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「ああああああっ!!」
ずどどどどどどっと俺の足の裏がひたすら揺さぶり続けるのは、日焼け後が消えかけてる細い足の付け根。
学校の体操着であるスポーツ用ハーフパンツに包まれた、柔らかくて弾力のある股間。
男も女もどちらにとっても弱点であるここを今日も俺はミホミの両足首を持って自分の方へと引き寄せるように力を込めて、めり込ませた足先で責めている。
「ひゃあああああぁぁぁぁぁあっ!!」
まいどおなじみボカスカ殴りあうゲーの勝負の結果だった。
一月くらい前に、俺が久々にミホミに勝ってからほぼ毎日やりあっている。
あの時の大熱戦の末、逆転負けを喫した上に漏れそうになるギリギリまで電気あんまを食らったミホミは完全に火がついちゃったようだった。
三日と日を置かず、勝負を挑んでくる。
元々負けん気が強いところがあったけど、今回の燃え方は尋常じゃなかった。
大きな目を爛々と光らせて挑んでくるときなんか、めらめらと背中に背負ってる熱い炎が見えるようなきがしてくるくらい。
よっぽどコイツのプライドを刺激しちゃったようだ。
そして俺もそんなミホミの容赦ない電気あんまを食らうのはイヤだったので、必死で応戦する。
結果、ここ最近の勝負はそれまでとはまるで違うハイレベルなものになっていた。
たぶんこのゲームで俺とミホミに勝てるヤツなんて、ほとんどいないだろうなって思うくらい。
積み重なる電気あんまのやりあい。
何時しかそのルールも変わりつつある。
負けがこんで久々に自分がやる番になったミホミが、「時間を延ばそう」って言い出したんだ。
それまでの1分から、なんと3分にするとか言い出したときには、あまりの暴挙に逃げようかと思ったくらいだった。
自分の部屋だったからそれもできなかったけど。
そして「無理」、「やる」、「無理!」、「やる!!」のやりとりの末、たどり着いた妥協案が「やばくなったら力を緩める」っていうものだった。
結局、何がイヤかってくすぐったさが限界を超えて漏らしちゃうようなことがあるのが一番怖かったんだ。
だから、やられてるほうが「もうムリ!」って言った時点で一旦動きを止めるなり力を緩めるなりしよう、っていうなら時間が長くなっても耐えられないこともない。
すんなり決まったわけじゃないけど、長々と喧々諤々やりあって、そこらへんに結論は落ち着いた。
そして今。
「~~~~~~~~っ!! も、もう限界っ!! と、止めてーーーーっ!!」
ミホミの必死な叫びを聞いて、ぴたっと俺は動きを止めた。
股間に足を突っ込まれたままの格好でぐったりしているミホミ。
「はわわわわ……」
「まだ2分。あと1分あるぞ」
「わわわ、わかってるるるわよよよよ。ももも、もうちょっと、ままま、待って……。あ、あたしも待ってあげたでしょ?」
「当たり前だろ、言いだしっぺはお前なんだから。いいよ、落ち着くまでゆっくりしてろよ」
「……あ、あんたって意外といいヤツ……」
「俺はめちゃめちゃいいヤツだよ!」
なんてことを言い合いながら、しばしのダベりタイムは続く。
学校のこととか友達の噂話とか、共通の話題が続いた後。
「そーいえば、ソウタってC組のヤマダくんとは仲悪いよね」
ミホミの口から聞きたくない名前が出てきて、それまで楽しかったのが一変、気分が悪くなる。
「……俺、あーゆうスカしたやつ嫌い」
「ふーん……。女子には人気あるけどね。さっき話にでたキョウコなんかはヤマダくんが好きみたいよ」
ヤマダは一時期同じクラスだったヤツで、初めて顔を会わせたときから「ああ、あわねえ」って確信した。
向こうもそれは同じだったみたいで、ずっと険悪な態度をお互い向け合っていた。
一度学年が変わって以降は同じクラスになることはないけど、なにしろ同じ学校だからそこかしこで姿を見たり話を聞いたりはどうしてもする。
そして俺とあいつの関係は周知の事実なので、今みたいに何かと話を向けられることもある。
そのたびにこうして嫌な気分になるんだ。
俺はそういう気持ちを隠すことなくミホミに向ける。
「あいつの話はあんまりしたくないんだけど。それともお前もアイツが好きなんかよ?」
「べっつにー。あたしはどーでもいいんだけど。でもそこまでアンタが感情丸出しにするなんて、つくづく根が深いよね~」
「俺のことはもーいーよ。それよりそろそろ残りをやるぞ」
「あはっ。まだ覚えてた?」
「当たり前だろっ! そんなんでごまかされねーよっ!!」
残り一分、ミホミが限界を迎えるギリギリまで思いっきり電気あんまを食らわせてやった。
………
そんな話をミホミとしたからだろうか。
次の日、学校に行った俺は久々に大っ嫌いなヤマダを目撃することになった。
移動教室でべーやんと一緒に廊下を歩いていたときに、ふと目にした光景に釘付けになって立ち止まる。
「ソウター? なーにやってんだよ、早くいこーぜ」
背中から呼んでくる声に返事もしないで、俺はじっと廊下の向こう側を見ていた。
二クラス分の教室を跨いだその先。
滅多に俺は近寄らないその教室の入り口で立ち話をしている男子と女子。
子供のころからの親友の声に反応しなかったのは、視線の先にいるミホミに見とれていたからじゃない。
アイツがいま話をしている相手にこそ問題があったんだ。
「あん? あれって吉岡と……」
ひょこっと俺の肩越しに同じ方向を向いたべーやん。
みるみる俺とおんなじ雰囲気を纏い始める。
「……ちっ。あいつかよ……」
機嫌が悪いときにしか出さない、親友の敵意まるだしの声。
応えた俺もまったくおんなじような声をしていた。
「ミホミのヤツ……なんであんな野郎と話してんだろ」
「女子と俺達の人間関係って全然違うかんな。たとえ吉岡がソウタの幼馴染でもそういうのは気にしないんだろ?」
「……」
理屈ではわかってる。
でも。
それでも俺はイライラが募ってきた。
なんでだろう?
これまでも似たようなことは何度かあったと思うけど。
でも今日はやけにミホミがアイツとにこやかに話しているのが気に入らない。
ヤマダはいつもの通り、一部の女子がキャーキャー言ってるキザったらしい感じでしきりにミホミに話しかけている。
そしてミホミは学校でよくしてる「女子っぽい」感じで笑ってる。
ミホミは俺と一緒の時はあんなだけど、基本的に学校だと外向きの顔をしてるんだ。
「うきゃー」とか「むふー」とか全然言わない、あんなにワガママで好戦的なところは全然見せない。
それこそ「普通の女子」って感じになる。
そしてそんな態度こそが学校の同級生にとっては「吉岡御火美」その人に他ならなかった。
別にそのこと自体は人それぞれ、時と場所で性格なんて結構変わるから特に気にしたことはないんだけど。
今日はいやにそれが気になる。
ヤマダとそれがワンセットなのが癪に障る。
ミホミのヤツがこの頃よくしているポニーテールの髪型とスカートの格好。
そんな姿と仕草をソイツの前ですんじゃねえよって腹が立つ。
でも同時に俺の前じゃあんな外向きの顔じゃなくて、本当の顔を見せてくれているっていう妙な優越感も沸いてきて。
なんなんだよ。
と、思った瞬間にミホミが俺に気がついた。
すっと視線をこちらを向けたかと思うと、親しげに笑いかけてくる。
“なーによ?”
なんて声が聞こえてきそうな感じの笑顔。
外向きじゃない、俺の前で何時も見せるいたずらっぽい得意げな表情。
俺はそんなミホミの笑顔がヤマダの隣にある状態がさらに我慢ができなくなって思わず視線をそらした。
そしてダンダンと足音を立てながらベーやんと一緒にその場を後にした。
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