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陰キャに優しいギャルなんて存在しない……はずだった!? 〜付き合い始めたら毎日が過剰デレのオーバーキル〜
第4話: 図書委員の後輩と、嫉妬のギャル 〜静かなる火花と上書きの儀式〜
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放課後の図書室。
そこは、俺、佐藤湊(さとう みなと)にとって、現世に唯一残された「非武装地帯」であり、魂の浄化施設であった。
(……ああ。空気が、空気が美味しい。紙の焼けるような匂いと、蓄積された埃の微かな刺激。これこそが、僕の傷ついた『陰キャ細胞』を修復する唯一の特効薬だ……)
先週末の「お家デート」での出来事を思い出すだけで、俺の脳内ニューロンは過剰な多幸感という名の毒素によって、今なお焼き切れそうな状態にある。瀬戸結衣という名の太陽に焼かれすぎた俺の肌は、もはやこの図書室の薄暗い書庫の奥でしか、その安寧を保つことができなかった。
俺は図書委員の腕章を締め直し、カウンターの奥で静かに作業を開始した。
カチ、カチ、と静かに響く貸出返却用端末のクリック音。
そして、その隣で黙々と新着図書のラベル貼りを進めているのが、後輩の小鳥遊 栞(たかなし しおり)だ。
「…………先輩」
栞が、蚊の鳴くような、それでいて澄んだ声で呟いた。
「……はい、何でしょうか。僕のラベル貼りの速度が、君の美学に反するほど鈍亀(のろがめ)でしたか」
「……いえ。……先輩、今日は、少しだけ『光』が強すぎます」
栞は、分厚いレンズの奥にある瞳を細め、俺の顔をじっと見つめてきた。
「……光、ですか」
「……瀬戸先輩の匂いがします。……先輩の魂が、無理やり明るい場所に引き摺り出されて、ボロボロになっているのが……見えます」
俺は、背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
小鳥遊栞。彼女は俺と同じ「日陰の住人」であり、言葉を使わずとも「空気」で意思を疎通させることができる、稀有な同族だ。彼女との時間は、結衣との「精神的格闘技」とは対極にある、実家に帰ったような、あるいは静かな湖底に沈んでいるような、絶対的な安心感に満ちていた。
(……これだ。これこそが僕の求めていた人間関係の最適解。小鳥遊さんは僕に『あーん』を強要しない。ベッドに誘い込んで理性を試したりもしない。ただ、沈黙を共有してくれる……)
「……小鳥遊さん。君はやはり、僕の良き理解者ですね。……確かに、今の僕は、一軍ギャルの放つオーバーキルなデレによって、精神的瀕死状態にあります」
「……助けて、あげたいです。……先輩は、もっと暗いところで、ゆっくり息をすべき人だから」
栞が、整理中のワゴンから一冊の本を取り出した。
それは、俺がずっと予約していたマイナーな民俗学の資料本、『孤立集落における禁忌の変遷』だった。
「……! それは、僕が狙っていた……」
「……先輩が好きそうだと思って、先に確保しておきました。……あと、これについての解説動画、見つけました。……見ますか?」
栞はそう言うと、制服のポケットからタブレットを取り出した。
図書室は私語厳禁。動画を見るにしても、音を出すわけにはいかない。
「……あ、でも、イヤホンが……」
「……あります。……半分、使いますか?」
栞が、自然な、あまりにも自然な動作で、有線イヤホンの片方を俺に差し出した。
俺は躊躇した。だが、彼女の瞳には下心など微塵もなく、ただ「共有したい」という純粋な好意だけがあった。
(……待て。これは『間接耳』か!? 物理的な接触こそないが、一本の細い有線で繋がっているこの状況は、実質的にへその緒で繋がっているのと同義ではないか!? いや、だが相手は小鳥遊さんだ。これは知的な交流であって、瀬戸さんがやるような破廉恥な行為とは一線を画す……はずだ!)
俺は震える手で、イヤホンを左耳に装着した。
栞がタブレットの再生ボタンを押す。
二人の距離は、十五センチ。
彼女の黒髪から漂う、石鹸の控えめな匂い。
イヤホンを通じて、俺と彼女は今、同じ音を、同じ世界を共有している。
その瞬間。
ガラッ! と、図書室の扉が、静寂を切り裂くような勢いで開かれた。
「湊くーん! お迎えにきたよーっ!」
その声を聞いた瞬間、俺の心臓はドラムロールのように激しく打ち鳴らされた。
現れたのは、もちろん、瀬戸結衣だ。
彼女はいつもの太陽のような笑顔を浮かべて、カウンターへと駆け寄ってきた。
だが。
俺と栞が、一本の有線イヤホンで繋がっている光景を目にした瞬間。
パキリ。
そんな音が聞こえてきそうなほど、結衣の笑顔が、完璧に固まった。
「…………あれ? 湊くん、何してるの?」
結衣の瞳から、光が消えた。
彼女の声は明るいままだが、その奥にある温度は、一気に氷点下まで叩き落とされている。
「……っ!? せ、瀬戸さん……いや、結衣! これは、その、不適切な関係ではなく、あくまで図書委員としての業務の一環であり、小鳥遊さんから民俗学的な知見を授かっていただけで……」
「……半分、こ、してたんだ。イヤホン」
結衣が、一歩、カウンターの中に踏み込んできた。
彼女の放つ「一軍の威圧感」に、図書室の空気がビリビリと震える。
「……初めまして。小鳥遊栞、です」
意外にも、先に口を開いたのは栞だった。
彼女はイヤホンを外し、静かに結衣を見据えた。その表情には、怯えなど微塵もない。
「……湊くんの後輩ちゃん、だよね? いつも湊くんがお世話になってます。彼女の、瀬戸結衣です」
「……『彼女』。……そう、なんですね」
栞が、微かに首をかしげた。
「……瀬戸先輩。……先輩は、佐藤先輩を、眩しい場所に連れ出しすぎです。……先輩は今、とても疲れています。……先輩に必要なのは、光ではなく、癒やしの影です。……私なら、それを与えられます」
静かな、しかし確実な宣戦布告。
俺の「脳内セキュリティ・システム」が、かつてない音量で警報を鳴らし始めた。
『警告! 警告! カテゴリー5の巨大災害(ギャル)と、未知の深海生物(後輩)が正面衝突しました! 直ちに避難してください!』
「……へぇ。癒やしの影、ね」
結衣が、クスクスと笑い出した。
だが、その目は全く笑っていない。
「ありがとね、後輩ちゃん。でも、心配いらないよ。湊くんを一番癒やせるのは、私(・)だ(・)か(・)ら(・)。……ねえ、湊くん? 帰ろ?」
結衣が、俺の腕を強引に掴んだ。
彼女の手は、微かに震えていた。
それは恐怖ではなく、抑えきれない「独占欲」の震えだった。
「……し、失礼します、小鳥遊さん! 業務の続きは、また明日!」
「……はい。……先輩。……また、暗いところで」
栞の、どこか意味深な言葉を背中に受けながら、俺は結衣に引き摺られるようにして図書室を出た。
校舎の裏。人影のない、薄暗い書庫の搬入口。
結衣はそこで立ち止まると、俺を壁際に追い詰め、両手で「壁ドン」を敢行した。
(……ひいっ!? き、きた……! これは、不貞を働いたモブに対する粛清だ! 僕はここで、瀬戸さんの厚底サンダルで踏み潰され、校舎の礎石として埋められるんだ……!)
「……湊くん」
結衣の声は、震えていた。
彼女は俺の胸に顔を埋め、消え入りそうな声で囁いた。
「……ずるいよ。あんな子に、私に見せないような、安心しきった顔見せるなんて」
「……結衣、それは誤解です。僕はただ、同じ『陰』の属性を持つ者として、親近感を……」
「嫌だ。親近感も、安心も、全部私だけがいい」
結衣が、俺の制服の裾を強く握りしめた。
そして、彼女は俺の首筋に顔を寄せ、深く、深く息を吸い込んだ。
「…………っ!? な、何をして……っ」
「……あの子の匂い、上書きさせて。……湊くんの中に、私以外の色が入ってるの、耐えられないもん」
結衣が、俺の耳元を甘噛みせんばかりの距離で、熱い吐息と共に囁く。
「……ねえ、湊くん。私、あの子が言ったこと、絶対認めない。……私が、湊くんの世界を、全部私の色で塗り替えてあげる。……光も、影も、全部私だけでいっぱいにしてあげるから。……覚悟してね?」
それは、これまでに見せた「明るいデレ」とは一線を画す、執着に満ちた「独占欲のオーバーキル」だった。
結衣の指が、俺の頬を撫で、そのまま俺の首筋に吸い付くように押し当てられる。
(……終わった。僕の理性が、ホワイトアウトしていく。……彼女の匂い。彼女の熱。……他の誰でもない、瀬戸結衣という特級の劇薬が、僕の脳内を完全に支配していく……!)
「……帰ったら、電話して。……寝るまで、私の声以外、聞かせないんだから」
結衣はそう言うと、真っ赤になった顔を隠すようにして、俺の手を今までで一番強く握りしめた。
帰り道。
沈む夕日が、俺たちの影を一つに繋いでいた。
――結論。
図書室は、もはや避難所ではない。
そこは、一軍ギャルの嫉妬を煽り、より過激で、より歪な愛を誘発させるための、最高にデンジャラスな火薬庫へと変貌してしまったのだ。
俺の心臓は、いまだに結衣の囁きの余韻で、狂ったように脈打っている。
「幸せ」と「恐怖」の境界線が、もうどこにも見当たらない。
一方その頃。
誰もいなくなった図書室で、小鳥遊 栞は、湊が貸出処理をした本の履歴を、静かに指でなぞっていた。
「……先輩。……あなたは、あんな眩しい場所にいてはいけない人です。……私が、必ず。……あの光から、救い出してあげますから」
栞の瞳には、静かな、しかし確固たる決意の炎が宿っていた。
――陰キャに優しいギャルは実在した。
だが、その優しさは、俺を巡る「二つの深淵」の争いを招く、終わりの始まりに過ぎなかった。
そこは、俺、佐藤湊(さとう みなと)にとって、現世に唯一残された「非武装地帯」であり、魂の浄化施設であった。
(……ああ。空気が、空気が美味しい。紙の焼けるような匂いと、蓄積された埃の微かな刺激。これこそが、僕の傷ついた『陰キャ細胞』を修復する唯一の特効薬だ……)
先週末の「お家デート」での出来事を思い出すだけで、俺の脳内ニューロンは過剰な多幸感という名の毒素によって、今なお焼き切れそうな状態にある。瀬戸結衣という名の太陽に焼かれすぎた俺の肌は、もはやこの図書室の薄暗い書庫の奥でしか、その安寧を保つことができなかった。
俺は図書委員の腕章を締め直し、カウンターの奥で静かに作業を開始した。
カチ、カチ、と静かに響く貸出返却用端末のクリック音。
そして、その隣で黙々と新着図書のラベル貼りを進めているのが、後輩の小鳥遊 栞(たかなし しおり)だ。
「…………先輩」
栞が、蚊の鳴くような、それでいて澄んだ声で呟いた。
「……はい、何でしょうか。僕のラベル貼りの速度が、君の美学に反するほど鈍亀(のろがめ)でしたか」
「……いえ。……先輩、今日は、少しだけ『光』が強すぎます」
栞は、分厚いレンズの奥にある瞳を細め、俺の顔をじっと見つめてきた。
「……光、ですか」
「……瀬戸先輩の匂いがします。……先輩の魂が、無理やり明るい場所に引き摺り出されて、ボロボロになっているのが……見えます」
俺は、背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
小鳥遊栞。彼女は俺と同じ「日陰の住人」であり、言葉を使わずとも「空気」で意思を疎通させることができる、稀有な同族だ。彼女との時間は、結衣との「精神的格闘技」とは対極にある、実家に帰ったような、あるいは静かな湖底に沈んでいるような、絶対的な安心感に満ちていた。
(……これだ。これこそが僕の求めていた人間関係の最適解。小鳥遊さんは僕に『あーん』を強要しない。ベッドに誘い込んで理性を試したりもしない。ただ、沈黙を共有してくれる……)
「……小鳥遊さん。君はやはり、僕の良き理解者ですね。……確かに、今の僕は、一軍ギャルの放つオーバーキルなデレによって、精神的瀕死状態にあります」
「……助けて、あげたいです。……先輩は、もっと暗いところで、ゆっくり息をすべき人だから」
栞が、整理中のワゴンから一冊の本を取り出した。
それは、俺がずっと予約していたマイナーな民俗学の資料本、『孤立集落における禁忌の変遷』だった。
「……! それは、僕が狙っていた……」
「……先輩が好きそうだと思って、先に確保しておきました。……あと、これについての解説動画、見つけました。……見ますか?」
栞はそう言うと、制服のポケットからタブレットを取り出した。
図書室は私語厳禁。動画を見るにしても、音を出すわけにはいかない。
「……あ、でも、イヤホンが……」
「……あります。……半分、使いますか?」
栞が、自然な、あまりにも自然な動作で、有線イヤホンの片方を俺に差し出した。
俺は躊躇した。だが、彼女の瞳には下心など微塵もなく、ただ「共有したい」という純粋な好意だけがあった。
(……待て。これは『間接耳』か!? 物理的な接触こそないが、一本の細い有線で繋がっているこの状況は、実質的にへその緒で繋がっているのと同義ではないか!? いや、だが相手は小鳥遊さんだ。これは知的な交流であって、瀬戸さんがやるような破廉恥な行為とは一線を画す……はずだ!)
俺は震える手で、イヤホンを左耳に装着した。
栞がタブレットの再生ボタンを押す。
二人の距離は、十五センチ。
彼女の黒髪から漂う、石鹸の控えめな匂い。
イヤホンを通じて、俺と彼女は今、同じ音を、同じ世界を共有している。
その瞬間。
ガラッ! と、図書室の扉が、静寂を切り裂くような勢いで開かれた。
「湊くーん! お迎えにきたよーっ!」
その声を聞いた瞬間、俺の心臓はドラムロールのように激しく打ち鳴らされた。
現れたのは、もちろん、瀬戸結衣だ。
彼女はいつもの太陽のような笑顔を浮かべて、カウンターへと駆け寄ってきた。
だが。
俺と栞が、一本の有線イヤホンで繋がっている光景を目にした瞬間。
パキリ。
そんな音が聞こえてきそうなほど、結衣の笑顔が、完璧に固まった。
「…………あれ? 湊くん、何してるの?」
結衣の瞳から、光が消えた。
彼女の声は明るいままだが、その奥にある温度は、一気に氷点下まで叩き落とされている。
「……っ!? せ、瀬戸さん……いや、結衣! これは、その、不適切な関係ではなく、あくまで図書委員としての業務の一環であり、小鳥遊さんから民俗学的な知見を授かっていただけで……」
「……半分、こ、してたんだ。イヤホン」
結衣が、一歩、カウンターの中に踏み込んできた。
彼女の放つ「一軍の威圧感」に、図書室の空気がビリビリと震える。
「……初めまして。小鳥遊栞、です」
意外にも、先に口を開いたのは栞だった。
彼女はイヤホンを外し、静かに結衣を見据えた。その表情には、怯えなど微塵もない。
「……湊くんの後輩ちゃん、だよね? いつも湊くんがお世話になってます。彼女の、瀬戸結衣です」
「……『彼女』。……そう、なんですね」
栞が、微かに首をかしげた。
「……瀬戸先輩。……先輩は、佐藤先輩を、眩しい場所に連れ出しすぎです。……先輩は今、とても疲れています。……先輩に必要なのは、光ではなく、癒やしの影です。……私なら、それを与えられます」
静かな、しかし確実な宣戦布告。
俺の「脳内セキュリティ・システム」が、かつてない音量で警報を鳴らし始めた。
『警告! 警告! カテゴリー5の巨大災害(ギャル)と、未知の深海生物(後輩)が正面衝突しました! 直ちに避難してください!』
「……へぇ。癒やしの影、ね」
結衣が、クスクスと笑い出した。
だが、その目は全く笑っていない。
「ありがとね、後輩ちゃん。でも、心配いらないよ。湊くんを一番癒やせるのは、私(・)だ(・)か(・)ら(・)。……ねえ、湊くん? 帰ろ?」
結衣が、俺の腕を強引に掴んだ。
彼女の手は、微かに震えていた。
それは恐怖ではなく、抑えきれない「独占欲」の震えだった。
「……し、失礼します、小鳥遊さん! 業務の続きは、また明日!」
「……はい。……先輩。……また、暗いところで」
栞の、どこか意味深な言葉を背中に受けながら、俺は結衣に引き摺られるようにして図書室を出た。
校舎の裏。人影のない、薄暗い書庫の搬入口。
結衣はそこで立ち止まると、俺を壁際に追い詰め、両手で「壁ドン」を敢行した。
(……ひいっ!? き、きた……! これは、不貞を働いたモブに対する粛清だ! 僕はここで、瀬戸さんの厚底サンダルで踏み潰され、校舎の礎石として埋められるんだ……!)
「……湊くん」
結衣の声は、震えていた。
彼女は俺の胸に顔を埋め、消え入りそうな声で囁いた。
「……ずるいよ。あんな子に、私に見せないような、安心しきった顔見せるなんて」
「……結衣、それは誤解です。僕はただ、同じ『陰』の属性を持つ者として、親近感を……」
「嫌だ。親近感も、安心も、全部私だけがいい」
結衣が、俺の制服の裾を強く握りしめた。
そして、彼女は俺の首筋に顔を寄せ、深く、深く息を吸い込んだ。
「…………っ!? な、何をして……っ」
「……あの子の匂い、上書きさせて。……湊くんの中に、私以外の色が入ってるの、耐えられないもん」
結衣が、俺の耳元を甘噛みせんばかりの距離で、熱い吐息と共に囁く。
「……ねえ、湊くん。私、あの子が言ったこと、絶対認めない。……私が、湊くんの世界を、全部私の色で塗り替えてあげる。……光も、影も、全部私だけでいっぱいにしてあげるから。……覚悟してね?」
それは、これまでに見せた「明るいデレ」とは一線を画す、執着に満ちた「独占欲のオーバーキル」だった。
結衣の指が、俺の頬を撫で、そのまま俺の首筋に吸い付くように押し当てられる。
(……終わった。僕の理性が、ホワイトアウトしていく。……彼女の匂い。彼女の熱。……他の誰でもない、瀬戸結衣という特級の劇薬が、僕の脳内を完全に支配していく……!)
「……帰ったら、電話して。……寝るまで、私の声以外、聞かせないんだから」
結衣はそう言うと、真っ赤になった顔を隠すようにして、俺の手を今までで一番強く握りしめた。
帰り道。
沈む夕日が、俺たちの影を一つに繋いでいた。
――結論。
図書室は、もはや避難所ではない。
そこは、一軍ギャルの嫉妬を煽り、より過激で、より歪な愛を誘発させるための、最高にデンジャラスな火薬庫へと変貌してしまったのだ。
俺の心臓は、いまだに結衣の囁きの余韻で、狂ったように脈打っている。
「幸せ」と「恐怖」の境界線が、もうどこにも見当たらない。
一方その頃。
誰もいなくなった図書室で、小鳥遊 栞は、湊が貸出処理をした本の履歴を、静かに指でなぞっていた。
「……先輩。……あなたは、あんな眩しい場所にいてはいけない人です。……私が、必ず。……あの光から、救い出してあげますから」
栞の瞳には、静かな、しかし確固たる決意の炎が宿っていた。
――陰キャに優しいギャルは実在した。
だが、その優しさは、俺を巡る「二つの深淵」の争いを招く、終わりの始まりに過ぎなかった。
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