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続きの物語 ~今へと続く道~
8、最強の味方となる・・はず。
しおりを挟む髪の色は違っているし、謎の口髭も生やしているうえ、何故か騎士の隊服姿だが、まごうかたなき父だと、レオカディアは思わず、若き日の父を見上げた。
凄い。
騎士姿のお父様も、格好いい。
若いころは騎士だったなんて聞いたことないけど、お髭も清潔感があって、なんていうか素敵よ、お父様。
「おと・・・」
「オットーさまー!どちらにいらっしゃるのですかー!?」
思わず『お父様、若いころから素敵!』と言いかけたレオカディアがはっとしたその瞬間、甲高い女性の声が辺りに響いた。
「こちらに」
その女性に見つかることを避けるためか、若き日の父はレオカディアごと木の陰に隠れる。
わあ。
距離感、完璧。
共に隠れるため、多少は近づくことになるのだが、決して不用意に触れない、絶妙な距離を保つ若き日の父に、レオカディアは感動した。
「・・・騎士様。お名前。オットー様とおっしゃるのですね」
「何を、わざとらしいことを。知っていたのではないのか?しらばっくれても無駄だ。現に今、呼びかけただろう」
「え」
いえ。
それは『オットー様』ではなく『お父様』と言いかけたのです、と説明するわけにもいかず、レオカディアは、今、自分と同じくらいの年齢に見える父を不思議な思いで眺める。
「まあ、いい。貴様・・いや、貴様らは誰の手の者だ?」
「誰の?おっしゃっている意味が、分かりませんが」
え。
もしかして、まさかの密偵扱い?
しかも『貴様ら』ってことは、私たち全員、まるごと容疑者?
「だんまりか?あのような猿芝居をしておいて、疑われないとでも思ったか」
「猿芝居」
思わず、鸚鵡返しに呟いたレオカディアに、オットーと名乗る若き父が口の端をあげてみせた。
「あの間が抜けた、阿呆のような話し方は演技だろう。大根」
「なっ。大根とはひどいではないですか!私は、一生懸命」
『ひとの苦労も知らないで、お父様ひどいです!』と、心のなかで抗議して、レオカディアは両手の拳を胸元で握る。
「いいのか?先ほどから、口調が異なっているが」
「あ」
ついうっかり。
オットーが若き日の父であったがために、注意を払うことも忘れていたと、レオカディアは、改めてここが敵陣であると背筋を伸ばした。
「気を抜き過ぎだな。で、誰の指示で動いている?」
「どなたの指示でもありません」
きっぱりと言い切れば、オットーが『仕様のない』とでも言いたげに、眉を寄せた。
「見え透いた嘘はよせ」
「嘘では、ありません。実は私、アデルミラ・ロサリオ公爵令嬢のファンなのです」
「唐突だな」
ひし、と一歩前に出たレオカディアの真意を確かめるよう、オットーは目を細めてレオカディアの瞳を見つめる。
「唐突だろうと、それが、私たちがここに居る理由なのです」
「その理由とやらを、言ってみろ」
オットーに促され、レオカディアは口を開いた。
「はい。実は私たち、とあるカフェで聞いてしまったのです。アデルミラ・ロサリオ公爵令嬢の尊厳を貶める計画を」
「とあるカフェとは?」
「カフェ・マッターホルンです」
「最近人気の新しいカフェではないか。そんな人も多い場所で、そのような話を?」
尤もな疑問に、レオカディアは即座に答える。
「私たちは、個室におりましたので」
しかしその瞬間、オットーの雰囲気が、がらりと変わった。
「個室で、隣室の話し声が聞こえたとでも?悪いが、俺も先ごろそこには行ったばかりだから知っている。あそこの個室は、隣室の声など聞こえない」
きゃあ!
お父様。
それは、お母様と行かれたのですよね!
お母様、お喜びになりました?
そんなお母様を見て、お父様は幸せになったのでしょう?
言わなくとも分かりますとも。
いつもの、おふたりですから。
「・・・っと!隣の部屋に居たのではありません!わ、私たちは個室に居たのですが、お話しされていた方たちは、隣室のテラスにいらしたのです!それで!聞こえました!嘘ではありません!私の母に誓って!」
『お父様の惚気!』などと、能天気に喜んでいたレオカディアは、鋭利な瞳で鞘に入ったままの剣を向けられ、慌てて状況の追加説明をした。
「そんな話をぺらぺらと。俺を欺くためか?それとも、考えなしなのか?」
「欺くなんてありません!そして、考えなしというのは、ひどいです!ただ単に、おとう・・オットー様は、信用に足るお方だと、知っている・・じゃなかった、見抜いただけです!」
『私、人をみる目はあるんです!長けているといっても過言ではありません!』と、力いっぱい言い切ったレオカディアは、ひしと見上げて、その瞳でも訴える。
お父様は、エリアス陛下・・エルミニオ様のお父君の腹心なのだもの。
それなのに、ここ、アルモンテで騎士をしているってことは、つまり、そういうことでしょ。
「わたくしは、オットー様こそは、こちらに潜入していらっしゃるのだと、確信しております」
まっすぐにオットーの瞳を見つめて言い切ったレオカディアの耳元で、オットーの剣が、かちりと鳴った。
~・~・~・~・
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