聖女転生? だが断る

日村透

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もうひとりの聖女の謎

215. 意思疎通のために大事なこと

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 読みに来てくださってありがとうございます!
 再開いたします。

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「メラニー様は、今のリリ様のほうが良いと感じられたようですけれど。それは何故なのか伺ってもよろしいかしら?」

 リリの暴れっぷりについては、私もアロイスから聞いている。
 それに比べて主人公はおとなしいのに、それでもリリを切り捨てるべきではないと判断したのはどうしてなのか興味があった。
 メラニーさんは迷いなく答えてくれた。

「わたくしの主観で恐縮ですが、表に出ているのがもうひとりの少女であった場合、間違いなくロラン王国の者にとって都合の良い人形にされていたことでしょう。彼女は彼らに抵抗するどころか、受け入れて思い通りになっていたはずです」

 この時点で私は、この人が嘘偽りなく、主人公の『ルリ』に接触したのだと確信できた。
 アロイスは逆に不可解そうな顔をしている。
 彼は主人公を直接知っているわけではないので、疑問が残るのだろう。

「つまり、気が弱そうな娘なのか。強引に思い通りにされそうな」
「いいえ。何と申しますか、全体的に見通しが甘い印象を受けたのですわ。安全な箱の中で世間を知らぬまま育ち、実のない善良さが備わってしまったお嬢さん、という印象でしたの」
「箱入りか」

 アロイスがそこで私を見た。
 逆に何人かが顔をそむけたけれど、ここで噴き出したら台無しだから我慢しなさい。

「あー……つまり、奴らの甘言に騙されそうな娘なんだな?」
「そうですわね。リリ様は王太子妃というお立場でありながら、監禁されて拘束されておりましたの。そのことでリリ様が怒り狂っていると、その少女は『この人達に酷いことを言うのはやめて』と責めておりましたから」
「なんでそうなるんだ?」
「事情をまったく知らなかったようですわ。何せ意識がはっきりしてきたのは……」
「つい最近、と言っていたか。それで、状況も理解できないうちから一方的に責めたのかよ?」

 メラニーさんはこっくりと頷いた。
 ――まさに、『ルリ』はそういう主人公だった。
 事情を確かめもせず、リリが一方的に怒っているだけと決めつけたのだろう。

「生きる覚悟が足りていない自覚もなく、たやすく流されるでしょう。もしその上で彼女が本当に聖女の力を得たとすれば、ロラン王国が再び盛り返すやもしれません。周辺の小国の民としては、交易において一強であったロラン王国に、今さら力を取り戻されては困るのです」

 どうやらそれがメラニーさんの本音のようだ。
 身も蓋もないことを言ってしまうと、赤の他人の女の子が傀儡かいらい聖女にされようと、彼女にとってはどうでもいい。
 でも、これまでさんざん『聖女』や『女神の加護』を盾にして不利な取引を押し付けてきた国が、最近になってどちらも失い、急速に弱ってくれている。
 ロラン王国が扱いやすい『ルリ』を掲げ、かつてのような力を取り戻したら、困る人々がたくさんいるのだ。

「それに、これもわたくし個人の印象ですが。現在表に出ているリリ様は話が通じますけれど、もうひとりの少女とは建設的な会話が困難でしょう。彼女からは自ら知識を求め、立ち向かう気概など微塵も感じられません。わたくし達のような魔法使いは現実主義者ですから、実利を否定する夢想家とは相性が悪いのです」

 ……魔法使いは現実主義者だったのか。
 そういえば神官との対比として『現実主義的な物言いが多い』と挙げられることが多いし、考えてみれば当たり前の話だったかもしれない。
 
「ところでメラニー殿。実際問題、『片方を消す』ということは可能なのか?」

 アロイスが気になるところを突っ込んだ。
 魔女はそれに対して、焦らすこともなく頷く。

「ひとつの心が分割されたのではなく、心の核が二つあったのです。前者は不可能ですが、後者の場合は消すこともことも可能なのですわ」


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