他の女にうつつを抜かす夫は捨てます

りんごあめ

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揺らぐことのない心

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アンの紹介で再会したメアリーとジャックは一緒に過ごすうちに確実に距離を縮めていた

「メアリー、僕と結婚を前提にお付き合いしてくれないか」

あれから何度も会っているうちに、メアリーの心はジャックへと向いていた
初めてのときめき、手をつなぐだけで心臓がバクバクだ
メアリーはあぁ、これが恋なんだ、そう確信していた

「ジャック、私でいいの?」

「君がいいんだ」

「嬉しい、よろしくお願いします」

二人は微笑みあった

「今日はもう帰ろうか、雨が降りそうだ」

「そうね」

「送っていくよ」

「ありがとう」

馬車の中でもずっと手を繋いでいた
その間もドキドキは止まらない
ジャックと出会えなければ、こんな気持ち知らなかったわ





メアリーの屋敷に着いた時だ
なにやら、門の前が騒がしい

「どうしたのかしら、見てくるわ」

「危ないから僕も行くよ」

二人が門に近づいたとき、騒ぎの正体に気づいた
そこには、押し返そうとする使用人たちと
大声でメアリーの名を呼ぶダンがいた

「ダン?」

「メアリー!」

「一体何をしにきたの?」

「どうしても話したかったんだ!」

「私は話すことはないわ」

メアリーはきっぱりと言い放った

そこでようやくダンは、メアリーの隣に立っているジャックの存在に気づいたようだ
二人の繋がれたままの手にも

「誰だよそいつ」

ダンは一瞬で怒りの表情になってメアリーに詰め寄ろうとしたが、
ジャックがメアリーを背中に隠した

「どけよ!メアリーに話があるんだ!」

「彼女は嫌がっている」

「お前には関係ないだろ!」

「今更どの面下げて会いにきたんだ?」

ダンとジャックはお互いに一歩も引かない
まずいわ、ジャックに迷惑がかかってしまう

「わかった、話をきくわ」

「メアリー!」

「だけど、場所はここで、5分だけよ」

「あぁ、わかった!」

心配そうなジャックと使用人たちに大丈夫と目で合図をした

ダンが話し出す

「メアリー俺が悪かった!シアは追い出したよ!だから戻ってきてくれ!」

「お断りします」

「なぜなんだ!?シアはもういない!また二人で過ごそう!」

「どうせ、私がいなくなって仕事をする人間がいないのでしょう?」

「そ、それは...それもあるけど、それだけじゃない!君を失って初めて君の大切さに気付いたんだ!」

ダンが必死に弁解しているが、メアリーの心には一ミリも響かなかった

「もう遅いわ、ダン、あなたへの情はとっくに尽きてしまった」

「そんな!僕たちずっと一緒にいたじゃないか!」

「私に背をむけたのは、あなたよダン」

「頼むよ、メアリー...」

「悪いけど、私この人が好きなの」

メアリーはそう言ってジャックに笑みをみせた
ジャックもメアリーに笑みで答えた

それを見たダンは、絶望の表情を浮かべていた
メアリーはジャックの手を引き使用人たちと屋敷に入っていった




「ごめんなさいね、ジャック、巻き込んでしまったわ」

「いいんだ、かっこよかったよ」

「ありがとう、もうダンは来ないと思うわ」

「何かあったらすぐに言ってくれよ」

「えぇ...そうだ!お茶でも飲んでいって!」

「あぁ、そうさせてもらうよ」

メアリーとジャックはお茶を楽しんだ

使用人によると、あれからダンはしばらく呆然とした後、ふらふらと帰っていったらしい





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