聖女によって婚約者を取られ追放された公爵令嬢は魔王に保護される

7話

　「着いたぞ、降りろ！」そう言われ、痛む足を無視して、乱暴に降ろされました。

「忌々しい、魔族め。惨めだな、こんな森で死ぬなんてな」

「しかし、見た目だけいい女だな……」

「確かに、そうだな」

　そう言ってジロジロ見てきて気持ち悪い。さっさといなくなって欲しいわ。

「ここでお前を襲ってもお前は罪人なのだから問題無いよな？」

　ニヤニヤと笑い近づいてくる。なにが、聖騎士だ！騎士というより野盗みたいじゃない！痛む足に鞭を打ちながら逃げようとする。

「おっと、逃げるなよ」

　そう言って痛む足の方を掴まれました。痛みが更に襲う。

「いつも澄ました顔が歪むのはいい気分だな」

「はははっ！　そうだな！」

　悔しい！なぜこんな仕打ちをされないといけないの？もう、死ぬしかないと思い始めた時、ニヤニヤしていた聖騎士達は私の後ろを見て顔が一気に青ざめた。何？と思い後ろを見ると、黒くて赤い目の大きな豹がそこにいた。

「グルルルゥ……」

　鋭い牙を剥き出しにしてこちらを見ています。今にも襲い掛かって来そうな感じ……。

「グルルゥ……、ガァオンっ！」

「ひっ！」

　こちらに来ました。思わず目をぎゅっと閉じて襲われる覚悟をします。あの聖騎士達にいい様にされるよりはこの魔獣に襲われた方がマシと、思いながら痛みが来るのを待ちます。しかし、いくら待っても何も無いので恐る恐る目を開けると、そこには私を通り過ぎて聖騎士達の方に行っています。

「何でこっちに来るんだよ！」

「やばい、逃げろっ！」

「ガァオン！」

「ひっ！　助けて！」

「うわあぁぁー」

　聖騎士達は黒豹に遊ばれる様に襲われていた。しかし、致命的な傷は負わせず手加減をしている様だった。少し痛めつけたあと、黒豹は聖騎士達を解放した。

「ごめんなさい！、ごめんなさい！」

「助けてー！」

「ガウッ！」

「「ひー！」」

　そう、無様な格好で聖騎士達は逃げ帰って行った……。

　すると、黒豹はくるりとこちらを見た。先程見た時より何故か怖くない。赤い目でじっと見つめられても恐怖は来ない。そしてゆっくり、ゆっくり、私に近づいてくる。私も逃げようとは思わなかった……。

　そして、目の前に黒豹が来ました。私の腫れている足を見て、痛々しそうな顔をして心配してくれている様でした……。少しの沈黙のあとにそれは起こりました。

「アレクシアよ、大丈夫か？」

　……へっ？……今、黒豹が喋った！？