溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~〈本編完結済〉

夏笆(なつは)

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続きの物語 ~今へと続く道~

番外編 ~レオカディアのバレンタイン大作戦 後編~

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「・・・というわけで、この三つの箱のうち、どれがひとつがとくべ・・えっと、違う形をしているのだけれど、どれだか分からないので選んでください」 

 エルミニオ達を招いての、お茶会当日。 

 透視でもできないかと、睨む勢いで三つの箱を見つめた結果、どうにもならないことを悟ったレオカディアは、リボンをかけないまま、三つの箱をテーブルの上に置き、エルミニオ達に選択を促した。 

 こうなったら、三人に選んでもらって、その場でリボンをかけよう作戦である。 

 

 これなら、たとえエルミニオ様がハートの形のチョコレートを選んでくれなくても、私が、ヘラルドやセレスティノにわざわざ贈った、という形からは逃れられるわよね。 

 

 なんてなことを、呑気にも思ったレオカディアだが、エルミニオにそれは通じなかった。 

「ディア。今<特別>って言いかけたよね?つまり、このなかのひとつは、僕のためのものだったということじゃないのか?」 

 きらりと光る目で言われ、レオカディアは、背筋を冷たい汗が流れるのを感じつつ、えへらと笑ってみる。 

「そう・・なんだけど。でも、形だけなの。味は、一緒だから」 

「レオカディア。包みを開いて確認するわけには、いかないのか?」 

 至極尤もなことをセレスティノに言われるも、レオカディアはできないのだと首を横に振った。 

「この包装紙、特別注文なの。それで、あと二枚しかなくて」 

 もし万が一、三箱目まで当たりを引けなかった場合、包みなおすことができなくなってしまうのだと、レオカディアは肩を竦める。 

「この紙、あの時のものだろう?僕が、この紫はレオカディアの瞳のようだと言った」 

「・・・・・」 

「そこに、金を散らしたということは・・そういうことなんじゃないのか?期待、してもいいんだろう?」 

 ずい、と圧をかけられ、レオカディアは、目をそらしつつ頷いた。 

「・・・おっしゃる通り、です」 

「安心しろ、ディア。特別な形。僕が絶対に引き当ててみせるから」 

「エルミニオ様」 

 『特別なものを作ったのなら、きちんと僕にわたるようにしろ』などと言うこともなく、引き当てるから安心しろと胸を叩くエルミニオに、レオカディアは感動して目を潤ませる。 

「ああ。感動しているところ悪いが。そもそも、殿下の分は分かるようにしておけばよかったのではないか?」 

「ほんっと、その通りだよな。特別な物を作ったんなら、ちゃんと渡すまでわかるようにしておけ」 

 しかし、エルミニオのように甘くはないセレスティノとヘラルドに呆れたように言われ、レオカディアはおっしゃる通りと頷いた。 

「まあ、もらう側が言うことでもないな」 

「そうだな。余興だと思って、楽しめばいいさ」 

「では、ひとつ確認を。殿下。もし、特別な形を俺やヘラルドが引いても、文句なしってことでいいですよね?」 

「もちろんだ」 

 揶揄うように口の端をあげて言うセレスティノに、エルミニオは凛と了承する。 

「あれ?ねえ様。ぼくのも分かるようにしてあった、ってことは、また違う特別な形だったりするの?」 

 きちんと分かるようにしてあった・・既にリボンをかけ終えていたブラウリオのチョコレートは、既に無事、ブラウリオの手に渡っている。 

「ふふ。実は、そうなの。開けてのお楽しみ、にしてね」 

「うん!そうだ、皆さん。ぼくとねえ様の共同作業で、面白いものを作ったんですよ」 

 まずはじゃんけんで選ぶ順番を決めている三人に向かい、ブラウリオは優越の表情を浮かべた。 

「面白いもの?ディアとの共同作業・・・よし、勝った!もちろん、一番に指名する」 

「それは。もしかして、今日、披露してもらえるのですか?・・・二番勝ち。指定も二番目で」 

「レオカディアが考えたのなら、そりゃ面白いものだろうな・・・くそっ、負けた。でもまあ、残り物に福があるとも言うしな」 

 一番に『直観で、最初からこれだと思っていた』と、ひとつの箱を選んだエルミニオは、確信しているかの表情で、レオカディアにリボンをかけてもらう。 

「それで?ディアと共同作業で作った、面白いものとは?」 

「それは、見てのお楽しみです!」 

「ほう。自信満々だな」 

 瞳を輝かせて『乞うご期待です!』と声を弾ませるブラウリオに、同じく選び取った箱にリボンをかけてもらいながらセレスティノが揶揄うように言った。 

「なんだろうな。絶対に折れない剣とか?」 

「違いますよ。もっと、楽しいものです」 

「ふふ。そろそろ、準備しましょうか」 

 四人の遣り取りを聞いていたレオカディアは、そう言うと楽しそうに立ち上がって、侍女たちに指示を出す。 

「・・・へえ。面白い。溶かしたチョコレートが流れるようになっているのか。磁石の反発を使ったか」 

「え」 

「エルミニオ殿下。ブラウリオは年下で、レオカディアの弟なのですから、それほど敏感にならずともいいのでは?もっと、大人の対応をしてください」 

「えっと・・ということは、つまり?」 

「安心しろ、ブラウリオ。俺やレオカディアには、さっぱり分からないから」 

 エルミニオに突っ込まれ、セレスティノにも分かって当然と即座に言われてしまい、衝撃を受けたブラウリオだが、確かに分かっていなそうな自分の姉とヘラルドの存在に、救われたような気持ちになる。 

「ねえ様。ぼく、もっと精進します」 

「もう、十分すごいと思うけど」 

 周りが凄すぎるゆえにブラウリオが自信過剰になることはない、むしろ、過小評価しそうになったら止めようと心に決めるレオカディアに、エルミニオが、わくわくとした目を向けた。 

「ディア。この流れるチョコレート、どうするんだ?」 

「まさか、掬って飲むのか?」 

 『うまく飲めそうにない。だが、舐めるだけなら』と真剣に悩むヘラルドに、セレスティノも考え込む。 

「ココアよりずっと濃厚な、液体ョコレート。掬って、スポンジにでもかけるのか?」 

「すごい!セレスティノ!ほぼ、正解よ。このチョコレートに、ビスケットや果物を付けて食べるの・・こんな風に」 

 自らやってみせ、幸せに顔をほころばせたレオカディアは、同じようにして流れるチョコレートフォンデュを楽しむエルミニオ達の笑顔に、ほっこりと幸せな気持ちになった。 

~・~・~・~・
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