56 / 61
続きの物語 ~今へと続く道~
7、まさかの邂逅
しおりを挟む「みなさまぁ。お疲れさまですぅ。休憩になさってくださぁい」
「お、レイナちゃんだ!」
「今日も可愛いなあ」
見習い騎士と下級騎士の一団ということもあるのだろうが『これが騎士団の訓練?』と、エルミニオ達が疑問を持つような、訓練ともいえないような甘い訓練の最中、レイナと名乗っているレオカディアが、水分補給だと水を持って現れた。
アルモンテ侯爵家に潜入して数日。
新米メイドレイナは既に、見習い騎士や下級騎士の癒しとなっている。
「レオン兄さぁん。そんな怖い顔、しないでくださぁい」
そして、その状況に顔を顰めるエルミニオにもカップを差し出し、レオカディアはにこりと笑いかける。
「お、レイナちゃん。従兄だからって、特別扱いは駄目だぞ」
「していませんよぉ」
内心『するのは当たり前でしょ!』と思いつつ、そんなことはおくびにも出さずにレオカディアが言えば、ロベルトと名乗っているヘラルド、シルビオと名乗っているセレスティノが、わざとらしくレオン・・エルミニオの肩にそれぞれ肘を乗せた。
「先輩方。こいつは、俺達いとこのなかでも、特別レイナを可愛がっているんで、勘弁してやってください」
「レイナに近づく男は全員敵認定する、病みたいなものだと思って」
「シルビオ兄さぁん、ロベルト兄さぁん。それじゃあ、あたしが病原菌みたぁい」
冗談のように言い合う・・否、レオカディアは完全に冗談、軽口だと思っているが、ヘラルドとセレスティノは違う。
普段から、レオカディアに近づく男は全員敵とばかり、目を光らせているエルミニオを間近で見ているがゆえの、偽りなしの真実だった。
「じゃあ、みなさぁん。この後も、訓練がんばってくださぁい」
田舎から出て来たばかりの平民の娘、という設定のもと『私は女優』となり切りながら、役目を終えたレオカディアは、次なる仕事のため厨房へと向かう。
ふふ。
エルミニオ様やセレスティノ、ヘラルドがいとこっていう設定、すごく楽しい。
しかも『兄さま』じゃなくて『兄さん』って呼ぶのがツボだったのか、最初に『レオン兄さん』って呼んだとき、エルミニオ様なんて固まっちゃって可愛かったし。
まあ、聞いたことはあっても、自分が呼ばれるなんてこと、一生無いはずだったものねえ。
動揺しても仕方ない、然もありなんと、その時のエルミニオを、ご褒美のように思い出していたレオカディアの行く道を、ひとりの男が塞いだ。
え、なに。
確かこのひと、下級騎士よね?
「レイナ。俺の女になれ」
「はぁ?」
はあ!?
何を言ってくれちゃっているのよ!
絶対にお断りよ!
「俺は見習いなんかじゃない、れっきとした騎士だし、特別な倉庫任務にも就いている、いわば選ばれた人間だ」
内心では、既に激しき拒絶しているレオカディアが、声に出しても拒絶しようとしたとき、気になる単語が聞こえて来た。
「特別なぁ、倉庫ぉ?」
「ああ。とりわけ大事な倉庫とかで、誰でもその任務に就けるわけじゃない」
「ふぅん」
え、何その特別な倉庫って。
すっごく怪しいんだけど!
これは早くも、重要機密ゲットかと、レオカディアが期待に胸を膨らませていると、その下級騎士が、ぐっと距離を詰めて来た。
「あのぉ。あたしぃ、騎士様のお名前も知らないですしぃ」
「俺の名は、イポルト。さっきも言ったが選ばれし騎士だ。俺は、最近雇われた有象無象とは違う。それに父親は、もともと男爵家の次男。つまり貴族だ」
誇りなのだろう。
『そんな俺に選ばれたことを喜べ』と、いやらしい笑みを浮かべて言われ、レオカディアは『けっ!』と言いたくなるが、情報は欲しい。
「でもぉ。特別な倉庫とか言われてもぉ、あたしぃ、そんなもの知らないしぃ。なにがぁ、特別なのかもぉ」
「アルモンテ侯爵家にとって、重要な倉庫だ。なかでも朔の日の見張りは重要なんだが、俺は幾度も選ばれている」
それって、朔の日に特別な何かがあるってこと?
でも、下級騎士は、その内容まで知らされていないわよね。
「わぁあ、すごいんですねぇ。あたしなんかぁ、とてもつりあわな・・っ」
「そんなことはない。お前の容姿は、俺が愛でるに十分相応しい」
この下級騎士、イポルトから得られる情報はこれが限界だろうと、のらりくらり離れようとしたレオカディアの動きを封じるよう、イポルトがレオカディアを大木へと追い詰める。
うわっ。
下級でも、流石騎士ってこと!?
「騎士として、恥ずかしい真似はよせ」
その時、凛とした声が響いて、ひとりの騎士が現れた。
「なんだ!新人の分際で、俺に逆らうのか・・・ひっっ」
その騎士に対し、強気で応じたイポルトはしかし、素早い速さで首を抑え込まれ、情けない声をあげる。
「腕でなく、剣で抑え込んでもいいのだが?」
「きっ、きさま!覚えていろよ!」
腕一本で、難なく抑え込まれた屈辱からか、顔を真っ赤にしながら、イポルトは小物の代表のような捨て台詞を吐いて走り去って行った。
「さて。そして貴様だが」
まるでレオカディアの救世主のように現れた騎士だが、その瞳に穏やかさは微塵もなく、レオカディアに向ける目も、犯罪者を相手にするかの如く、とても厳しい。
え、え。
お父様!?
しかしレオカディアは、蛇に睨まれた蛙のような状態に置かれながらも、信じられない現実に、目を大きく見開いた。
~・~・~・~・
投票、いいね、お気に入り、しおり、ありがとうございます。
55
あなたにおすすめの小説
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
殿下から「華のない女」と婚約破棄されましたが、王国の食糧庫を支えていたのは、実は私です
水上
恋愛
【全11話完結】
見た目重視の王太子に婚約破棄された公爵令嬢ルシア。
だが彼女は、高度な保存食技術で王国の兵站を支える人物だった。
そんな彼女を拾ったのは、強面の辺境伯グレン。
「俺は装飾品より、屋台骨を愛する」と実力を認められたルシアは、泥臭い川魚を売れる商品に変え、害獣を絶品ソーセージへと変えていく!
一方、ルシアを失った王宮は食糧難と火災で破滅の道へ……。
婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。
桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。
「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」
「はい、喜んで!」
……えっ? 喜んじゃうの?
※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。
※1ページの文字数は少な目です。
☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」
セルビオとミュリアの出会いの物語。
※10/1から連載し、10/7に完結します。
※1日おきの更新です。
※1ページの文字数は少な目です。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
夫「お前は価値がない女だ。太った姿を見るだけで吐き気がする」若い彼女と再婚するから妻に出て行け!
佐藤 美奈
恋愛
華やかな舞踏会から帰宅した公爵夫人ジェシカは、幼馴染の夫ハリーから突然の宣告を受ける。
「お前は価値のない女だ。太った姿を見るだけで不快だ!」
冷酷な言葉は、長年連れ添った夫の口から発せられたとは思えないほど鋭く、ジェシカの胸に突き刺さる。
さらにハリーは、若い恋人ローラとの再婚を一方的に告げ、ジェシカに屋敷から出ていくよう迫る。
優しかった夫の変貌に、ジェシカは言葉を失い、ただ立ち尽くす。
「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ
猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。
当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。
それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。
そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。
美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。
「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」
『・・・・オメエの嫁だよ』
執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる