溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~〈本編完結済〉

夏笆(なつは)

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続きの物語 ~今へと続く道~

5、相違点発覚

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「なんていうか。マッターホルンは、マッターホルンなのね」 

 『元の世界との相違を探すのももちろん大切だけれど、自分達が知っている場所の過去も見たい』というレオカディアの願いにより、四人は仲良く元の世界でよく知るカフェ、マッターホルンに来ていた。 

「そうだね。ただ、この頃は話題の新店だったのだと、父上が言っていた」 

「ああ。うちの両親も、婚約時代、ふたりで来たと言っていたな」 

「俺んちの母親は、そんな二組のビッグカップルが行った場所だから是非行きたい、って、親父に強請って来たらしい」 

 『確かに新しいけれど、内装は変わらないのね』と、レオカディアが個室の内部を見渡していると、どこからか声が聞こえて来た。 

『ほんと。アデルミラ様が邪魔よね。エリアス王太子殿下には、リカルダ様こそがお似合いなのに』 

 その一言に、四人は目を見合わせ、口を噤む。 

 なんとなれば、アデルミラとはエルミニオの母である、現王妃陛下の名前であり、その声が聞こえたということは、自分達の話し声も聞こえていると予測される事態なのだから。 

「え。ここって、こんなに隣の声が聞こえたかしら」 

 そんなことはなかったはず、とレオカディアは、困惑の表情で、声を落としてエルミニオたちを見た。 

「いや。そんなことはなかったと記憶しているけれど」 

 同じく戸惑いの表情を見せたエルミニオの声を背に、ヘラルドとセレスティノは自分達が居る部屋の周りを確認する。 

「廊下で話をしているわけではないようだ」 

「こっちが当たりだ。隣のテラスでお茶をしている令嬢達がいる」 

 窓から外を確認したヘラルドがそう言い、四人は揃って耳を澄ませた。 

『大体、アデルミラ様はロサリオ公爵家のご令嬢だからって、優遇されすぎなのよ。リカルダ様のアルモンテ侯爵家だって、名家なのに』 

『そうよね。それなのに、エリアス王太子殿下ってば、アデルミラ様にはご自身の瞳の色の宝石を幾つも贈られて』 

『ふふ。ふたりとも、落ち着いて。エリアス様が、アデルミラ様にご自身のお色を贈られるのは、仕方のないことよ。だって、ご婚約者なのですもの。まあ、国益優先の、ですけれども』 

 ふふ、と笑う声はしとやかに聞こえるが、言っていることはひとつも事実ではないと、レオカディアは不快な気持ちで眉を寄せた。 

「何が、国益優先よ。陛下は王妃陛下を本当に大切に・・って。あれ?アルモンテ侯爵家って、確か、爵位返上となったわよね?」 

「ああ。ご婚約時代の現王妃陛下をかどわかそうとした事件をきっかけに、横領や脱税が発覚して、取り潰された家だな」 

 レオカディアの小声での疑問に、同じく小声でセレスティノが答える。 

「そして、その事件を事前に探知、回避したのだとは、父上自慢の話だ。母上を思う心の勝利だとか言って」 

「あ、その話、俺も知ってる。確か、収穫祭の後の夜会で王妃陛下を陥れるはずが、掘っていたのは己の墓穴だったって」 

 レオカディア達世代にも語り継がれる、国王陛下の活躍。 

 それが未だ起きていない時間線なのかと考えかけたレオカディアに、衝撃の言葉が届いた。 

『でも。アデルミラ様が大きな顔をしていられるもの、あと少しよ。お父様が、よいようにしてくださるから』 

『そうでしたわね。それどころか、貴族令嬢としても生きてはいけなくなりますわ』 

『アデルミラ様、なんて呼ぶのもあと少しだと思うと、おかしくて。少し前から、お会いするたびに笑ってしまいそうになりますの』 

『ああ、エリアス様。もう少しですわ。このリカルダが、その目を覚ましてさしあげます』 

「なっ」 

 その話を聞いたエルミニオが拳を握り、レオカディアは飛び出して行きそうになるのを、辛うじて抑えた。 

「これは。どうやら、変えられた歴史というのは、ここか」 

「じゃあ、俺らで、その計画をぶっ潰せばいいのか?」 

「それでは、歴史が変わってしまうだろう」 

「そうか。なら、どうやって潰す?」 

 そして、セレスティノとヘラルドは、瞳が笑っていない笑顔で物騒な会話を繰り広げる。 

「母上を護りつつ、父上に情報を流して促す」 

 リカルダ達の計画が、アデルミラを誘拐することなのか、それ以上のことなのかの判断は未だつかない。 

 ただ、誘拐が実行された場合、汚された令嬢は王妃に相応しくないと言われるのは、間違いない。 

 そして、リカルダが、そして彼女の生家であるアルモンテ侯爵家が、その旗頭となるつもりであることは明らか。 

「王妃様には、指一本触れさせはしないんだから」 

 怒りに瞳を燃え上がらせ、レオカディアは、決意を込めて、その拳を強く握った。 

~・~・~・~・
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