3 / 4
第三話
しおりを挟む
辺り一面ネオンと電工掲示板で埋められた如何にも都会ですとで言った見た目の街の中、車道にスペースの大半をとられ人一人歩くのがやっとの細い歩道の上すれ違う人をぎりぎりで躱しながら一人の少女が息を切らせて走っていた。
年のころにして16歳くらいか、白く輝くきめ細かい肌を厚ぼったい深緑色のコートで包み込み、頭には左側に子供の指4本分くらいの穴があいた白いコサック帽をかぶり、横の穴から金属の様に光沢のある鋼色の髪を垂らしている。
少女はある職業に従事していた、今の御時世これくらいの歳の子供が働くことはさして珍しくもないが、この少女は、より正確に言えばこの少女の勤めている職業はすこし…………いやかなり珍しかった。
コートの左肩に縫い付けられた氷柱と剣が交差したエンブレム。
このエンブレムは少女がデリーサ、対王類および超能力抗争専門の超能力者…………簡単にいうと傭兵のようなものであることを証明していた。
少女は全速力で走りながらふっとあたりを見回す、というのもつい先程まではそれなりに賑わっていたのにいつの間にか人っ子一人いなくなっているのだ。
相変わらずネオンのライトは輝いているのにこうもひと気がないのでは中々に不気味だ。
だが少女は特に気にした風もなくいままで通りに走る…………しばらくして巨大な役所のような建物が見えた。
少女はその建物のドアを勢いよくあけるとかけてきた勢いのままに中に飛び込んだ。
馬鹿みたいに高い天井、ピカピカに磨きあげられた大理石でできた床に豪華なシャンデリアやカーペット、そして壁一面に並べられた人の背丈位の大きさのパソコンのような機械。
高級ホテルさながらのきらびやかな空間の中少女は息を整えながら機械へ向かって真っ直ぐに歩んでいく。
そして慣れた手付きで機械を操作する。
すると
「データバンクと照合…………百パーセント一致、入室を許可します。」
機械がそう端的に告げると同時にその機械の真正面一辺一メートル程の正方形状に床が切り取られゆっくりと降下していく。
そして十数秒程して切り取られた床は1つ下の階につく。
全くこんな勿体振った仕掛け作ることないのになーと思いながら少女はエレベーター代りの床から降りる。
そこは部屋の作りや材質自体はさして変わらないが、先程とは全くことなる雰囲気を醸し出していた。
大量に並べられた丸テーブルに銃やらナイフやらで武装した男女が腰掛け賑やかに談笑している様はまるでRPGの酒場のよう、…………もっともここにいる男女は皆デリーサーかあるいは情報屋か武器屋かの三択なのでRPGの酒場というのもあながち間違っていないのだが。
「ええっと、たしかこのあたりにー。」
少女はあたりを見回して。
「あっ!いましたー。」
大勢の人の山の中から目的の二人組、金髪の青年ルドルフと全身赤色に包まれた青年…………大和を見つけた。
「すみませーん、遅れちゃいましたー。」
少女が小走りで二人の方に向かって行くと。
「ニーナ、ちょうどいいところにきたな。」
とルドルフが突然言ってきた。
「?」
何の話かさっぱり分からず小首を傾げるニーナにルドルフは短く「仕事のことだ。」といい放った。
ニーナはルドルフの急な仕事宣言に驚きながらも
「仕事って…………はやくないですかー、ついこの間セミを討伐したばっかりじゃないですかー。」
と言い返した。
それに対してルドルフがなにか言おうとして、それよりはやく大和が口を開いた。
「そうだ、確かに早い、…………しかしだな、こんなに早く仕事にでると言うことは。」
大和が一瞬ためて。
「言うことはー?」
ニーナが思わず聞き返し。
「それだけデカイ話だってことよー!!」
大和がそれはそれはもう楽しそうに声を張り上げた。
盛り上がっている大和をボケーと眺めながらニーナは「そのデカイ話ってなんですー?」とたずねた。
すると大和は「それはだなー」とまたも勿体振り。
「つい最近発見された島の調査だ、しかも名指しで。」
ルドルフが簡潔に説明した。
「ちょ!、おい待て!、そんな簡単に言っちゃうか!?結構すごいことだぜ!」
喚く大和はほうってルドルフは説明を続ける。
「なんでもこの島は飛行型王類の飛行ルートに入ってるらしくてな、そいつらがしょっちゅう飛んで来るらしい、しかも恐ろしく強い、並大抵の超能力者じゃ手も足も出ないとか。」
「それで私達に話がまわってきたんですねー。」
ニーナは納得がいったというふうに手を打った。
なぜ自分たちに名指しで依頼されたのか疑問だったのだ。
普通新しい島が見つかったりなんかしたら絶体に部外者には手を出させない、しかし強力な能力者というのは当然だがあまり人の下につきたがらない。
多くはデリーサーのような自由のきく組織につきたがる、かくいう自分もその一人だが。
と一人で納得しているニーナに大和がノンノンノンと指を振りながら話しかけてきた。
「それがな俺らだけじゃねぇんだ。」
「えっもしかしてー。」
「あと6人もいる、それも全員凄腕。」
「6人もー!!?」
これにはさすがのニーナも心底驚いた、自分で言うのも何だがニーナは自分達の能力にかなり自信があったし、事実周りからも信頼され相応の評価を受けていた。
この前だってたった三人で戦闘機でも敵わない巨大ゼミの群を片付けた、いやそれ以前にそんな依頼をたった三人で受けさせて貰える時点で充分凄い。
しかし今回の依頼はそれでも足りないと、自分達の他にあと6人もいると言うのだ。
(いったいどれ程の難易度なんだろー?)
そう思うと今からなんだか怖くなってきた、がこんなときでもいつも通り楽しそうに笑っている大和と同じくいつも通り落ち着いて話しをしていたルドルフを思い浮かべ。
(うん、きっと大丈夫…………ですよね?)
年のころにして16歳くらいか、白く輝くきめ細かい肌を厚ぼったい深緑色のコートで包み込み、頭には左側に子供の指4本分くらいの穴があいた白いコサック帽をかぶり、横の穴から金属の様に光沢のある鋼色の髪を垂らしている。
少女はある職業に従事していた、今の御時世これくらいの歳の子供が働くことはさして珍しくもないが、この少女は、より正確に言えばこの少女の勤めている職業はすこし…………いやかなり珍しかった。
コートの左肩に縫い付けられた氷柱と剣が交差したエンブレム。
このエンブレムは少女がデリーサ、対王類および超能力抗争専門の超能力者…………簡単にいうと傭兵のようなものであることを証明していた。
少女は全速力で走りながらふっとあたりを見回す、というのもつい先程まではそれなりに賑わっていたのにいつの間にか人っ子一人いなくなっているのだ。
相変わらずネオンのライトは輝いているのにこうもひと気がないのでは中々に不気味だ。
だが少女は特に気にした風もなくいままで通りに走る…………しばらくして巨大な役所のような建物が見えた。
少女はその建物のドアを勢いよくあけるとかけてきた勢いのままに中に飛び込んだ。
馬鹿みたいに高い天井、ピカピカに磨きあげられた大理石でできた床に豪華なシャンデリアやカーペット、そして壁一面に並べられた人の背丈位の大きさのパソコンのような機械。
高級ホテルさながらのきらびやかな空間の中少女は息を整えながら機械へ向かって真っ直ぐに歩んでいく。
そして慣れた手付きで機械を操作する。
すると
「データバンクと照合…………百パーセント一致、入室を許可します。」
機械がそう端的に告げると同時にその機械の真正面一辺一メートル程の正方形状に床が切り取られゆっくりと降下していく。
そして十数秒程して切り取られた床は1つ下の階につく。
全くこんな勿体振った仕掛け作ることないのになーと思いながら少女はエレベーター代りの床から降りる。
そこは部屋の作りや材質自体はさして変わらないが、先程とは全くことなる雰囲気を醸し出していた。
大量に並べられた丸テーブルに銃やらナイフやらで武装した男女が腰掛け賑やかに談笑している様はまるでRPGの酒場のよう、…………もっともここにいる男女は皆デリーサーかあるいは情報屋か武器屋かの三択なのでRPGの酒場というのもあながち間違っていないのだが。
「ええっと、たしかこのあたりにー。」
少女はあたりを見回して。
「あっ!いましたー。」
大勢の人の山の中から目的の二人組、金髪の青年ルドルフと全身赤色に包まれた青年…………大和を見つけた。
「すみませーん、遅れちゃいましたー。」
少女が小走りで二人の方に向かって行くと。
「ニーナ、ちょうどいいところにきたな。」
とルドルフが突然言ってきた。
「?」
何の話かさっぱり分からず小首を傾げるニーナにルドルフは短く「仕事のことだ。」といい放った。
ニーナはルドルフの急な仕事宣言に驚きながらも
「仕事って…………はやくないですかー、ついこの間セミを討伐したばっかりじゃないですかー。」
と言い返した。
それに対してルドルフがなにか言おうとして、それよりはやく大和が口を開いた。
「そうだ、確かに早い、…………しかしだな、こんなに早く仕事にでると言うことは。」
大和が一瞬ためて。
「言うことはー?」
ニーナが思わず聞き返し。
「それだけデカイ話だってことよー!!」
大和がそれはそれはもう楽しそうに声を張り上げた。
盛り上がっている大和をボケーと眺めながらニーナは「そのデカイ話ってなんですー?」とたずねた。
すると大和は「それはだなー」とまたも勿体振り。
「つい最近発見された島の調査だ、しかも名指しで。」
ルドルフが簡潔に説明した。
「ちょ!、おい待て!、そんな簡単に言っちゃうか!?結構すごいことだぜ!」
喚く大和はほうってルドルフは説明を続ける。
「なんでもこの島は飛行型王類の飛行ルートに入ってるらしくてな、そいつらがしょっちゅう飛んで来るらしい、しかも恐ろしく強い、並大抵の超能力者じゃ手も足も出ないとか。」
「それで私達に話がまわってきたんですねー。」
ニーナは納得がいったというふうに手を打った。
なぜ自分たちに名指しで依頼されたのか疑問だったのだ。
普通新しい島が見つかったりなんかしたら絶体に部外者には手を出させない、しかし強力な能力者というのは当然だがあまり人の下につきたがらない。
多くはデリーサーのような自由のきく組織につきたがる、かくいう自分もその一人だが。
と一人で納得しているニーナに大和がノンノンノンと指を振りながら話しかけてきた。
「それがな俺らだけじゃねぇんだ。」
「えっもしかしてー。」
「あと6人もいる、それも全員凄腕。」
「6人もー!!?」
これにはさすがのニーナも心底驚いた、自分で言うのも何だがニーナは自分達の能力にかなり自信があったし、事実周りからも信頼され相応の評価を受けていた。
この前だってたった三人で戦闘機でも敵わない巨大ゼミの群を片付けた、いやそれ以前にそんな依頼をたった三人で受けさせて貰える時点で充分凄い。
しかし今回の依頼はそれでも足りないと、自分達の他にあと6人もいると言うのだ。
(いったいどれ程の難易度なんだろー?)
そう思うと今からなんだか怖くなってきた、がこんなときでもいつも通り楽しそうに笑っている大和と同じくいつも通り落ち着いて話しをしていたルドルフを思い浮かべ。
(うん、きっと大丈夫…………ですよね?)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる