1,237 / 1,360
革命編 八章:冒険譚の終幕
支配者の姿
しおりを挟むウォーリスが居る部屋へ訪れたアルトリアとケイルは、そこで互いに知りたい情報を聞く。
そこで自身の一族が攫われ死に至った経緯を聞かされたケイル激昂し、ウォーリスに殴り掛かった。
彼自身は報復を受け入れながらも、彼女の一族を攫った実行犯について情報を伏せる。
するとその実行犯が自身の母親であることを教えたアルトリアは、それを隠していた事も明かした。
しかし次の瞬間、事態は新たな異変を見せ始める。
それは『念話』を使う女性の声が全員に届き、更なる言葉を発し始めたことから始められた。
『――……あっ、聞こえてる? じゃあ、オーケーかな。じゃあ、次は……ここをこうしてっと……』
「……!?」
続く女性の『念話』がそう呟くと、次の瞬間には全員の正面にある映像が投影される。
それが各々の目の前に出現した事によって新たに驚愕を浮かべる中、その映像にある一人の人物が映し出された。
『念話』で話しているだろう女性は、周囲が白く見える場所に居ながら瓦礫らしき黒い金属の上に座っている。
その見た目は美しくも肌が白く、更に銀髪で紅い瞳を持つという珍しい様相をしていた。
するとその銀髪紅眼の女性は、投影された映像の向こう側で微笑みながら話し始める。
『おっ、これで映像も声もオーケーかな。――……初めまして、皆さん。私の名前は……あー、人間大陸ではなんて名乗ってたっけ? ログウェル』
『――……ほっほっほっ。確か、メディアじゃったかのぉ』
『あっ、そうそう。それだったけ』
「!?」
「この声は……本当にログウェル……!? いや、それより……まさか……っ!?」
「……姿は違うが、母上の声だ」
「!?」
映像に見えない角度ながらも、男性老人らしき声と銀髪紅眼の女性が話している会話が届く。
それに驚愕を見せるアルトリアだったが、同時に明かされた女性の名前と兄セルジアスの証言は、その場に居る全員を驚愕させた。
そしてケイルもまた、その声を聞きながら拳を握り締めて憤怒の表情を見せ始める。
「……間違いない。……コイツだ、アタシの一族を襲った奴は……っ!!」
「ケイル……」
怒りの表情を露にしながら投影されるメディアの姿を見るケイルは、薄れる幼い頃の記憶から仇敵の姿を思い出す。
それは美しく日の光に輝いて幼い視界を見え難くしながらも、確かに銀髪と赤い瞳を持つ相手と映像に映るメディアが重なって見えた。
しかしそうした驚きを見せる面々とは裏腹に、映像で見れるメディアは微笑みながら話を続ける。
『さて、じゃあ改めまして。――……私の名前はメディア。初めましての人もいるだろうけど、久し振りの人もいるだろうね』
「……!!」
『私が人間大陸に居ない間に、随分と楽しい事をやってたみたいだけど。――……正直に言って、君達人類にはガッカリしたよ』
「!?」
『何がガッカリって、この程度の事態も完全に解決できてないんだもん。これはガッカリというよりも、呆れ果てたって感じかもね。私からすれば』
「……何を、言って……」
『私はね、人類の可能性を信じてたんだ。君達だったら、この事態も自分達で解決してくれるって。だから魔大陸まで行って、天界に来ようとする魔族の到達者達も止めてあげてたのに』
「な……っ」
『でもまぁ、それもしょうがないかなって思うんだよ。人間は衰退し続けて弱体化してるし、魔族と比べても種族的にひ弱な存在になり過ぎてるから。……だったら、そんな人類がこの世界に居る意味ってある?』
今まで微笑みながら話していたメディアは、突如として声を低くしながら中性寄りの声を見せる。
その声には薄ら寒い雰囲気を漂わせ、更に微笑みを絶やして無表情で言葉を続けた。
『そんな人類に、昔話をしてあげよう。……昔々、創造神という神様がいました』
「!」
『創造神は神様として皆から慕われ、どの種族からも崇められる存在でした。……でも、創造神は絶望しました。皆と一緒に居ても、何も変わらなかったからです』
「……!!」
『絶望した創造神は、要らないと思った皆を地上へ捨てました。……そう。君達が居る、この世界に』
「この話……まさか、コイツも創造神の記憶を……!!」
『君達がいる世界は、創造神のゴミ箱というわけだ。……だけど、神様も誤算だったのかな。まさかゴミ箱に捨てたはずの皆が、そこで生き残ってるなんてね』
「……間違いない。創造神の記憶だわ……。……でも……!」
アルトリアとケイルは互いにメディアの話を聞き、それが創造神の記憶である事を理解する。
そしてメディアが創造神の話を語る中で、徐々に不穏さを強めながら次の言葉を聞いた。
『どうして創造神が皆を要らないと思ったのか、ずっと私は考えてたんだ。だから実際に、この世界に来て見たわけだけど。……それでようやく、創造神の気持ちを理解したんだよ』
「……コイツ……!!」
『永遠と同じ事ばかりを繰り返す存在って、確かにつまらないよね。……だから私は、創造神の代わりに要らない君達を消してあげようと思うんだ』
「!!」
『でもそれだと、ちょっと一方的かなとも思うんだよね。だから皆には、最後に機会《チャンス》を上げる。――……もし存在を消されたくなかったら、空に浮いてる大陸までおいて』
「……天界のことか」
『ここに来れた人達は、私と戦わせてあげる。そしてもし私に君達の存在意義を見せられたのなら、皆を消すのは止めてあげるよ』
「……皆を消す……? 何を、言って……」
『あぁ、そうそう。皆を消すっていうのはね――……こういう方法だよ』
「……!?」
メディアがそう告げた瞬間、大地と大気が震える程の振動が屋敷にいる彼等を襲う。
それに対して外が見える窓際に歩み寄ったアルトリアは、驚愕の表情と声を見せた。
「な――……なんですって……!?」
「おいっ!! いったい何が――……まさか、アレは……!?」
「……天界の、あの大陸の……砲撃……」
二人が見たのは、上空に浮かぶ天界の大陸から直下に放たれた、一本の細く見える光線。
それを見ながら事態を把握できずに呆然とする彼等に、メディアは映像越しに言葉を続けた。
『――……外に居る人は見えるかな? 下は海だし、出力も最低限に絞ってるけど。皆を消す時には最大火力で消し飛ばすから、そのつもりでね』
「どうなってんだよ……。なんで、天界がまた稼働してんだよ……!?」
「……創造神の権能」
「!?」
「アイツの持ってる権能が、天界をまた起動させた。……いや、出力を調整できてるってことは……もしかして循環機構も掌握しているの……?」
「な……っ!?」
「……そうか。創造神の大樹から生まれた『マナの実』は、リエスティアと同じ創造神の複製体でもあるんだわ……。……アイツには、肉体と権能が既に揃ってしまっている……!」
再び稼働を見せる天界の大陸を見上げながら、アルトリアはそうした予測を述べる。
するとそれを肯定するように、メディアは微笑みを見せながら声を向けて来た。
『どう? アルトリア』
「!!」
『君が苦労して止めようとした循環機構も、私は自由に扱えるんだよ。……だからこそ、ガッカリなんだ。私の娘なら、その程度の事は出来て当たり前だと思ってたし』
「……ッ」
『オマケに、敵になった相手にも情けを掛けまくったんだって? そういうところは、父親の遺伝子が混じっちゃった影響かな。でもダメだよ? 後始末はちゃんとしないと。こんな感じにね』
「……まさかっ!?」
メディアはそう注意しながら、自身が座っている黒い鉄屑に視線を落とす。
それを聞きながら映像を見ていたウォーリスは、その黒い鉄屑が何かを理解した。
するとメディアは微笑みを浮かべ、背中側に回していた左手を前に出し、黒い魔鋼で覆われた脳髄を掴み見せながら話を続ける。
『でも、君達も良い働きをしたと思うよ。私の娘を少しは成長させてくれたんだから。その点では、ちゃんと感謝してるんだ』
『――……ウォーリス様……』
「アルフレッドッ!? どうして本体を……!?」
メディアが座る鉄屑がアルフレッドの操っていた義体であり、その手に持たれているのが彼の脳髄である事をウォーリスはすぐに察する。
しかし次に見せられる映像は、アルフレッドを知るウォーリスやカリーナに精神的な衝撃を与えさせた。
『さぁ、これで君達の役割もお終い。アルフレッド君、最後に言い残したい言葉とかある?』
『……ウォーリス様。……貴方の友となれたこと、私の人生において、それが最も幸福の時でした。……どうかカリーナ様と共に、この化物から逃げてください……!!』
『……だ、そうだよ。ウォーリス君、ちゃんと聞けたかな? 彼の遺言。……それじゃ、長い間ご苦労様。バイバイ』
「まさか……や、止め――……ッ!!」
アルフレッドの脳髄を握りながら微笑むメディアを見て、ウォーリスはその先を予測し荒げた声を映像に向ける。
しかしその声は届かず、メディアはアルフレッドの脳髄を軽く投げ浮かせた。
すると次の瞬間、メディアは目にも止まらぬ速さの左拳を放ち、魔鋼で覆われているアルフレッドの脳髄を粉々に破壊する。
それを見せられたウォーリスとカリーナは目を見開き、白い地面に砕け散らばるアルフレッドだった脳髄《モノ》を見ながら唖然とした表情を浮かべるしかなかった。
それを一瞥することもないメディアは、再び映像に顔の正面を向けながら自分の娘へ声を向ける。
『さて、ゴミは増えたけど掃除は済んだことだし。アルトリア、君にも最後の機会をあげる。――……どっちが互いの欠片を手に入れられるか、そういう遊戯をしよう。だから君も天界においで。……もし十分以内に来なかったら、その時は世界を滅ぼすから。そのつもりでね?』
「……ッ!!」
そう言いながら微笑むメディアは、投影された映像と念話での声を途絶えさせる。
そして母親から名指しの勝負を挑まれたアルトリアは、両手で拳を作りながら歯を食い縛り、今まで以上の焦燥感を見せた。
こうして巫女姫の予測通り、事態は最悪を極める。
『マナの樹』から生まれた『マナの実』、それが人の形となり欠片を持ち扱えるメディアは創造神と同じ思想へ至り、この世界を滅ぼす道を選ぶ。
更に成長した娘の欠片を奪い取ることを目的とし、彼女を自分の元へと招いたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する
影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。
※残酷な描写は予告なく出てきます。
※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。
※106話完結。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。
【完結】回復魔法だけでも幸せになれますか?
笹乃笹世
恋愛
おケツに強い衝撃を受けて蘇った前世の記憶。
日本人だったことを思い出したワタクシは、侯爵令嬢のイルメラ・ベラルディと申します。
一応、侯爵令嬢ではあるのですが……婚約破棄され、傷物腫れ物の扱いで、静養という名目で田舎へとドナドナされて来た、ギリギリかろうじての侯爵家のご令嬢でございます……
しかし、そこで出会ったイケメン領主、エドアルド様に「例え力が弱くても構わない! 月50G支払おう!!」とまで言われたので、たった一つ使える回復魔法で、エドアルド様の疲労や騎士様方の怪我ーーそして頭皮も守ってみせましょう!
頑張りますのでお給金、よろしくお願いいたします!!
ーーこれは、回復魔法しか使えない地味顔根暗の傷物侯爵令嬢がささやかな幸せを掴むまでのお話である。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる