二枚の写真

原口源太郎

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 時折雲間から太陽が顔を出している。
 休日に訪れたテニスコートで、勇と青山は組んでダブルスの試合をしていた。相手は隣のコートで練習をしていた学生だ。
 青山がサーブをしてネットに駆け寄る。
 相手の学生はレシーブでスピンのきいたボールをネット際に落とす。
 青山は上体を低くしてローボレーをするが、浮いたボールを相手がネット際で叩いた。
 勇が咄嗟に反応してラケットを出すが、ボールはネットにかかる。
 試合をしていた四人がネット際に集まった。
「ありがとうございました」
「いやあ、完敗。上手いね」
 青山が学生たちを褒める。
「いえいえ」
「機会があったらまたお願いしたいね」
「こちらこそ、お願いします」
 勇と青山は休憩のためにコートを離れ、学生たちは再びボールを打ち合う。
 休憩室でベンチに座り、タオルで汗を拭きながら二人はペットボトルのスポーツ飲料を片手に話した。
「やっぱり学生は上手いね」
 青山が言う。
「そりゃ、毎日練習をしているだろうから」
「こっちはそういうわけにもいかない。特に問題はサーブだ。ちょっと上手い奴なら、バチンとコーナーに返されて終わっちまう」
「もう少しスピードが欲しいな」
「コースも。そっちの方が重要だと思うぜ。まだ日があるから、もう少しレベルアップできるかな」
「頑張ってみるよ」
「さて、もう少しやるか」
「よし」
 勇と青山は手にしたペットボトルの中身を飲み干して立ち上がった。
 コートに出ると、二人でボールを打ちあっている中年の男女を見つけ、青山が声をかけた。
「一緒に試合しませんか」
「いいですよ」
 じゃんけんでサーブとコートを決めて試合が始まる。またダブルスだ。
 勇がサーブをして、相手のレシーブをネット際にいた青山がボレーする。
 先ほどの試合と違って和やかな雰囲気だ。
 もう一度、勇がサーブをしてネットに詰め、相手がロブを上げたので戻ろうとする。
 無理な体勢で反転しようとして勇は転ぶ。
「いてて」
 勇は足首を押さえてうずくまった。
「どうした?」
 青山が心配そうに近寄る。
「足首をひねった。捻挫したらしい」
 青山は勇の手を引いて立ち上がらせる。
「すいません、今日はこれまでで」
 青山が相手の男女に声をかける。
「大丈夫ですか?」
 相手の男が心配そうに尋ねた。
「うーん」
 勇はあいまいに返事をする。
「すみません」
 青山は再び相手に申し訳なさそうに言った。
「いえ、お大事に」
 青山が勇の肩の下に手を回す。勇はびっこを引いて歩いていった。
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