プログレッシブコンキー

宮橋くれなゐ

文字の大きさ
3 / 5
出会う。そして、巡る。

1.2

しおりを挟む
演技が終了し、控室に戻ったレンヤートは、軽い疲労感を感じながらも充実感に満たされていた。彼はリンク上でのパフォーマンスを振り返りつつ、都姫のことが頭の片隅に引っかかっていた。

控室で一息ついていると、姫月が隣に座り、タオルで汗を拭き取っていた。レンヤートは何気ない様子で彼女に話しかけた。

「そういえば、都姫くんってどんな人?」

姫月は驚いた顔して
「レンヤートが女の子以外に興味持つの珍しいね。何か気になることでもあったの?」

レンヤートは肩をすくめ、あまり関心がないように見せかけながらも、軽く尋ねた。

「いや、君の弟だから魅力的に感じたのかも知れない。さっきは、あまり話す時間がなかったからね。彼についてちょっと知りたかっただけだよ。」

姫月はまた、少し驚いたようにレンヤートを見つめたが、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。

「都姫はフォトグラファー、とても真剣に楽しそうに仕事をしている人。都姫の写真はとても美しくて、感動的だから私は好きなの。」

彼女は、身内贔屓じゃないからねと言葉をつづけた。

「そうなんだ。都姫くんは普段どんな写真を撮っているの?」

レンヤートはあくまで軽い関心を示すような態度を続けたが、その言葉にはほんの少しの好奇心が混じっていた。

 「自然や街並みの写真が多いかも。最近は人物を撮るのにハマってるって都姫言ってた。
都姫の写真にはいつも独特の視点があって、見る人の心を動かすの。」

姫月は少し微笑んで続けた。

 「実は、都姫はフォトグラファーとして世界的に有名なんだって。都姫の写真展はいつも大盛況で、賞もたくさん受賞してるって母さんが言ってた。
そういえばこの前、レンヤートがラテン系の美女をデートに誘っていった所が、都姫の写真展やってる美術館だったよ。」

レンヤートは少し驚いた様子で姫月を見つめた。

「それはすごいね。どんな人が撮っているのか興味があったんだけど、都姫くんが撮っていたんだね。」

姫月は笑って答えた。

「都姫は自身の姿を写真に撮ることがないから正体不明のフォトグラファー。だから、年齢や性別も知られていないのよ。都姫の作品だけが語るべきことを語ってる。

あとこれは、本人気づいてない事だけど、都姫は誰とでも仲良くなりたいってオーラが駄々漏れてるから、みんな都姫にに惹かれてちゃうの。都姫の周りにはいつも人が集まってて私は何時も妬いちゃう。」


レンヤートは軽く眉を上げた。姫月の言葉を聞いて、都姫の人柄に対する興味が少しずつ湧いてきたが、まだ特別な感情は抱いていなかった。

ふと、レンヤートは疑問を抱いた。

「そういえば、都姫くんのバース性は何?」

姫月は少し驚いたように見えたが、すぐに答えた。

 「都姫はβよ。」


レンヤートはその答えに少し戸惑った。今まで、彼はアルファやオメガに対して興味を持つことが多かったが、β性の男性に興味を持ったのは初めてだった。

 「(β性の男性に興味を持つなんて、今までなかったな…。)」

彼の脳裏には、都姫が自身に向ける探るような眼差しと、姫月にしか見せなかった柔らかな表情が浮かんでいた。それが彼をさらに混乱させた。


レンヤートが少し悩むそぶりを見せた事に姫月は驚きを隠せなかったが深くは追求しなかった。

「もし興味があるなら、この後食事するんだから都姫と直接話してみたら?都姫もきっと喜ぶと思う。」

レンヤートは満足げに頷き、表情に変化はないまま、心の中で次のステップを考えていた。彼は、都姫が自身に向ける探るような眼差しと、姫月にしか見せなかった柔らかな表情が脳裏から離れなかった。

その後、レンヤートは姫月と共に控室を出て、再び都姫のいる場所へ向かった。彼の心には、新たな興味と期待が芽生えつつあった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

楽な片恋

藍川 東
BL
 蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。  ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。  それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……  早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。  ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。  平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。  高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。  優一朗のひとことさえなければ…………

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

処理中です...