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11.スイート・キング5
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旅館に戻る前に、浄蓮の滝を見にいった。
有名な演歌の歌詞に出てくる、滝。
滝が落ちてくる崖には、木や草が生えていて、緑の中から水が出ているみたいに見えた。
「すごい迫力ですね」
「そうだな」
滝を背景にして、写真を撮った。
親切な人がシャッターを押してくれて、わたしと礼慈さんが、二人で並んでる写真を撮ってくれた。うれしかった。
滝から離れてから、撮ってもらった写真をスマートフォンで見た。
二人で笑ってる。いい写真だなと思った。
「こういうのって、自撮りで撮ればいいんでしょうか」
「そうなんだろうけど。君はともかく、俺はもういい年だから。それは、かなり恥ずかしい気がする」
「年は関係ないです。わたしも、無理です……。
歌穂と沢野さんだったら、自撮りしても、違和感なさそうですよね」
「いや。紘一は、案外シャイだよ。公の場では」
「そうなんですか? 意外です」
「前にも言ったけど。二面性があるんだよ。
俺に飛びついてくる時もあるくせに、妙に、よそよそしい時があったりする」
「そうなんだ……。そういう話を聞くと、歌穂に、すごく合ってる感じがしますね」
「合ってると思うよ。歌穂さんも、内面が複雑そうだから」
「そうです。なんで、わかるの?」
「本当に分かってるわけじゃない。俺の憶測だよ」
「歌穂のこと、好きでした?」
礼慈さんが、よろっとした。足もとは、平らなのに。
「なに。なんで?」
「だって……。歌穂は、美人だし。かわいいから」
「君たちの感性は、おかしい」
「えっ?」
「感性じゃなくて、認識と言いかえてもいい。
歌穂さんは、君のことを『絶世の美女』だと言いながら、自分は大したことがないような言い方をするし。君も、自分のことは認めないくせに、歌穂さんのことは手放しで褒めちぎる。
どうして、そんなことになったの?」
「え、えー? 歌穂、そんなこと言ってるんですか? やだー……」
「やだって、言われても。俺は、歌穂さんの意見に同意するけど。
歌穂さんだって、かなりきれいな顔立ちをしてるのに。どうして自分のことは、頑なに認めようとしないんだろうか」
「それは、もしかしたら……」
心当たりは、ないわけじゃなかった。
「なに?」
「わたしたち、何度も、面談に落ちてるんです」
「……落ちる?」
「えっと、つまり……。養子を探してる人たちや、里親になってくれそうな人たちと、何度も会いました。
でも、わたしも歌穂も、それには選ばれなくて……。たくさんの子たちを、二人で見送ってきました。
顔のことだけじゃなくて、わたしたちの生活態度とか、なにか……。そういう人たちに嫌われる要素が、あったのかなって」
「ないよ。ないって」
「……そうですか?」
「俺からしたら、二人とも、できすぎてるくらいだ。その若さで……」
「そう、ですかね……」
よくわからなかった。
夕ごはんは、旅館の外で食べた。
イタリア料理のレストランだった。おいしかった。
この日も、セックスをすることになった。
旅館に戻ってから、誘われてしまった。断れなかった。
断る気なんか、なかったけど……。
「二日連続、です」
「うん。いや?」
「ううん……」
「次の旅行は、紘一と歌穂さんと合同にしようかな」
「えっ?」
「トイレから戻ってきたら、拉致されそうになってた。心臓がもたない」
「ごめんね」
「君のせいじゃない」
ぜんぶ脱がされてしまった。礼慈さんも、裸になった。
キスをした。何度も。
わたしの体じゅうを、礼慈さんの手がなぞって、ふれてくる。わたしがここにいるってことを、自分の手で確かめようとしてるみたいだった。
「れいじさん、あん、……」
なるべく声を出さないようにしていても、声が出てしまう。
礼慈さんが、中から、わたしを揺さぶる。
すごく感じていた。
「だめ、もう……。いっ、いや……、あぁん」
いく時は、息が苦しかった。声を出さないように、がまんしていたせいかもしれない。
礼慈さんが、心配そうに見下ろしてくるのが、暗くてもわかった。
「苦しい?」
「……ううん。こえを、ださないようにって」
「大丈夫だよ。聞こえない」
「だと、いいけど」
「よかった?」
うなずいてから、「うん」と言った。
「よかった」
礼慈さんが吐き出した息が、わたしの体にかかる。
下から手をのばして、引きよせた。
「祐奈?」
「もっと、ぎゅってして」
「……うん」
ふたりで、ひとつのかたまりみたいになりたかった。
わたしの肌に、礼慈さんの指が食いこむ。少しだけ、痛かった。
この痛みを、ずっと覚えていたい。そう思った。
痛いほどの強さが、礼慈さんの愛情そのものだと思ったから。
有名な演歌の歌詞に出てくる、滝。
滝が落ちてくる崖には、木や草が生えていて、緑の中から水が出ているみたいに見えた。
「すごい迫力ですね」
「そうだな」
滝を背景にして、写真を撮った。
親切な人がシャッターを押してくれて、わたしと礼慈さんが、二人で並んでる写真を撮ってくれた。うれしかった。
滝から離れてから、撮ってもらった写真をスマートフォンで見た。
二人で笑ってる。いい写真だなと思った。
「こういうのって、自撮りで撮ればいいんでしょうか」
「そうなんだろうけど。君はともかく、俺はもういい年だから。それは、かなり恥ずかしい気がする」
「年は関係ないです。わたしも、無理です……。
歌穂と沢野さんだったら、自撮りしても、違和感なさそうですよね」
「いや。紘一は、案外シャイだよ。公の場では」
「そうなんですか? 意外です」
「前にも言ったけど。二面性があるんだよ。
俺に飛びついてくる時もあるくせに、妙に、よそよそしい時があったりする」
「そうなんだ……。そういう話を聞くと、歌穂に、すごく合ってる感じがしますね」
「合ってると思うよ。歌穂さんも、内面が複雑そうだから」
「そうです。なんで、わかるの?」
「本当に分かってるわけじゃない。俺の憶測だよ」
「歌穂のこと、好きでした?」
礼慈さんが、よろっとした。足もとは、平らなのに。
「なに。なんで?」
「だって……。歌穂は、美人だし。かわいいから」
「君たちの感性は、おかしい」
「えっ?」
「感性じゃなくて、認識と言いかえてもいい。
歌穂さんは、君のことを『絶世の美女』だと言いながら、自分は大したことがないような言い方をするし。君も、自分のことは認めないくせに、歌穂さんのことは手放しで褒めちぎる。
どうして、そんなことになったの?」
「え、えー? 歌穂、そんなこと言ってるんですか? やだー……」
「やだって、言われても。俺は、歌穂さんの意見に同意するけど。
歌穂さんだって、かなりきれいな顔立ちをしてるのに。どうして自分のことは、頑なに認めようとしないんだろうか」
「それは、もしかしたら……」
心当たりは、ないわけじゃなかった。
「なに?」
「わたしたち、何度も、面談に落ちてるんです」
「……落ちる?」
「えっと、つまり……。養子を探してる人たちや、里親になってくれそうな人たちと、何度も会いました。
でも、わたしも歌穂も、それには選ばれなくて……。たくさんの子たちを、二人で見送ってきました。
顔のことだけじゃなくて、わたしたちの生活態度とか、なにか……。そういう人たちに嫌われる要素が、あったのかなって」
「ないよ。ないって」
「……そうですか?」
「俺からしたら、二人とも、できすぎてるくらいだ。その若さで……」
「そう、ですかね……」
よくわからなかった。
夕ごはんは、旅館の外で食べた。
イタリア料理のレストランだった。おいしかった。
この日も、セックスをすることになった。
旅館に戻ってから、誘われてしまった。断れなかった。
断る気なんか、なかったけど……。
「二日連続、です」
「うん。いや?」
「ううん……」
「次の旅行は、紘一と歌穂さんと合同にしようかな」
「えっ?」
「トイレから戻ってきたら、拉致されそうになってた。心臓がもたない」
「ごめんね」
「君のせいじゃない」
ぜんぶ脱がされてしまった。礼慈さんも、裸になった。
キスをした。何度も。
わたしの体じゅうを、礼慈さんの手がなぞって、ふれてくる。わたしがここにいるってことを、自分の手で確かめようとしてるみたいだった。
「れいじさん、あん、……」
なるべく声を出さないようにしていても、声が出てしまう。
礼慈さんが、中から、わたしを揺さぶる。
すごく感じていた。
「だめ、もう……。いっ、いや……、あぁん」
いく時は、息が苦しかった。声を出さないように、がまんしていたせいかもしれない。
礼慈さんが、心配そうに見下ろしてくるのが、暗くてもわかった。
「苦しい?」
「……ううん。こえを、ださないようにって」
「大丈夫だよ。聞こえない」
「だと、いいけど」
「よかった?」
うなずいてから、「うん」と言った。
「よかった」
礼慈さんが吐き出した息が、わたしの体にかかる。
下から手をのばして、引きよせた。
「祐奈?」
「もっと、ぎゅってして」
「……うん」
ふたりで、ひとつのかたまりみたいになりたかった。
わたしの肌に、礼慈さんの指が食いこむ。少しだけ、痛かった。
この痛みを、ずっと覚えていたい。そう思った。
痛いほどの強さが、礼慈さんの愛情そのものだと思ったから。
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