溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~〈本編完結済〉

夏笆(なつは)

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続きの物語 ~今へと続く道~

7、まさかの邂逅

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「みなさまぁ。お疲れさまですぅ。休憩になさってくださぁい」 

「お、レイナちゃんだ!」 

「今日も可愛いなあ」 

 見習い騎士と下級騎士の一団ということもあるのだろうが『これが騎士団の訓練?』と、エルミニオ達が疑問を持つような、訓練ともいえないような甘い訓練の最中さなか、レイナと名乗っているレオカディアが、水分補給だと水を持って現れた。 

 アルモンテ侯爵家に潜入して数日。 

 新米メイドレイナは既に、見習い騎士や下級騎士の癒しとなっている。 

「レオン兄さぁん。そんな怖い顔、しないでくださぁい」 

 そして、その状況に顔を顰めるエルミニオにもカップを差し出し、レオカディアはにこりと笑いかける。 

「お、レイナちゃん。従兄だからって、特別扱いは駄目だぞ」 

「していませんよぉ」 

 内心『するのは当たり前でしょ!』と思いつつ、そんなことはおくびにも出さずにレオカディアが言えば、ロベルトと名乗っているヘラルド、シルビオと名乗っているセレスティノが、わざとらしくレオン・・エルミニオの肩にそれぞれ肘を乗せた。 

「先輩方。こいつは、俺達いとこのなかでも、特別レイナを可愛がっているんで、勘弁してやってください」 

「レイナに近づく男は全員敵認定する、病みたいなものだと思って」 

「シルビオ兄さぁん、ロベルト兄さぁん。それじゃあ、あたしが病原菌みたぁい」 

 冗談のように言い合う・・否、レオカディアは完全に冗談、軽口だと思っているが、ヘラルドとセレスティノは違う。 

 普段から、レオカディアに近づく男は全員敵とばかり、目を光らせているエルミニオを間近で見ているがゆえの、偽りなしの真実だった。 

「じゃあ、みなさぁん。この後も、訓練がんばってくださぁい」 

 田舎から出て来たばかりの平民の娘、という設定のもと『私は女優』となり切りながら、役目を終えたレオカディアは、次なる仕事のため厨房へと向かう。 

 

 ふふ。 

 エルミニオ様やセレスティノ、ヘラルドがいとこっていう設定、すごく楽しい。 

 しかも『兄さま』じゃなくて『兄さん』って呼ぶのがツボだったのか、最初に『レオン兄さん』って呼んだとき、エルミニオ様なんて固まっちゃって可愛かったし。 

 まあ、聞いたことはあっても、自分が呼ばれるなんてこと、一生無いはずだったものねえ。 

 

 動揺しても仕方ない、然もありなんと、その時のエルミニオを、ご褒美のように思い出していたレオカディアの行く道を、ひとりの男が塞いだ。 

  

 え、なに。 

 確かこのひと、下級騎士よね? 

 

「レイナ。俺の女になれ」 

「はぁ?」 

 

 はあ!? 

 何を言ってくれちゃっているのよ! 

 絶対にお断りよ! 

 

「俺は見習いなんかじゃない、れっきとした騎士だし、特別な倉庫任務にも就いている、いわば選ばれた人間だ」 

 内心では、既に激しき拒絶しているレオカディアが、声に出しても拒絶しようとしたとき、気になる単語が聞こえて来た。 

「特別なぁ、倉庫ぉ?」 

「ああ。とりわけ大事な倉庫とかで、誰でもその任務に就けるわけじゃない」 

「ふぅん」 

  

 え、何その特別な倉庫って。 

 すっごく怪しいんだけど! 

 

 これは早くも、重要機密ゲットかと、レオカディアが期待に胸を膨らませていると、その下級騎士が、ぐっと距離を詰めて来た。 

「あのぉ。あたしぃ、騎士様のお名前も知らないですしぃ」 

「俺の名は、イポルト。さっきも言ったが選ばれし騎士だ。俺は、最近雇われた有象無象とは違う。それに父親は、もともと男爵家の次男。つまり貴族だ」 

 誇りなのだろう。 

 『そんな俺に選ばれたことを喜べ』と、いやらしい笑みを浮かべて言われ、レオカディアは『けっ!』と言いたくなるが、情報は欲しい。 

「でもぉ。特別な倉庫とか言われてもぉ、あたしぃ、そんなもの知らないしぃ。なにがぁ、特別なのかもぉ」 

「アルモンテ侯爵家にとって、重要な倉庫だ。なかでも朔の日の見張りは重要なんだが、俺は幾度も選ばれている」 

 

 それって、朔の日に特別な何かがあるってこと? 

 でも、下級騎士は、その内容まで知らされていないわよね。 

 

「わぁあ、すごいんですねぇ。あたしなんかぁ、とてもつりあわな・・っ」 

「そんなことはない。お前の容姿は、俺がでるに十分相応しい」 

 この下級騎士、イポルトから得られる情報はこれが限界だろうと、のらりくらり離れようとしたレオカディアの動きを封じるよう、イポルトがレオカディアを大木へと追い詰める。 

  

 うわっ。 

 下級でも、流石騎士ってこと!? 

 

「騎士として、恥ずかしい真似はよせ」 

 その時、凛とした声が響いて、ひとりの騎士が現れた。 

「なんだ!新人の分際で、俺に逆らうのか・・・ひっっ」 

 その騎士に対し、強気で応じたイポルトはしかし、素早い速さで首を抑え込まれ、情けない声をあげる。 

「腕でなく、剣で抑え込んでもいいのだが?」 

「きっ、きさま!覚えていろよ!」 

 腕一本で、難なく抑え込まれた屈辱からか、顔を真っ赤にしながら、イポルトは小物の代表のような捨て台詞を吐いて走り去って行った。 

「さて。そして貴様だが」 

 まるでレオカディアの救世主のように現れた騎士だが、その瞳に穏やかさは微塵もなく、レオカディアに向ける目も、犯罪者を相手にするかの如く、とても厳しい。 

 

 え、え。 

 お父様!? 

 

 しかしレオカディアは、蛇に睨まれた蛙のような状態に置かれながらも、信じられない現実に、目を大きく見開いた。 

~・~・~・~・
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