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階段の前
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「え?」
至は、今いる荒れ果てた廃別荘にそぐわない間抜けな声を出す。
本当に、理解しがたかったから。
葵が告げた真実で、出来た緊迫した雰囲気も飛んだ。
「えっ…」
至にすぐ分かって貰えたと思いこんでた葵も、直立不動で戸惑う。
しかし…
「あっ、えーっとそうだなぁ…残留思念っていうのは…もっと至に分かり易く噛み砕いて言うと…」
葵は、右手を口元に当てて下を見て、余りオカルトに理解力の無い至の為に優しく真剣に悩む。
するとクスっと、至が笑う。
葵は、怪訝そうに視線を至に向けた。
「あっ…いや…ゴメン…葵って、やっぱ優しいなぁって…4年ぶりに会ったけど変わってなくて、俺ちょっと安心した…」
至がニコニコすると、葵は、何だかバツが悪そうに、まるで照れているように視線を横に向けた。
しかし、至には分からん事だらけだし、葵には、さっきは僚の真似をしていたのか?他にも聞きたい事が山のようにあったので…
兎に角、本当に女性達がこの建物にいるなら先に助ける事にして…
葵とは、後でゆっくり一緒に話しをしようと思った。
「よく、分かんないけど、女の人達、ここにいるんだよな?」
至は、ミシッと足音をさせ一歩前へ出た。
しかし…
そこを、又葵が至の左腕を持って止めた。
「ちょっと…待ちやがれ!」
その葵らしからぬ言い方に、至は変な予感に戦慄して、恐る恐る振り返った。
そして、至のそれは正しかった。
葵は一変、又、僚のような目付き、表情になっていた。
「おっ…お前って、今もしかして僚?」
至が呟くと、僚のような葵はニッと笑った。
「よく分かってんじゃん!さっすが至!」
葵の体が、至を抱き締めた。
強く…
「やっぱ、お前だけは…お前だけは、俺達が分かるな…」
「俺…達?」
至は体を離し、僚のような葵の顔を見た。
「そう…俺達だ…」
僚は、死んだはずだ…
もう、葵しかいないはずだ…
至は、言ってる事が又訳が分からなくて…
真実かどうかも分からなくて…
ぼーっと見続ける。
そこに、僚のような葵が突然呟き、目の前の広い階段下を指さした。
「至…おばちゃん達を助けに行くのはいいが…その前に、あの階段の前に女がいるの分かってないだろ?」
「女?」
階段の前には、誰もいない。
ただ、上の方の窓から光が差して、その光に埃の細かい粒子が舞っているのしか見えない。
「何?女なんて…見えないよ…もっ、もう止めろよ…そんな事言うの…本当に俺ダメだから」
「それがいるんだよ。黄色のワンピースを着てる」
だが、何度見ても、至るには見えない。
そして、少しヤケになってしまい聞いてみた。
「じゃ、その幽霊、幾つ位の人?かわいい?美人?」
それを聞き僚のような葵は、何を思ったのか?チラっと至を冷めた目で見た。
「お前、そこが気になるわけ?」
「おっ、おお…」
至が引き気味に答えると、僚のような葵は、又ニッと笑った。
「そうだな…若くて、すんげー美人」
「えっ?えっ?本当に?そんなに美人?そんなに?」
単純な至は思わずめちゃくちゃ食いつくと、僚のような葵は不機嫌そうになり言った。
「なら…見てみるか?その美人…」
「え?」
「見せてやるよ…お前に…」
僚のような葵は、あの黒紫色の渦模様のある左手を、今度は至の頭上にポンと置いた。
すると…
至の目の前に…
黄色のワンピースを着た、サラサラのキレイな長い黒髪の…
顔から全身、ガイ骨の女がいた。
至は、今いる荒れ果てた廃別荘にそぐわない間抜けな声を出す。
本当に、理解しがたかったから。
葵が告げた真実で、出来た緊迫した雰囲気も飛んだ。
「えっ…」
至にすぐ分かって貰えたと思いこんでた葵も、直立不動で戸惑う。
しかし…
「あっ、えーっとそうだなぁ…残留思念っていうのは…もっと至に分かり易く噛み砕いて言うと…」
葵は、右手を口元に当てて下を見て、余りオカルトに理解力の無い至の為に優しく真剣に悩む。
するとクスっと、至が笑う。
葵は、怪訝そうに視線を至に向けた。
「あっ…いや…ゴメン…葵って、やっぱ優しいなぁって…4年ぶりに会ったけど変わってなくて、俺ちょっと安心した…」
至がニコニコすると、葵は、何だかバツが悪そうに、まるで照れているように視線を横に向けた。
しかし、至には分からん事だらけだし、葵には、さっきは僚の真似をしていたのか?他にも聞きたい事が山のようにあったので…
兎に角、本当に女性達がこの建物にいるなら先に助ける事にして…
葵とは、後でゆっくり一緒に話しをしようと思った。
「よく、分かんないけど、女の人達、ここにいるんだよな?」
至は、ミシッと足音をさせ一歩前へ出た。
しかし…
そこを、又葵が至の左腕を持って止めた。
「ちょっと…待ちやがれ!」
その葵らしからぬ言い方に、至は変な予感に戦慄して、恐る恐る振り返った。
そして、至のそれは正しかった。
葵は一変、又、僚のような目付き、表情になっていた。
「おっ…お前って、今もしかして僚?」
至が呟くと、僚のような葵はニッと笑った。
「よく分かってんじゃん!さっすが至!」
葵の体が、至を抱き締めた。
強く…
「やっぱ、お前だけは…お前だけは、俺達が分かるな…」
「俺…達?」
至は体を離し、僚のような葵の顔を見た。
「そう…俺達だ…」
僚は、死んだはずだ…
もう、葵しかいないはずだ…
至は、言ってる事が又訳が分からなくて…
真実かどうかも分からなくて…
ぼーっと見続ける。
そこに、僚のような葵が突然呟き、目の前の広い階段下を指さした。
「至…おばちゃん達を助けに行くのはいいが…その前に、あの階段の前に女がいるの分かってないだろ?」
「女?」
階段の前には、誰もいない。
ただ、上の方の窓から光が差して、その光に埃の細かい粒子が舞っているのしか見えない。
「何?女なんて…見えないよ…もっ、もう止めろよ…そんな事言うの…本当に俺ダメだから」
「それがいるんだよ。黄色のワンピースを着てる」
だが、何度見ても、至るには見えない。
そして、少しヤケになってしまい聞いてみた。
「じゃ、その幽霊、幾つ位の人?かわいい?美人?」
それを聞き僚のような葵は、何を思ったのか?チラっと至を冷めた目で見た。
「お前、そこが気になるわけ?」
「おっ、おお…」
至が引き気味に答えると、僚のような葵は、又ニッと笑った。
「そうだな…若くて、すんげー美人」
「えっ?えっ?本当に?そんなに美人?そんなに?」
単純な至は思わずめちゃくちゃ食いつくと、僚のような葵は不機嫌そうになり言った。
「なら…見てみるか?その美人…」
「え?」
「見せてやるよ…お前に…」
僚のような葵は、あの黒紫色の渦模様のある左手を、今度は至の頭上にポンと置いた。
すると…
至の目の前に…
黄色のワンピースを着た、サラサラのキレイな長い黒髪の…
顔から全身、ガイ骨の女がいた。
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