溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~〈本編完結済〉

夏笆(なつは)

文字の大きさ
57 / 61
続きの物語 ~今へと続く道~

8、最強の味方となる・・はず。

しおりを挟む
 

 

 髪の色は違っているし、謎の口髭も生やしているうえ、何故か騎士の隊服姿だが、まごうかたなき父だと、レオカディアは思わず、若き日の父を見上げた。 

 

 凄い。 

 騎士姿のお父様も、格好いい。 

 若いころは騎士だったなんて聞いたことないけど、お髭も清潔感があって、なんていうか素敵よ、お父様。 

 

「おと・・・」 

「オットーさまー!どちらにいらっしゃるのですかー!?」 

 思わず『お父様、若いころから素敵!』と言いかけたレオカディアがはっとしたその瞬間、甲高い女性の声が辺りに響いた。 

「こちらに」 

 その女性に見つかることを避けるためか、若き日の父はレオカディアごと木の陰に隠れる。 

  

 わあ。 

 距離感、完璧。 

 

 共に隠れるため、多少は近づくことになるのだが、決して不用意に触れない、絶妙な距離を保つ若き日の父に、レオカディアは感動した。 

「・・・騎士様。お名前。オットー様とおっしゃるのですね」 

「何を、わざとらしいことを。知っていたのではないのか?しらばっくれても無駄だ。現に今、呼びかけただろう」 

「え」 

 

 いえ。 

 それは『オットー様』ではなく『お父様』と言いかけたのです、と説明するわけにもいかず、レオカディアは、今、自分と同じくらいの年齢に見える父を不思議な思いで眺める。 

「まあ、いい。貴様・・いや、貴様らは誰の手の者だ?」 

「誰の?おっしゃっている意味が、分かりませんが」 

  

 え。 

 もしかして、まさかの密偵扱い? 

 しかも『貴様ら』ってことは、私たち全員、まるごと容疑者? 

 

「だんまりか?あのような猿芝居をしておいて、疑われないとでも思ったか」 

「猿芝居」 

 思わず、鸚鵡返しに呟いたレオカディアに、オットーと名乗る若き父が口の端をあげてみせた。 

「あの間が抜けた、阿呆のような話し方は演技だろう。大根」 

「なっ。大根とはひどいではないですか!私は、一生懸命」 

 『ひとの苦労も知らないで、お父様ひどいです!』と、心のなかで抗議して、レオカディアは両手の拳を胸元で握る。 

「いいのか?先ほどから、口調が異なっているが」 

「あ」 

 ついうっかり。 

 オットーが若き日の父であったがために、注意を払うことも忘れていたと、レオカディアは、改めてここが敵陣であると背筋を伸ばした。 

「気を抜き過ぎだな。で、誰の指示で動いている?」 

「どなたの指示でもありません」 

 きっぱりと言い切れば、オットーが『仕様のない』とでも言いたげに、眉を寄せた。 

「見え透いた嘘はよせ」 

「嘘では、ありません。実は私、アデルミラ・ロサリオ公爵令嬢のファンなのです」 

「唐突だな」 

 ひし、と一歩前に出たレオカディアの真意を確かめるよう、オットーは目を細めてレオカディアの瞳を見つめる。 

「唐突だろうと、それが、私たちがここに居る理由なのです」 

「その理由とやらを、言ってみろ」 

 オットーに促され、レオカディアは口を開いた。 

「はい。実は私たち、とあるカフェで聞いてしまったのです。アデルミラ・ロサリオ公爵令嬢の尊厳を貶める計画を」 

「とあるカフェとは?」 

「カフェ・マッターホルンです」 

「最近人気の新しいカフェではないか。そんな人も多い場所で、そのような話を?」 

 尤もな疑問に、レオカディアは即座に答える。 

「私たちは、個室におりましたので」 

 しかしその瞬間、オットーの雰囲気が、がらりと変わった。 

「個室で、隣室の話し声が聞こえたとでも?悪いが、俺も先ごろそこには行ったばかりだから知っている。あそこの個室は、隣室の声など聞こえない」 

 

 きゃあ! 

 お父様。 

 それは、お母様と行かれたのですよね! 

 お母様、お喜びになりました? 

 そんなお母様を見て、お父様は幸せになったのでしょう? 

 言わなくとも分かりますとも。  

 いつもの、おふたりですから。 

 

「・・・っと!隣の部屋に居たのではありません!わ、私たちは個室に居たのですが、お話しされていた方たちは、隣室のテラスにいらしたのです!それで!聞こえました!嘘ではありません!私の母に誓って!」 

 『お父様の惚気!』などと、能天気に喜んでいたレオカディアは、鋭利な瞳で鞘に入ったままの剣を向けられ、慌てて状況の追加説明をした。 

「そんな話をぺらぺらと。俺を欺くためか?それとも、考えなしなのか?」 

「欺くなんてありません!そして、考えなしというのは、ひどいです!ただ単に、おとう・・オットー様は、信用に足るお方だと、知っている・・じゃなかった、見抜いただけです!」 

 『私、人をみる目はあるんです!長けているといっても過言ではありません!』と、力いっぱい言い切ったレオカディアは、ひしと見上げて、その瞳でも訴える。 

 

 お父様は、エリアス陛下・・エルミニオ様のお父君の腹心なのだもの。 

 それなのに、ここ、アルモンテで騎士をしているってことは、つまり、そういうことでしょ。 

 

「わたくしは、オットー様こそは、こちらに潜入していらっしゃるのだと、確信しております」 

 まっすぐにオットーの瞳を見つめて言い切ったレオカディアの耳元で、オットーの剣が、かちりと鳴った。 



~・~・~・~・
投票、いいね、お気に入り、しおり、ありがとうございます。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

殿下から「華のない女」と婚約破棄されましたが、王国の食糧庫を支えていたのは、実は私です

水上
恋愛
【全11話完結】 見た目重視の王太子に婚約破棄された公爵令嬢ルシア。 だが彼女は、高度な保存食技術で王国の兵站を支える人物だった。 そんな彼女を拾ったのは、強面の辺境伯グレン。 「俺は装飾品より、屋台骨を愛する」と実力を認められたルシアは、泥臭い川魚を売れる商品に変え、害獣を絶品ソーセージへと変えていく! 一方、ルシアを失った王宮は食糧難と火災で破滅の道へ……。

婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。

桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。 「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」 「はい、喜んで!」  ……えっ? 喜んじゃうの? ※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。 ※1ページの文字数は少な目です。 ☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」  セルビオとミュリアの出会いの物語。 ※10/1から連載し、10/7に完結します。 ※1日おきの更新です。 ※1ページの文字数は少な目です。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年12月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

夫「お前は価値がない女だ。太った姿を見るだけで吐き気がする」若い彼女と再婚するから妻に出て行け!

佐藤 美奈
恋愛
華やかな舞踏会から帰宅した公爵夫人ジェシカは、幼馴染の夫ハリーから突然の宣告を受ける。 「お前は価値のない女だ。太った姿を見るだけで不快だ!」 冷酷な言葉は、長年連れ添った夫の口から発せられたとは思えないほど鋭く、ジェシカの胸に突き刺さる。 さらにハリーは、若い恋人ローラとの再婚を一方的に告げ、ジェシカに屋敷から出ていくよう迫る。 優しかった夫の変貌に、ジェシカは言葉を失い、ただ立ち尽くす。

「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ

猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。 当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。 それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。 そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。 美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。 「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」 『・・・・オメエの嫁だよ』 執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

処理中です...