デキナイ男と病気の女3

Yachiyo

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8 帰京

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弥生は約3か月ぶりの葵(ひとみ)からの電話に浮かれた

「葵(ひとみ)!久しぶりね。今ね病院の帰り道なのよ」

抗がん剤の事などすっかり忘れて元気に言った

「抗がん剤だったんでしょ?大丈夫?掛け直そうか?」

葵(ひとみ)が気遣うので

「タクシーだし、大丈夫よ」

すると葵(ひとみ)がおもむろに

「私さ、聖火リレー観たいのよ。確か東京走るコース、弥生ん家から観えるよね?」

勢い良く言って来た

その通り。東京の聖火リレーのコースは弥生のマンションの前の通りを走るのだ

「うん、うん。観える。観える」

弥生も興奮して言うと

「やっぱりね。じゃあその日に合わせて私東京いくわ!だから泊めてー」

「勿論オッケーよ。楽しみにしているわ」


羽田空港到着ロビー

弥生と和茂と隆史(たかふみ)はソワソワしながら辺りを見回す

葵(ひとみ)が帰京する日だ

「遅いわね」

弥生が腕時計をチラチラ見る

「そんなに焦るなよ」

和茂が落ち付き払って言う

すると大きなバッグを肩に掛けた金髪に白いスーツ姿の女が小走りに駆け寄ってきた

葵(ひとみ)だ!

スーツ姿とはおおよそ南の島からの帰京姿には似つかわしくないが流石、葵(ひとみ)様である

「ただいま!」

少し息が上がった様子で元気に言う葵(ひとみ)

「お帰り!葵(ひとみ)!」

満面の笑みで出迎える弥生

余りの嬉しさに葵(ひとみ)の変貌ぶりには誰も触れなかった

すると葵(ひとみ)の後ろから少し遅れて短髪に緑色の髪にエメラルドグリーンの瞳。鼻が異常に高い白人男が現れた

3人がキョトンとしていると

「与論で友達になったボブだよ」

その緑色の男の腕にしがみついて葵(ひとみ)が言う

「エッ?アノ、ソノ、ナイス、トゥ、ミーチュー」

弥生がおかしな口調で挨拶しながら引き吊った笑みで言うと

「大丈夫だよ。日本語喋れるから。ミュージシャンなんだ。与論のウチの店にバイトにきてるの。どうしても聖火リレー観たいって言うから連れて来ちゃった」

葵(ひとみ)が皆にあっさり紹介した。すると

「こんにちは。初めまして。ボブです」

流暢な日本語で自己紹介した

唖然とする一同

そんな事はお構い無しに

「何ボーッと吊っ立ってんのよ?早く弥生ん家行こうよ」

葵(ひとみ)が皆を誘導して空港の出口に向かう

すると突然、葵(ひとみ)が

「ちょっ!…ちょっと待って…」

弥生達を引き留めた

「どうかしたの?」

弥生が葵(ひとみ)の側に行くと

「お腹…お腹痛い」

急に腹部を押さえてしゃがみ込んだ

「大丈夫?葵(ひとみ)!しっかりして!」

弥生が葵(ひとみ)を抱き抱えると、額には冷や汗が流れていて顔色は真っ青。意識ももうろうとしている様子だ

弥生が倒れるなら分かるがどうして葵(ひとみ)が?
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