかろう。だが、耐えるだけなら朝飯前だ」

『その強がり、いつまでたもてるか。――……見せて貰おうっ!!』

「ぬぅっ!!」

 二体の機械人間アルフレッドは両腕と両足の射出口を開き、接近戦ではなく中距離での魔力砲撃で仕留めようとする。
 それを気力斬撃ブレードで逸らし受け斬る武玄ブゲンは、瞬く間に距離を詰めながら一体の機械人間アルフレッドに近付いた。

 その機械人間アルフレッドは左腕を翳し向けたようとした瞬間、武玄ブゲンはその左手の方向からブレるように姿を掻き消す。
 それに僅かな驚きとして人工皮膚の表情に浮かべる機械人間アルフレッドは、左腕の肘部分に強烈な剣撃を受けた。

『なにっ!!』

「同じ手段は喰わん」

 左手に備わる転移機能じゅつで武器を奪われなかった武玄ブゲンは、懐に飛び込みながら左手に長刀を持ち替える。
 すると機械人間アルフレッドの左腕を自身の右腕で包むように掴み取り、脇を固めて背を仰け反らせた。

 それにより、武玄ブゲン機械人間アルフレッドの左腕を逆方向に曲げながら肘関節を外して見せる。
 トモエと同じ手段で機械人間アルフレッドの動きを封じ込めようとする武玄ブゲンに、二体目の機械人間アルフレッドは両腕を向けながら魔力砲撃を放った。

 それを察知しながら瞬く間に退いた武玄ブゲンは、身を翻しながら右手に長刀を持ち直す。
 すると左腕を外された機械人間アルフレッドは魔力砲撃を浴びながらも、その衣服や人工皮膚が焼け落ちるだけに被害は留まった。

 しかし関節技が今も有効だと確認した武玄ブゲンは、身体を立たせながら長刀を向ける。

トモエほどに上手くは出来ぬが、同じ事をやれば完封できような」

『……忘れたか? その気になれば、お前と共にこの義体からだを自爆する事はできる』

「なら、やればいい」

『!』

「ここは汝等うぬらの居城《ほんまる》。己自身の命と共に居城ここを破壊し儂等を倒すというのであれば、うぬの覚悟を天晴あっぱれと褒められよう」

『……ッ』

「儂もトモエも、既に命を賭す覚悟は終えている。――……だがおぬしに、おのが身を賭す戦いに身を投じる覚悟が無いのなら。それは児戯にも等しき幼稚さよな」

 武玄ブゲンはそう告げながら挑発染みた煽りを向け、目の前の機械人間サイボーグ達を通して本体であるアルフレッドに戦う者の覚悟を問う。
 それを聞かされたアルフレッドは操る機械人間からだ側で感情の変化を明かさなかったが、その反論としてある言葉を返した。

『……生まれながらに恵まれた者が、言いそうな事だ』

「ぬ?」

『お前達のような人間は、自分が当たり前に持つモノを他人も当たり前に持っていると思っている。……だがソレは、誰もが持っているモノではない』

「……何の話だ?」

『お前達の覚悟など、我々にとっては児戯に等しい。そういう話だ』

「ならば、どちらの覚悟が上か――……根比べでもするかっ!!」

 互いに売り言葉へ買い言葉を向け合いながら、再び武玄ブゲン機械人間サイボーグの二体が激戦を開始する。
 バリスと武玄ブゲンは共に別の場所で戦闘を始めると、その衝撃は塔内部に響き渡るかのように伝わっていた。

 そして機械人間サイボーグを操縦者するアルフレッド本人を捜索する為に、先行するシルエスカとトモエは別々の場所から各室内や通路みちを探る。
 幾つかの扉を蹴破り室内を探ったシルエスカとトモエだったが、そこには人と思える姿や気配もなく、苦々しい面持ちを浮かべていた。

「――……本体は何処だ……!?」
 
「人らしい気配が無い……。……何処かに隠れ潜んでいるのか……?」

 互いに発見した階段を登りながらそう呟くシルエスカとトモエは、更に上層を見る為に走り続ける。
 しかしその途中、魔鋼マナメタルで形成された壁面がうごめくような変化を見せた。

「また人形か……!!」

内部なかにも出て来るとは……!」

 通過した魔鋼マナメタルの壁から顔の無い黒い人形達が這い出て来る光景を目にした二人は、破壊できぬ追跡者の出現に嫌悪染みた表情を見せる。
 そして壁から形成された人形達が床に足を着けると、そのままシルエスカやトモエを殺害する為に黒い人形達に追わせた。

 狭く限られた空間の中で黒い人形達を振り切る事が出来ないシルエスカとトモエは、前を塞ぐように姿を見せた人形達を自分の武器で吹き飛ばす。
 しかし次から次に現れながら出現する黒い人形達に包囲され、捜索の速度を大きく落としながら妨害され続けた。

「クッ、このままでは――……」

「先程の状況と、変わらなくなる……!」

 シルエスカとトモエは別々の場所で黒い人形達を退けながらも、その先に訪れる結末を予期する。
 破壊できない魔鋼マナメタルの人形達に包囲され、その操縦者であるアルフレッドを発見する前に自分達が討たれるのは、どうしても避けたい状況だった。

 そうして各々が自分達の役割を果たしていく中、テクラノスとその魔導人形ゴーレム達が死守する敵拠点付近に、ある人物が現れる。
 彼は凄まじい速さで駆けながら魔導人形ゴーレムと人形達の戦いをすり抜け、更に大きく跳躍しながら飛び越えて見せた。

 それを破壊した塔内部の壁面近くから見ていたゴズヴァールは、口元を僅かに微笑ませながら呟く。

「――……遅かったな」

 そうした言葉を向けるゴズヴァールに対して、人形同士の戦場を突破した一人の男が穴の内部に飛び込む。
 そして屈んだ姿勢を立たせながら、待っていたゴズヴァールに声を向けた。

「――……待っていたのか?」

「ああ」

「俺が来るとは、限らなかったぞ」

「いや、お前は必ず来る。……お前だけ寝て待つことなど、出来るはずがないと知っているからな」

「……そうか」

 ゴズヴァールはそう述べ、口元を微笑ませながら新たに現れたその男に期待の声を向ける。
 それを悪しからず思わない男は、完全に姿勢を立たせながら内部の方へ視線を向けた。

 そして鼻を動かし、ゴズヴァールに対してこう告げる。

「……全ての人形に、同じ匂いが染み付いている。――……その大元も、匂いで辿れる」

「そうか。ならば行くぞ、エアハルト」

「ああ」

 そう告げる男に外の光が身体を照らし、そこに銀色の髪と左腕の無い姿が浮かび上がる。
 彼は【魔王】の手によって箱舟ふねまで転移させられ、それから重傷だった身体を治療されていた、狼獣族エアハルトだった。

 恐るべき嗅覚を持つエアハルトは、人形達を操る者アルフレッド魔力においを正確に嗅ぎ分ける。
 そしてその魔力が集まる場所まで案内するように走り始め、それを追うようにゴズヴァールは共に走り出した。

 こうして黒い塔内部で戦いが繰り広げる中で、狼獣族エアハルトがゴズヴァールと合流する。
 そして人形を操るアルフレッドの討伐に参加する為、自身に雷を纏わせながら迫ろうとしていた。
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