侵略すること負のごとし

ゴナ

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第三話

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辺り一面ネオンと電工掲示板で埋められた如何にも都会ですとで言った見た目の街の中、車道にスペースの大半をとられ人一人歩くのがやっとの細い歩道の上すれ違う人をぎりぎりで躱しながら一人の少女が息を切らせて走っていた。
年のころにして16歳くらいか、白く輝くきめ細かい肌を厚ぼったい深緑色のコートで包み込み、頭には左側に子供の指4本分くらいの穴があいた白いコサック帽をかぶり、横の穴から金属の様に光沢のある鋼色の髪を垂らしている。
少女はある職業に従事していた、今の御時世これくらいの歳の子供が働くことはさして珍しくもないが、この少女は、より正確に言えばこの少女の勤めている職業はすこし…………いやかなり珍しかった。
コートの左肩に縫い付けられた氷柱と剣が交差したエンブレム。
このエンブレムは少女がデリーサ、対王類および超能力抗争専門の超能力者…………簡単にいうと傭兵のようなものであることを証明していた。
少女は全速力で走りながらふっとあたりを見回す、というのもつい先程まではそれなりに賑わっていたのにいつの間にか人っ子一人いなくなっているのだ。
相変わらずネオンのライトは輝いているのにこうもひと気がないのでは中々に不気味だ。
だが少女は特に気にした風もなくいままで通りに走る…………しばらくして巨大な役所のような建物が見えた。
少女はその建物のドアを勢いよくあけるとかけてきた勢いのままに中に飛び込んだ。
馬鹿みたいに高い天井、ピカピカに磨きあげられた大理石でできた床に豪華なシャンデリアやカーペット、そして壁一面に並べられた人の背丈位の大きさのパソコンのような機械。
高級ホテルさながらのきらびやかな空間の中少女は息を整えながら機械へ向かって真っ直ぐに歩んでいく。
そして慣れた手付きで機械を操作する。
すると
「データバンクと照合…………百パーセント一致、入室を許可します。」
機械がそう端的に告げると同時にその機械の真正面一辺一メートル程の正方形状に床が切り取られゆっくりと降下していく。
そして十数秒程して切り取られた床は1つ下の階につく。
全くこんな勿体振った仕掛け作ることないのになーと思いながら少女はエレベーター代りの床から降りる。
そこは部屋の作りや材質自体はさして変わらないが、先程とは全くことなる雰囲気を醸し出していた。
大量に並べられた丸テーブルに銃やらナイフやらで武装した男女が腰掛け賑やかに談笑している様はまるでRPGの酒場のよう、…………もっともここにいる男女は皆デリーサーかあるいは情報屋か武器屋かの三択なのでRPGの酒場というのもあながち間違っていないのだが。
「ええっと、たしかこのあたりにー。」
少女はあたりを見回して。
「あっ!いましたー。」
大勢の人の山の中から目的の二人組、金髪の青年ルドルフと全身赤色に包まれた青年…………大和を見つけた。
「すみませーん、遅れちゃいましたー。」
少女が小走りで二人の方に向かって行くと。
「ニーナ、ちょうどいいところにきたな。」
とルドルフが突然言ってきた。
「?」
何の話かさっぱり分からず小首を傾げるニーナにルドルフは短く「仕事のことだ。」といい放った。
ニーナはルドルフの急な仕事宣言に驚きながらも
「仕事って…………はやくないですかー、ついこの間セミを討伐したばっかりじゃないですかー。」
と言い返した。
それに対してルドルフがなにか言おうとして、それよりはやく大和が口を開いた。
「そうだ、確かに早い、…………しかしだな、こんなに早く仕事にでると言うことは。」
大和が一瞬ためて。
「言うことはー?」
ニーナが思わず聞き返し。
「それだけデカイ話だってことよー!!」
大和がそれはそれはもう楽しそうに声を張り上げた。
盛り上がっている大和をボケーと眺めながらニーナは「そのデカイ話ってなんですー?」とたずねた。
すると大和は「それはだなー」とまたも勿体振り。
「つい最近発見された島の調査だ、しかも名指しで。」
ルドルフが簡潔に説明した。
「ちょ!、おい待て!、そんな簡単に言っちゃうか!?結構すごいことだぜ!」
喚く大和はほうってルドルフは説明を続ける。
「なんでもこの島は飛行型王類の飛行ルートに入ってるらしくてな、そいつらがしょっちゅう飛んで来るらしい、しかも恐ろしく強い、並大抵の超能力者じゃ手も足も出ないとか。」
「それで私達に話がまわってきたんですねー。」
ニーナは納得がいったというふうに手を打った。
なぜ自分たちに名指しで依頼されたのか疑問だったのだ。
普通新しい島が見つかったりなんかしたら絶体に部外者には手を出させない、しかし強力な能力者というのは当然だがあまり人の下につきたがらない。
多くはデリーサーのような自由のきく組織につきたがる、かくいう自分もその一人だが。
と一人で納得しているニーナに大和がノンノンノンと指を振りながら話しかけてきた。
「それがな俺らだけじゃねぇんだ。」
「えっもしかしてー。」
「あと6人もいる、それも全員凄腕。」
「6人もー!!?」
これにはさすがのニーナも心底驚いた、自分で言うのも何だがニーナは自分達の能力にかなり自信があったし、事実周りからも信頼され相応の評価を受けていた。
この前だってたった三人で戦闘機でも敵わない巨大ゼミの群を片付けた、いやそれ以前にそんな依頼をたった三人で受けさせて貰える時点で充分凄い。
しかし今回の依頼はそれでも足りないと、自分達の他にあと6人もいると言うのだ。
(いったいどれ程の難易度なんだろー?)
そう思うと今からなんだか怖くなってきた、がこんなときでもいつも通り楽しそうに笑っている大和と同じくいつも通り落ち着いて話しをしていたルドルフを思い浮かべ。
(うん、きっと大丈夫…………ですよね?)
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