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番外・後日談
12. 抜け目のない恋人との攻防*
しおりを挟む空になった紅茶のカップと、食べ終えた後の菓子皿。
蜂蜜色の髪の天使がソファに座り、白い子猫を膝に乗せてニコニコと撫でている。撫で過ぎや力の入れ過ぎはよくないという俺の教えをきちんと守っているので、子猫も心地よさそうに目を細めていた。
俺の妹と猫。これ以上最高な癒やしの組み合わせがほかにあろうか。
無敵の癒やし波動を浴びながら、たまの休憩時間を堪能する一方で、昔の思い出がポコポコと蘇る。
俺に抱っこをされて、「たかいたかい!」と喜んでいたシルヴィア。
疲れ切った俺の頬を紅葉のおててでペチペチしながら、「にいたまだいじょぶ?」と労ってくれたシルヴィア。
満面の笑顔で「シシィね、にいたまがいちばんすきです!」と喜ばせてくれたシルヴィア。
時が経つのは早いなあ。この子はあと何年、うちの子でいてくれるんだろう。
オヤジくさい感慨と切なさに浸っていたら、少し寂しくなってしまった。
そんな俺の内面はきっちりバレていたのだろう。その夜、普通に一緒に寝るだけのつもりでいたら、アレッシオの部屋へ手を引かれてしまった。
室内の出入口、通しましたよ、ええ。俺らが王都へ行っている間に壁をぶち抜いといてもらいましたが何か。
「アムレート様、何食わぬ顔でこちらへ来ようとしないでください」
「みゅ、かたいこと言うなよう」
「この方が嫌がりますので、ご遠慮ください」
「ちぇっ」
……ええと。その会話は、そういうことかな?
「アレッシオ? ……んむっ。……ふ……」
ドアを閉じるなり抱きしめられ、唇を塞がれた。
舌がねろりと口内に侵入してきて、ぞわわと皮膚の表面が逆立つ。無意識に胸板を押し返そうとしたら、腕に力をこめられて、逆に密着されてしまった。
最近、暑くなってきたかなと思うんだけど。
俺がベタベタしたら、アレッシオは心地良さより、暑苦しさが先に立つんじゃないのかな?
そう思ったんだが、そうでもないのだろうか。
この国に熱帯夜はない。湿気が少ない分、夜の気温は真夏でも涼しいと感じることが多い。
……いいかな。
……いいよな?
アレッシオだって、嫌ならしてこないだろ。これだけで俺のスイッチがあっさり入ることぐらい、俺よりも熟知しているんだから。
俺が胸中で誰へともなく言い訳を繰り返している間に、片手が寝間着の合わせから入ってきて、胸の尖りを指の腹で押し潰してきた。
「あ、あふ、……んん……」
キスをしながらそこをいじられ、身体がビクビクと震え、既に起き上がりかけていた中心がますます硬くなる。密着しているからそこの変化なんて誤魔化しようがない。
だけどアレッシオのそれも、力を持って俺の下腹に当たっていた。俺に興奮してくれている事実に、嬉しくて頭が沸騰しそうになる。
もう一方の手が裾をかきわけ、尻の隙間に指をもぐりこませてきた。
隠れた窄まりを探り当て、ぐいと押された瞬間、足が完全に脱力し、俺は立っていられなくなった。
うつ伏せにされ、後ろから根元まで埋め込まれた。
腰だけを高い位置に上げられ、上半身はぺしゃりとシーツに崩れ落ちている。
アレッシオはすぐには動かず、俺のそこが馴染むのを待ってくれていた。その間、ずっと背中に彼の胸と腹がぴったりとくっついている。
彼は全身を使って俺に密着する体勢が好きみたいで、俺も密着されるのが大好きだ。
「暑いですか……?」
彼のものがしっかり収まっている場所を腹の上から撫でられ、俺は身をよじりながら頷いた。
「ん、……うん、……おなか、あつい……」
存在感のあるそこを中心に、熱が広がっているように感じる。顔も全身もカッと火を噴きそうだ。
…………ところで、ちょっとぐらい痛くてもいいから、そろそろ動いて欲しいな。
そんな風に焦れてきた俺の背中や首の後ろを食み、「もう少しだけ我慢してくださいね」と甘い声であやしてくれる。アレッシオに抱かれる時はいつも、あまりの多幸感に頭が退化しそうで怖くなった。
彼のことが好きで好きでたまらない。そんな感情がどんどん湧き溢れて、これだけでもう気持ちよくて、さっきから後孔がきゅうきゅう動いて止まらない。
「こら。そんなに絞らないでください。久しぶりなのに、加減ができなくなってしまう」
「……しなくて、いい……おまえは、私をめちゃくちゃに、してい、から……」
だって、勝手に動いて止められないんだよ。こうなるのも込みで俺はおまえを受け入れているんだから、結果は甘んじて受け止めるぞ。明日後悔するかもしれないが、明日は明日の風が吹くんだ。
アレッシオが耳元でクスリと笑った。
「あなた、ここぞという時に私を嬉しがらせてくれるのが、本当に巧いですよ」
「……?」
「ねえ。私に愛されるの、好きですか?」
「ん、すき……すきだ……アレッシオ、好き……あぁ……」
「オルフェ……」
しかし、焦らされるのも限界になってきた。
王都から領地までの道を整備して、片道の日数が短縮できたけれど、それでもまだ何日もかかる。馬車の旅って疲れるんだよ。出発の直前から忙しくて、移動中の宿では一瞬で寝落ちしたから一度もしていなかった。気付けば二週間近く触れ合っていないぞ?
夏が本格化する前にと、六月中にたくさんしてもらったのに、俺の身体はもう飢え飢えだ。なんで今夜は普通に寝られるつもりだったのか、いっそわけがわからん。
「……あなたは、そのままでいい。愛の言葉なんてものは、無理に出さねばならないものではありません。それでも気になるのでしたら、あなたの頭がはっきりしている時も、していない時も、あなたの分まで私がたっぷり伝えてあげますから」
「あっ……あっ、あぁ、……あっ……」
彼が少し上半身を起こし、奥までじっくり捏ねるように腰を回し始めた瞬間、俺の頭も全身もグズリととろけた。両手は手の甲の上から指をからめてシーツに拘束され、それにすら感じてしまう。
閉じられない口からひっきりなしに嬌声が漏れた。
「私にこうされるのは、気持ちいい?」
「ひんっ……きもちい……あ、だめ……いい……だめだ……」
「暑いのは? 私とするのは、嫌ですか?」」
「い、いやじゃないっ……あついの、すきだ……おまえのが、なか、いっぱい……きもちいい……」
「ふふ……なら、暑くても、おあずけは無しですからね……? たくさん、愛してさしあげます……」
「……うれし……あぁあ……」
ん? なんかニュアンスが違ってたような……。
かすかに違和感がよぎったものの、深い場所までじっくり快楽を送り込まれ続け、もう何もわからなくなってしまった。
長旅の疲れが残っているであろう俺の負担が少ないように、無理をさせないようにと、ゆっくり抱いてくれたんだが。
それが却って長時間ねちっこく……ゴホン。
……いやさ。後で気付いたんだよ。『暑い』と『熱い』がさ、この国、同じ単語を使うんだよね。
翌朝、すっかり腰が抜けて立てなくなっていた俺は、ベッドの中からアレッシオを睨み上げた。
「おまえ、狙ったな?」
「はて、何のことでしょう?」
俺の頭がバカになっている時に言質を取りやがった男は、すっきりさっぱり晴れやかな笑顔で、「本日はお休みにいたしましょうね」と告げた。
しかも、もうひとつの言質というか宣言―――俺の分まで愛の言葉を伝えるというのも実行してきやがった!
いつもやってるじゃん? いいや違う。「昨夜のあなたは可愛かった」とか「いつもあなたが愛しいあまり我慢がきかなくなる」とか、それ系のセリフを大増量で垂れ流してきた。それはもう真正面からたっぷりと。
頼むからやめてくれ! もとに戻って! 俺の脳みそが再起不能になる! 日常生活に復帰できなくなるからっ!
俺をこれでもかと恥ずかしがらせ、ご満悦の様子でくすくす笑う男が実に憎ったらしい。でもそんなとこも好き……。
第一、俺が娘の嫁入りを想像してヘコむオヤジと化していたから、慰めようとしてくれたんだろうし。ああもう好き。ほんと好き……。
こんなだから俺は、この先もずっとアレッシオにしてやられ続けるんだろう。
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読みに来てくださってありがとうございます!
いちゃいちゃ回はラストあたりの1話だけにしようか迷いましたが、途中でも入れたくなりました。……大目に見ていただければありがたいです……。
諸事情にて8/28~30は更新をお休みいたします。よろしくお願いいたします。
※8/30追記:予定がずれこみました(汗) 31日も投稿は難しく9/1から再開になると思いますm(_ _m)
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