クレイジー&クレイジー

柚木ハルカ

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07.アナルを弄られる

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 なん、だろうか?

 そのままどこかに行ってくれるはずもなく、カチン、カチン、と2回、金属音が聞こえてきた。……トランクを開けた音のようだ。それからガサガサと、ビニールの音がしてくる。

 何をしているか不明だが、とりあえず上げていた腰は下ろした。

「ちょっと冷たいですから」

 しばらくして律儀に言葉を掛けられたあと、尻の間に冷たいものが垂らされた。ビクッと腰が跳ねるし、さらにはアナルを撫でられるから、反射的に背筋が震える。

「ッ……な、なに……」
「媚薬入りローションですよ。ビルを出る時に、ついでに購入したんです。調教道具を一式。あの企業、裏では悪行ばかりしていますが、表向きはアダルトグッズを販売している会社ですからね。一般にも販売しているので、人体に悪影響を及ぼすような毒物が混入している心配はありません。なので安心してください」

 そんなこと言われても、安心なんて出来るはずがない。抵抗したらチンコを潰されると脅され、尻に媚薬入りローションを塗られている現状で喜べるとしたら、確実に変態だ。

「いろんな道具が入っていたので、さっそく使ってさしあげます。でもまずは、慣らさないと」

 そんな汚い場所、見られるだけでも屈辱だし恥ずかしいのに、触られるともっと羞恥が込み上げてくる。マジで逃げたい、でも逃げられない。

「……ぅ、……う、……んんっ」

 ローションを染み込ませるように表面を撫でられて、時々穴を押してくる。そのたび、ひくりとアナルが収縮した。とろみのある液体を馴染まされているせいか、それとも媚薬のせいなのか、嫌なのに指を咥えようとしてしまう。

 だんだん気持ち良くなってきて、それでも意地で喘がないように歯を食い縛っていると、突然ぬるりと指が入ってきた。ローションのせいで痛みもなく簡単に侵入されて、さらには縁を広げられている感覚が気持ち良くて、ゾクゾクした快感が湧いてくる。嫌なのに感じてしまっていることが情けなくて、涙が滲む。

「うぅ、ぐ……んぅ……」
「中、温かいですね。それに柔らかい。ほら、わかりますか? 弘樹さんのアナル、俺の指を美味しそうにしゃぶっていますよ」
「ち、違う、……ん、んう」

 どれだけ否定しても、指1本咥えている穴は、悪寒のような気持ち良さのせいできゅうきゅう締め付けてしまっていた。感じたくなくて、どうにか締め付けないように縁を広げようとして。けれどクンッと小さく動かされるだけで、再びきゅううと締め付けてしまう。

「ぁん、……や、やだ……ふ、んん」
「言葉でいくら否定しても、身体は素直ですよね」
「くそっ、あ……ぁう、ん、やめ、……っ!」

 必死に感じないようにしているのに、指がくにくに動いてきた。胎内を刺激されて、快楽を含んだ排泄感が這い上がり、穴から背筋まで悪寒がいくつも駆け抜けていく。くん、くん、と腸壁の内側を押されるたび、反射的に指を締め付けてしまう。

 にゅぷにゅぷと身体から響いて聞こえてくる音に、だんだん泣きたくなってきた。こんな屈辱的なことをされていながら、感じてしまっている事実が、あまりにも情けない。
 というかすでにだいぶ涙が滲んでしまい、目隠しされている布の湿りが気持ち悪いので、外したい。それに快感からの熱さで、汗も滲んでいる。

「あ……っ、うぅ……ん、……んぐっ」

 指が2本に増やされて、先程よりも広げられた縁に、大きく腰が震えた。駄目だ、ゾクゾクする。気持ち良くて、勝手に腰が動いてしまう。

 感じたくない、でも気持ち良い、気持ち良い。これは絶対、媚薬のせいだ。

 それに神崎の指が、先程から内側の1点ばかりをさすっていて、なんだかどんどん身体がおかしくなっている。
 だが動く指を止めようと強く締め付けても、余計に感じてしまって呻きが漏れるだけ。

 だからひたすら受け入れていたら、ふと蓄積していた違和感が、ぶわっと強烈な快楽となり、思わず背筋が反れた。

「んあっ? ひ、うぅ!?」
「ああ、感じてきましたね。ここ、このちょっと膨らんでいる部分は前立腺と言って、男性がよく感じる場所らしいです」
「ひ……ッ、や、嫌だ、そこは止め……あうぅっ!」

 異様に感じる場所を執拗に責められ、弄られて、ビクビクと身体が大きく痙攣した。こんなの嫌だと思うのに、あまりにも気持ち良いせいで神崎の指を許し、どうしても受け入れてしまう。

「弘樹さん、腰が動いてますよ。自分からこんなに尻を突き出して……淫乱ですね」
「ッ……!」

 艶やかな声色で囁かれた言葉に、ハッとなった。彼からの指摘に、自分の格好を思い返してしまい、カァッと顔が熱くなる。

 快楽に耐えようと背を逸らせて尻を上げて、指の入っているアナルが丸見えという状態。そのうえ腰を振っているなんて、どう考えても変態じゃねぇか。

 人が羞恥で死ねるとしたら、俺はもう確実に死んでいる。それくらい酷い格好だった。あまりの衝撃に心が軋んで、嗚咽が漏れてしまう。

「こんな……クソ、いやだ……うう、う……ひう、う」
「ああ、泣いてしまいましたか」
「……っ、るせぇ! もう、やめろ……ッ、……こんな、こと……!」

 泣きながら、言葉を吐き出した。
 もう我慢出来無かった。たとえチンコを握り潰されて激痛に見舞われようとも、これ以上、男としてのプライドを傷付けられたくない。情けない醜態を晒して、嘲笑われたくない。

 大金で買われた身であろうと――屈するのは絶対に嫌だ。絶対に、抗ってみせる。

 反抗したのに、神崎の纏う空気は変わらなかった。むしろズルリと、腸壁を擦りながら指を抜かれる。突然の喪失感に身体が震えたが、揶揄されることはなく、しかも何を考えているのか目を覆っていた布まで取られた。

 視界に現れたのは、自分を見下ろしてくる冷酷な双眸と、整っているせいでやけに綺麗に見える微笑。

 ゾクリとした恐怖に見舞われる。心臓に楔でも打たれたような緊迫に、快楽からではない汗が垂れる。それでも涙で濡れている目で、神崎を睨んだ。

「縄を、解け」
「……なるほど。恐怖に陥れられ、辱めを受けて、媚薬まで使われて……それでもなお反抗してくるなんて、さすがは死を突き付けられても気丈であり続けた人なだけあります。貴方といるだけで、こんなにも楽しい」

 クツクツと喉を鳴らす男の、あまり狂気に、つい怯みそうになった。だがここで目を逸らしてしまったら、確実に喰われる。激痛に見舞われる。とにかく威嚇して、身を守らなければ。
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