デキナイ男と病気の女2

Yachiyo

文字の大きさ
3 / 9

3 元サヤ

しおりを挟む

それから半年程、隼人は身を潜めるかの様に
「雅」で働きママと生活を共にしていた

強い雨が降る夜

カランコロン

店のドアが開くと、長い髪を雨で濡らしたトレンチコートの若い清楚な女の姿

「いらっしゃいませ」

と隼人が降り向いてハッとする

「恵っ!」

「やっと見付けたわ」

コートに付いた雨水をハンカチで拭きながら静かに恵が言った

「何でここが?…」

「お父様に頼んだのよ」

「もう俺の事は忘れてくれ」

「そんな事出来ないわ!  一緒に帰りましょう。私が悪かったわ」

隼人は黙ったまま考え込む。そもそも悪かったのは隼人の方である。しかも、ママにも相当世話になってしまった。今更帰る訳にはいかない

隼人がママを見るとママは小さく頷き、恵の方に顎先を向けてウィンクした

隼人は

「あ、有り難うございます!」

と、ママに思い切りお辞儀をすると荷物をまとめて恵と一緒にドアから出る

すると年配の男と女が

「参ったなぁ~」

「凄い雨ね…」

と、勢い良く入って来たので、隼人と恵にぶつかりそうになった

「隼人君?」

弥生は目を疑った

しかし直ぐに恵の存在に気付くと知らん振りをした

隼人と恵はそそくさと店を後にした

それを横目でみながら怪訝そうな面持ちで店に入る弥生

「知り合いか?」

と和茂が弥生に聞いたので

「別に…」

と答えた

「いらっしゃい」

とママがいつものように元気に言ったが、どこか哀愁が漂っていたのを弥生は見逃さなかった。

ジュークボックスの隣の奥の席に勝手にスタスタと座る和茂をよそにカウンター越しにママに話掛ける弥生。

「ママ?今の2人?…」

と言い掛けて、ママの瞳が光って要るのに気づいた

弥生はそっとしておいた方が良い事なのだと察して和茂の元へ歩み寄った

ママは気を取り直した様に2人に近づくとさっきよりも明るい声で

「それにしてもご無沙汰じゃない?葵(ひとみ)ちゃんの結婚式以来よね?」

と言った

「そうね」

弥生が言ってママにいつものウーロン茶と、Eの3番を注文すると服に付いた雫を払いながら話し出した

「それにしても葵(ひとみ)の結婚式、悲惨だったわよね?」

「ああ、まさか年下の元彼が乗り込んでくるとはな」

「そうよ、皆の前で『あの男とは縁を切ったから』って大声で叫んで葵(ひとみ)を連れ去るとはね…」

その言葉にママが微妙に反応した。

がそれには気にも止めずに和茂が

「あれ以来、優人、女恐怖症だぜ」

と笑いながら言った

「そりゃそうよね。あれから葵(ひとみ)とは音信不通だし、今頃何処で何してるのかしら?」

弥生が言った

「そうだな」

雨も小降りになり和茂と弥生は新居に帰る

すると薄暗い中、マンションの前に大きなスーツケースとふくろうの入ったケージを下げたずぶ濡れの女の姿

「葵(ひとみ)っ!」



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。 でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。 就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。 そこには玲央がいる。 それなのに、私は玲央に選ばれない…… そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。 瀬川真冬 25歳 一ノ瀬玲央 25歳 ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。 表紙は簡単表紙メーカーにて作成。 アルファポリス公開日 2024/10/21 作品の無断転載はご遠慮ください。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

そこは優しい悪魔の腕の中

真木
恋愛
極道の義兄に引き取られ、守られて育った遥花。檻のような愛情に囲まれていても、彼女は恋をしてしまった。悪いひとたちだけの、恋物語。

処理中です...