215 / 251
もうひとりの聖女の謎
215. 意思疎通のために大事なこと
しおりを挟む読みに来てくださってありがとうございます!
再開いたします。
------------------------------
「メラニー様は、今のリリ様のほうが良いと感じられたようですけれど。それは何故なのか伺ってもよろしいかしら?」
リリの暴れっぷりについては、私もアロイスから聞いている。
それに比べて主人公はおとなしいのに、それでもリリを切り捨てるべきではないと判断したのはどうしてなのか興味があった。
メラニーさんは迷いなく答えてくれた。
「わたくしの主観で恐縮ですが、表に出ているのがもうひとりの少女であった場合、間違いなくロラン王国の者にとって都合の良い人形にされていたことでしょう。彼女は彼らに抵抗するどころか、受け入れて思い通りになっていたはずです」
この時点で私は、この人が嘘偽りなく、主人公の『ルリ』に接触したのだと確信できた。
アロイスは逆に不可解そうな顔をしている。
彼は主人公を直接知っているわけではないので、疑問が残るのだろう。
「つまり、気が弱そうな娘なのか。強引に思い通りにされそうな」
「いいえ。何と申しますか、全体的に見通しが甘い印象を受けたのですわ。安全な箱の中で世間を知らぬまま育ち、実のない善良さが備わってしまったお嬢さん、という印象でしたの」
「箱入りか」
アロイスがそこで私を見た。
逆に何人かが顔をそむけたけれど、ここで噴き出したら台無しだから我慢しなさい。
「あー……つまり、奴らの甘言に騙されそうな娘なんだな?」
「そうですわね。リリ様は王太子妃というお立場でありながら、監禁されて拘束されておりましたの。そのことでリリ様が怒り狂っていると、その少女は『この人達に酷いことを言うのはやめて』と責めておりましたから」
「なんでそうなるんだ?」
「事情をまったく知らなかったようですわ。何せ意識がはっきりしてきたのは……」
「つい最近、と言っていたか。それで、状況も理解できないうちから一方的に責めたのかよ?」
メラニーさんはこっくりと頷いた。
――まさに、『ルリ』はそういう主人公だった。
事情を確かめもせず、リリが一方的に怒っているだけと決めつけたのだろう。
「生きる覚悟が足りていない自覚もなく、たやすく流されるでしょう。もしその上で彼女が本当に聖女の力を得たとすれば、ロラン王国が再び盛り返すやもしれません。周辺の小国の民としては、交易において一強であったロラン王国に、今さら力を取り戻されては困るのです」
どうやらそれがメラニーさんの本音のようだ。
身も蓋もないことを言ってしまうと、赤の他人の女の子が傀儡聖女にされようと、彼女にとってはどうでもいい。
でも、これまでさんざん『聖女』や『女神の加護』を盾にして不利な取引を押し付けてきた国が、最近になってどちらも失い、急速に弱ってくれている。
ロラン王国が扱いやすい『ルリ』を掲げ、かつてのような力を取り戻したら、困る人々がたくさんいるのだ。
「それに、これもわたくし個人の印象ですが。現在表に出ているリリ様は話が通じますけれど、もうひとりの少女とは建設的な会話が困難でしょう。彼女からは自ら知識を求め、立ち向かう気概など微塵も感じられません。わたくし達のような魔法使いは現実主義者ですから、実利を否定する夢想家とは相性が悪いのです」
……魔法使いは現実主義者だったのか。
そういえば神官との対比として『現実主義的な物言いが多い』と挙げられることが多いし、考えてみれば当たり前の話だったかもしれない。
「ところでメラニー殿。実際問題、『片方を消す』ということは可能なのか?」
アロイスが気になるところを突っ込んだ。
魔女はそれに対して、焦らすこともなく頷く。
「ひとつの心が分割されたのではなく、心の核が二つあったのです。前者は不可能ですが、後者の場合は消すことも移すことも可能なのですわ」
1,192
あなたにおすすめの小説
オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~
雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。
突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。
多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。
死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。
「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」
んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!!
でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!!
これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。
な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)
ひ弱な竜人 ~周りより弱い身体に転生して、たまに面倒くさい事にも出会うけど家族・仲間・植物に囲まれて二度目の人生を楽しんでます~
白黒 キリン
ファンタジー
前世で重度の病人だった少年が、普人と変わらないくらい貧弱な身体に生まれた竜人族の少年ヤーウェルトとして転生する。ひたすらにマイペースに前世で諦めていたささやかな幸せを噛み締め、面倒くさい奴に絡まれたら鋼の精神力と図太い神経と植物の力を借りて圧倒し、面倒事に巻き込まれたら頼れる家族や仲間と植物の力を借りて撃破して、時に周囲を振り回しながら生きていく。
タイトルロゴは美風慶伍 様作で副題無し版です。
小説家になろうでも公開しています。
https://ncode.syosetu.com/n5715cb/
カクヨムでも公開してします。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887026500
●現状あれこれ
・2021/02/21 完結
・2020/12/16 累計1000000ポイント達成
・2020/12/15 300話達成
・2020/10/05 お気に入り700達成
・2020/09/02 累計ポイント900000達成
・2020/04/26 累計ポイント800000達成
・2019/11/16 累計ポイント700000達成
・2019/10/12 200話達成
・2019/08/25 お気に入り登録者数600達成
・2019/06/08 累計ポイント600000達成
・2019/04/20 累計ポイント550000達成
・2019/02/14 累計ポイント500000達成
・2019/02/04 ブックマーク500達成
【完結】妹は庶子、文句があるか? 常識なんてぶっ飛ばせ!
青空一夏
ファンタジー
(ざまぁ×癒し×溺愛)
庶子として公爵家に引き取られたアメリアは、
王立学園で冷たい視線に晒されながらも、ほんの少しの希望を胸に通っていた。
――だが、彼女はまだ知らなかった。
「庶子」の立場が、どれほど理不尽な扱いを受けるものかを。
心が折れかけたそのとき。
彼女を迎えに現れたのは、兄――オルディアーク公爵、レオニルだった。
「大丈夫。……次は、俺が一緒に通うから」
妹を守るためなら、学園にだって入る!
冷酷なはずの公爵閣下は、妹にだけとことん甘くて最強です。
※兄が妹を溺愛するお話しです。
※ざまぁはありますが、それがメインではありません。
※某サイトコンテスト用なので、いつもと少し雰囲気が違いますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる