溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~〈本編完結済〉

夏笆(なつは)

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続きの物語 ~今へと続く道~

番外編 ~レオカディアのバレンタイン大作戦 中編~

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「・・・すみません、ねえ様。ぼくの才能が足りないばかりに」 

「いや。普通にすごいでしょ、これ」 

 テーブルに置いた装置を前に、しゅん、と肩を落とすブラウリオに、レオカディアは『いや、いや、いや』と全否定した。 

 ブラウリオが、短時間、且つ、屋敷にある物で作ったチョコレートファウンテンもどきは、噴水仕様にこそなっていないものの、くるくると円を描く、小さな流れるプールのようになっていて、とても楽しい。 

 

 ありあわせの材料しかなくて、しかも時間も要しないなんて。 

 私の弟、天才なのでは? 

 

「本当にすごいわ、ブラウリオ。明日は、これを使いましょう」 

「はいっ。ねえ様が喜んでくれたら、嬉しいです」 

「ふふ。嬉しいわよ。チョコレートを流して、色々な物を付けて食べましょうね」 

 追加でビスケットや果物を用意しないとと思いつつ、実際に食べることを想像したレオカディアは、自然と笑顔になった。 

「楽しみだな。ねえ様考案の、流れるチョコレート・・って、ねえ様。明日、これを使うと言いましたよね?それは、殿下たちとのお茶会で、ということですか?」 

「そうだけど?」 

 当然、と答えたレオカディアに、ブラウリオは小さく肩を竦める。 

「まあ、そうですよね。ぼくたち家族だけだったらな、なんて思いました」 

「家族でもするつもりだけど。ブラウリオ。殿下たちと、流れるチョコレートするのは、いや?」 

 もしそうなら、作ったのはブラウリオなのだからとレオカディアが言えば、ブラウリオは、何故か目をぱちぱちさせた後に、にやりと笑った。 

「いえ、大丈夫です!殿下たちとのお茶会で使いましょう!ぼくも、出席することですし」 

「そう?ならいいけど」 

 上機嫌になったブラウリオを不思議そうな目で見つめ、それでも、いいならいいかと、レオカディアは流れるチョコレートの装置を満足の瞳で見つめた。 

 

 

「ブラウリオとお兄様、それから、お父様とお母様には星型、セレスティノとヘラルドは丸、それで」 

 完成したチョコレートをひとつひとつ丁寧に箱詰めしながら、レオカディアは、甘酸っぱい気持ちでひとつの形を見つめた。 

 それは、エルミニオ用に作ったハート形のチョコレート。 

 これまでは、エルミニオがゲームのヒロインを選び、自分との婚約解消を望む可能性も考え、特別な贈り物をすることを忌避してきた。 

 しかし、ゲームのヒロインとエルミニオの間には何も生まれず・・というか、むしろエルミニオがヒロインを危険人物扱いするという、レオカディアの予想の斜め上を行く結末を迎えたため、これまでも言われてきた手作りのチョコレートを渡すことを決めた。 

「だって、婚約者なんだし。だから、手作りのチョコレートも普通だし、その形がハートだっていうのも、普通よ」 

 『それから、包装紙をこれにしたのも普通』と呟き、レオカディアは、特別に注文した薄紫の包装紙を手に取る。 

 この紙は、以前、製紙工場を視察に行った際に『この紫は素晴らしいね。ディアの瞳の色だ』と言っていたもので、今回特別に、そこに金を散らしてもらった。 

 『別に、自分の瞳の色に、エルミニオ様の瞳の色を散らしたわけじゃない・・こともない・・』と、ひとり顔を熱くしながら、レオカディアは包装していく。 

「そ、そうよ。全員同じ包装紙なんだから、気づかれないわよ。金色は、髪色でもあるし」 

 セレスティノとヘラルドは違うが、自分達家族はみな金髪だと、誰に言うでもなく言い訳しながら、レオカディアは、全員分の包装を終えた。 

「これで、それこそみんなの瞳の色のリボンをかければ、完璧」 

 ブラウリオへのチョコレートには新緑色、兄クストディオへのチョコレートには包装紙とは色味の異なる紫色、そして両親の分とリボンをかけ終えたところで、自室の扉がやわらかに叩かれ、廊下から侍女が声をかけて来た。 

「お嬢様。旦那様が、レストランの予約の件でお話ししたいことがおありとのことです」 

「分かったわ。すぐに行きます」 

 レストランの予約の件では、貴族なのだから優遇しろと言ってきたりと、これまでも色々あったので、特に気負うこともなく、レオカディアは父の執務室を目指した。 

 

 

「はあ。また、トラーゴ伯爵家だったわね。いったい、これで何度目・・って、ああ!」 

 やはり、貴族なのだからと当たり前のように割り込もうとする案件だったと、ため息を吐きながら自室に戻ったレオカディアは、同じ形状の三つの箱を前に固まった。 

 同じ大きさ、同じ形、そして同じ包装紙に包まれた、けれど中身の形がひとつだけ違うそれら。 

「ど、どれだったっけ!?」 

 このなかのどれかが、エルミニオ宛てのハートの形のチョコレートであることは間違いないが、もはやどれだかわからない。 

「い、一番左に置いた!?いえ、真ん中だったかも・・でも、一番最初に包んだから・・・あああ!リボンも最初にかけてしまうのだった!」 

 エルミニオに、初めて贈るチョコレート。 

 それなのに、それがどれか分からないなど大失敗だと、レオカディアは、まったく同じ様相の三つの箱を睨むように見つめた。 

~・~・~・~・
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